忍者ラブレター(ショートショート)
ああ、温まる。今宵の鍋は格別だな。
ん、突然どうした。
なに、恋文をもらった事があるかだと?
滅多なことを言うな。恋文はおろか文を交わせば居所が知れたも同じ。
その時、我ら忍びは終わる。
ところで、敵の忍びが捕まった話を聞いたか?
実は、その忍びから名指しで呼ばれてな。
出向いてみれば、縛られた女子が一人。
それは美しい女子だった。
だが、女子はキッと睨んで問うてきた。
「お前様、織田に味方した多羅尾弦太かい?」
いかにもそうだと答えると、女子はするりと縄を解いた。
「この裏切り者!」
いうや否や、木の葉が舞い上がり女子の姿が消えていく。
捕まえようとしたが、クナイを投げられてな。
すんでのところ躱すと、辺りはもぬけの殻になっておった。
それにしても、あのような女子が刺客とは世も末……
突如、かすかな風切り音。
鍋蓋をかざすと、クナイが刺さる。
だが男の手から鍋蓋が滑り落ちた。
クナイには文が結び付けられ、こう書かれていた。
『お前様の命は私のもの』
(411文字)
たらはかにさんの企画に参加です。
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