ツノがある東館(ショートショート)
昔、日本には鬼がいた。
人々は鬼を恐れ、供物を捧げたという。
ある朝のこと、鬼の女房殿が怖い顔をしている。
「お前さん、ツノはどうした?」
「ん?」
頭に手をやると、あるはずのツノがない。
「分からぬ」
「昨夜はどうした?」
「村に下りて、供物の酒を飲んで寝たが……」
女房殿は静かに言い放つ。
「ツノを探して来な。見つけるまで帰って来るんじゃないよ!」
さあ、大変。
鬼は急いで山を下りる。
ところが、様子が変だ。
「鬼は外、福は内!」
人々は鬼めがけて豆を投げる。
神通力を失った鬼は探すのを諦め、早々に山へ戻った。
「おや、ツノは見つかったのかい?」
「いや、それが……」
女房殿の前で小さくなる鬼。
ゴゴゴッ!
凄まじい風が巻き起こり、稲光が鳴り響く。
バリバリ、ドガーン!
神様のいたずらか、落雷の衝撃で空高く舞い上がった二人は風神・雷神になったのだとか。
さて、とある博物館の東館に鬼のツノが展示されているという。その後ろには、ツノを見守るように風神雷神の屏風図があった。
(418文字)
たらはかにさんの企画に参加します。
最後までお読みいただきありがとうございました💖
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