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ごはん杖(ショートショート)

「腹減った」

売れないユーチューバの良雄は公園に座り込む。
そこへ、杖をついた爺さんがきた。

「若造、歩けないなら儂の杖を貸そうか?」

はあ?

思わず出かかった言葉を飲み込み素直に借りてみた。
良雄に杖は短すぎたのだが……

なるほど、これが爺さん目線か。

良雄は儲けの折半を約束し、爺さんの杖にスマホを取り付け「杖の目線」と題し毎日動画を投稿した。

公園で花を眺め、道で車とぶつかりそうになる映像。だが、閲覧数は驚くほど上がっていく。

数か月後、初めてまとまった金が振り込まれた。

ところがある日を境に爺さんは姿を消す。

待つこと半月、ようやく爺さんが現れた。

「すまん、お迎えが近いのか飯が喉を通らなくてな」

「無理するなよ。爺さんどうした?って書き込みも多くてな」

「心配するな。杖を貸すと言ったのは儂だ。儂は自分を支える杖として飯を食う」

「まあぶっちゃけ、爺さんの杖は飯の種だからな」

「この若造め」

だが悪くない気分だ。
爺さんは笑って杖を手に歩き始めた。

(414文字)

たらはかにさんの企画に参加です。
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