戦国時代の自動操縦(ショートショート)
時は戦国・安土桃山時代。
謁見の間において、主君に慶賀の挨拶をする人物がいた。
「この度、上様への三職推任の詔が発せられるとのこと。誠におめでとうござりまする。もし上様が征夷大将軍におなり遊ばせば、上様の威光があまねく天下に知れ渡り、これ以上目出度いことはございませぬ」
ガチャン!
上座に座る人物が、目の前の茶器を平伏する人物に叩きつける。
「……光秀。うぬは儂が朝廷の思うまま動かされるのが目出度いと申すか」
主の怒気が膨れ上がり、部屋の温度が急激に下がっていく。
「い、いえ、決してそのような……」
「儂は決して朝廷の思うままには動かぬ。将軍職などうぬに呉れてやるわ。軍勢を率いて儂の首を取りに来い」
座を蹴立てて主が部屋を去っていく。
「う、上様……」
呆然とする光秀の耳元に、何処からともなく声が聞こえた。
……上様の言葉は絶対!
呆然としたまま城を退き、気が付けば軍を率いた自分が愛宕山にいる。
「敵は本能寺にあり!」
その時、歴史は動いた。
(412文字)
三権推任:天正10年5月(本能寺の変の前月)、朝廷から武田征伐の戦勝祝賀として織田信長に、太政大臣、関白、征夷大将軍の三職いずれかに推任しようとする動きがあった。(Wiki調べ)
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