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夜光おみくじ(ショートショート)

山間の村にある小さな神社。そこへ地域振興のため村おこしの企画を考えてくれないか、と相談があった。

「なあ、宮司。巫女さんのキャラクターとか、萌えグッズが出来ないか?」
「いや、予算もないしなあ。やっぱり、あれじゃないか?」
「うむ、あれか……」

結局、村長と相談して村の自然を利用したお祭りを開くことになった。祭りの当日、村の特産品が販売されそこそこの人出で賑わう。神社では恋愛おみくじを引いてもらい、そのおみくじを山の木々に結んだ。

日が暮れしばらくすると、山間に小さな光が点滅する。

「かけまくもかしこき夜光の神よ~」

恋愛成就祈願の祝詞が奏上されると、木々の間を一筋の光が舞う。

「……蛍?」

参加者がそっと見守る中、光の舞は静かに続いた。やがて祝詞が終わると、その光は名残りを惜しむかのように辺りを漂い、そしてゆっくりと山の中へ消えていった。その様子を見ていた誰かが、このおみくじを蛍の恋占い、又は夜光おみくじと呼ぶようになったとか。

(412文字)

たはらかにさんの企画に参加です。
最後までお読みいただきありがとうございました💖


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