【MTG・リミテッド】これは2マナのカードですか?

はじめに

 ことの起こりはDiscordで、私が友人たちと『どうすればリミテッドで勝てるようになるか』という検討会での出来事だ。
 MTGやリミテッドに詳しい友人たちに、私や他の教わりたいメンバーが授業を開いてもらっているような感じである。
 そこで私がここ近年ずっと抱いていた疑問を、『指輪物語:中つ国の伝承』のあるカードで投げかけた。
「このカード、ずっと2マナじゃないと思ってるんです」

《ホビット庄の庄察》

 読者の大半に思われていることだろうことなので自分で言いたい。
「なに言ってんだこいつ?」
 2マナ2/2の能力つきクリーチャーである。キッカーなどの代替コストもなく、誰が何と言おうと『2マナのカード』であることは疑いようもない。
 もちろん「こいつが2マナクリーチャーの性能ではない」とか、「2マナクリーチャーなのに強すぎる」とか、そういう話ではない。
 私は純粋に「こいつは2マナではないと思っている」という疑問をずっと抱いているのだ。
 結論としては「マナカーブに置くときは2マナでいいと思うよ」という教えがあり、また同時に「別の視点から見たときの考え方は違う」ようなことも言われた。ということなので、私がなんで「2マナであるか」などという疑問を抱いたのか。そこを深掘りしていった話を今日はしていきたいと思う。

いつ頃から疑いを持ち始めたのか

 私が似たような思いを抱き始めたのは、カードセット『イニストラード:真紅の契り』の頃だった。《コウモリの急使》を使っていた時に「こいつは3マナのカードではないな」と思った。

《コウモリの急使》

 似たような疑義を抱いたのはカードセット『兄弟戦争』の頃、友人の作ったリミテッドのデッキをみて、マナカーブの理想枚数に対して、2マナ帯が少なく見えて、「2マナ生物の枚数足りていないんじゃない?」と指摘したときに、「《突き刺す戦耕し》があるから2マナは枚数足りていますよ」と。
「いや、その枚数の数え方本当にいいんか?」

《突き刺す戦耕し》

 そして今回、『指輪物語:中つ国の伝承』で、友人が作ったリミテッドのデッキで《ホビット庄の庄察》が使われていたのを見て、私の中で疑問が爆発した。
「マナカーブを考えるときに置くべき場所が違うのではないか!?」
 
そして、冒頭の検討会の話に至る。
 ここで結論から書いてしまえば、「何マナの生物が十分にあるか」と確認するときに《ホビット庄の庄察》を2マナの場所に置くことは、間違っている場合もあるし、あっている場合もある。というのが私の考えだ。異論は大いにあると思われるが、もう少し私の記事の続きを読んでもらいたい。

そもそも〇マナに何枚以上が必要ってなんで?

 リミテッド、ひいてはMTGのデッキづくりをするうえで、気にしないといけない項目の筆頭としてよく耳にするので『土地の枚数』と『マナカーブ』がある。どちらもデッキがうまく回るかの指標として重要な要因であり、熟練プレイヤーの方々におかれては、ほぼ無意識で「だいたい何枚だな」と答えられる内容だと思う。
 リミテッド初心者向けの公式記事として『中村修平の「ドラフトの定石!」』でもマナカーブ理論については触れられている。その記事では以下のようなマナカーブがひな形として挙げられている。

  • 2マナ:4枚

  • 3マナ:5枚

  • 4マナ:4枚

  • 5マナ:2枚

  • 6マナ以上:1枚

  • 合計:16枚

 私は自分がリミテッドをプレイするときも、このマナカーブを意識している。ドラフトではそれぞれのマナ帯で少しずつ余剰が出るようにピック出来るようにして、最後にまとめるときに『選択する余地』が生まれるようにしている。(4枚必要となっているところに4枚ピックしただけでは、選択の余地なくすべてを使い切らないといけないので、カードパワーがデッキ全体で下がりやすくなると考えているからだ)
 結構有名な記事だと思うので、このマナカーブを画像として覚えている人もいると思う。けれども、その反面にこのマナカーブの適正枚数だけを覚えていて、重要な要因を忘れてしまっている人もいると考えている。いかにその要素を書き出していく。

  • リミテッドのデッキ枚数は40枚である

  • 「土地:クリーチャー:その他」の枚数はひな形で「17:16:7」

  • 1ターンに1度、ライブラリーからカードをドローできる

  • 1ターンに1度、手札から土地を出すことができる

  • 土地は自分のターンにアンタップ(再使用可能)状態になる

  • MTGの基本は相手のライフを0点にするゲーム

  • ひな形のマナカーブは「適切なターンに適切なマナのカードを使う」を基本思想としている

 MTGの基本すぎる内容が追加されているが、自分の考えを説明するうえで重要だと思ったため書かせてもらいました。
 最重要なのは、先述のマナカーブは『土地17枚の総数40枚デッキ』において、『適切なターンに適切なマナのカードを使う』ことを念頭に置いたものということである。
 つまるところ『相手が何もしないなら、マナを使い切ってるこっちが強いよね』ということである。何も妨害がなければ総数10マナくらいで20点は削り切れたりするのである。
 さて、これらの情報を踏まえたうえで私が何を言いたいかといえば。
「このマナカーブに《ホビット庄の庄察》を置いたのであれば、2ターン目にそれを使うんだよね?」という問いかけになる。
 このマナカーブは適切なターンに適切なカードを『使う』ことで強みが発揮される理論だ。先攻2ターン目に土地を2枚おけて、手札に《ホビット庄の庄察》しかいないのであれば、それを使うのが強みになる。というか、それを強みだと思って使わないといけない。それがこのマナカーブに沿ってデッキ構築するというということだ。
 ここで《ホビット庄の庄察》のカードをもう一度見てもらいたい。

《ホビット庄の庄察》

 先攻2ターン目にこれを場に出すだろうか?
 このカードの強みは「トークンを生贄に捧げれば、除去として使える」という部分だ。生物としての性能も2マナの2/2警戒持ちで十分に強くはある。だが、相手に強い生物(ますと除去)がまだ出ていないであろう序盤で、トークンも出ていない可能性が高いターン数である。残しておけば除去として使える可能性のあるこのカードを、「2マナで場に出せるから、使います」と思える人は少ないと思っている。
 つまり、このカードが2ターン目に手札にあっても「プレイアブル(使用可能)なカード」ではないわけだ。
「これは2マナのカードですか?」
 いま再びこの疑問を投げかけます。
 確かにこのカードは2マナのカードです。けれど、「2ターン目のカード」である可能性はかなり低いと私は見積もっています。
 このカードをマナカーブに置いて、「必要枚数を確認」している場合は特に誤認の要因になると思いました。
 先述の《コウモリの急使》や《突き刺す戦耕し》も同様の話になります。
 コウモリは3マナですが、「ライフを回復したターン」に戦場に出したら、墓地のクリーチャーを回収できる効果で、「ライフ回復手段」と「回収するクリーチャー」があることで強いカードです。3ターン目に出すとしたら、2マナの絆魂持ちの生物が相手と相打ちになったのを回収するという運用になります。2ターン目までに条件をそろえるのが難しく、使うとしたらもっと強いクリーチャーである4マナとか、5マナの脅威を回収したくなるので私は温存したくなります。
 戦耕しもマナが伸びれば5/4のクリーチャーとして使えるため相手に大きな脅威となります。それを2ターン目に1/1として出すのは少しもったいないと感じます。
 では、使わなければいいじゃん。って話になりますが、先述のマナカーブの枚数を紐解いていくと、「2ターン目に2マナのカードが手札に何枚あるか」の割合(※確率ではないので注意)は「4枚(2マナ)÷40枚(デッキ総数)×8枚(先行の2ターン目までに引ける総数)」=「0.8枚分」となりま す。そもそもマナカーブ理論の枚数を考えると、2ターン目に2マナのカードは割合でも1枚を満たさない数です。確率的には60.6%で1枚以上みたいですので5回やって2回は手札に2マナはないですね。
 必要枚数のマナカーブ理論に沿って、これらのカードを配置した場合、「そのターンにプレイ可能なカード」が実質上減るため、さらに確率が悪くなります。必要枚数がマナカーブ上4枚である中に1枚、「温存しておきたいカード」が混じると、有効枚数は3枚です。手札に来る確率は49.8%まで下がります。2回に1回は2ターン目に動けないというわけですね。
 しかしながら、言ってしまえば2ターン目の出来事です。「動けなくてもいいや」と割り切ってしまえばそこまでの話でもあります。けれど、たまに耳にする「カードの必要枚数は足りているのに、うまく回らなかった」みたいな出来事はこのような実用面を考えた場合の「計算の思い違い」が原因ではないかと思っています。この計算違いが微差でも勝率には影響を及ぼすと思っています。

《ホビット庄の庄察》はどこに置く?

 これまでのはなしで、私の考えである「《ホビット庄の庄察》はマナカーブで2マナとして置いてはいけないのではないか?」というのは伝わったかと思います。では、《ホビット庄の庄察》はマナカーブのどこに置くべきか。
 この話をまとめるまで、私は「4か5マナあたりに置かないといけないのでは?」と漫然と考えていたのですが、《ホビット庄の庄察》は2マナのカードです。「使うとしたら4・5ターン目くらいだろうけれど、4・5マナのカードパワーではない」ので、今ではそれは不適だと自覚しています。
 ですので私の意見としては「《ホビット庄の庄察》は『その他のカード』に置こう」と思いました。(クリーチャーのマナカーブに置かない)
 そもそもの話、除去カードとしての運用がメインになるなら、「追放除去であるソーサリーカード」と思ってデッキ内に配置すれば何の問題も、思い違いもないわけです。たまにライフを詰めるために「2/2生物が盤面に欲しいな」って思ったときに「除去先はないけれど生物として使おう」と運用すればいいんです。それに《ホビット庄の庄察》は相手のクリーチャーカードを追放していたら、クリーチャーを逃がさないために攻撃に行きにくいカードでもありますし、除去として使ったらアタッカーとして使いにくい能力でもあります。(軍団トークンを追放なら問題なく除去した後でも攻撃に参加できますが)
 《ホビット庄の庄察》を2マナのクリーチャーとしておかないので、2マナ生物の必要枚数もはっきりしています。《ホビット庄の庄察》を入れて4枚は絶対的に足りないです。(そもそも指輪物語のリミテ環境では4枚が少ないという話は横に置いておきます。今回の主題ではないので)
 逆にどうしても2マナクリーチャーが流れてこなくて、《ホビット庄の庄察》をそこに配置しないといけないとなったら、「《ホビット庄の庄察》を除去として運用できないかもしれない」というのを思考の片隅には置いておきたいです。
 あくまで「除去としても使えればおいしいけれど、2マナ/2/2警戒生物だから」とか思っていれば、生物の枚数に『思い違い』は発生しないので。問題だと思うのは、「デッキの構築段階で高確率で運用方法に問題がある枚数を認識できていないで負けてしまう」ということです。
 枚数は足りているはずなのにうまく回りにくいと思った場合は「自分の想定している運用方法」と「デッキの実態」に差が生じていないか、見直す必要もあると思っています。

おわりに

 以上で私の最近の考察「これは2マナのカードですか?」を終わりたいと思います。最後に言いたいのは、本記事はあくまで「私はこう考えている」という話題の提供です。デッキ構築論は人それぞれあるものです。そして、世の中にはいろいろな構築論の記事もあります。いろんな情報を取り入れて、「そういえばこんな風に考えている人もいたな」とか、思考の端っこにでも私の今回の話が住まわせてもらえれば幸いです。
 最後に「私なら《ホビット庄の庄察》を抜いた2マナの枠に何を入れるか」の話をして終わりたいと思います。そのカードは《レンバス》です。

《レンバス》

……生物じゃないじゃん。
ここまでの話を覆すようでごめんなさい。でも《ホビット庄の庄察》を除去枠に入れるなら「2マナで2ターン目に使いたいカードってなに?」って自分の問いかけに、このカードが非常にマッチするんです。
 役割が「その他のカード」と「クリーチャー」で入れ替わりますが、クリーチャーを「相手が何もしてこなかった場合に使いたい、能動的なカード」ととらえれば、別に本当にクリーチャーじゃなくてもいいわけで。
 デッキの中の総数としてのクリーチャー・その他の比率は変わらないし。《レンバス》⇒《ホビット庄の庄察》と3ターン目にスムーズに除去としても運用できそうだったので。
 食物を出すのが3マナのクリーチャーとかになると、《ホビット庄の庄察》を除去として使えるのが1ターン遅れるんですよね。《ホビット庄の庄察》を採用するなら、食物シナジーデッキになりやすいと思いますし、先に1個食物は用意しておきたいという気持ちがあります。コモンでよく流れてきますし。
(7/9 指摘がありましたので取り消し線です。トークンだからレンバスじゃだめだよ。と。どうにも食物=トークンのイメージが・・・・・・。ご指摘ありがとうございます。)
 他に《ホビット庄の庄察》の代わりに入れるなら、こういうのがいいよね。ってものがありましたら、教えていただけると幸いです。
 それでは。今後もよきMTGライフを。

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