ヤマシタトモコ『違国日記』①より
“わたしは大体不機嫌だし
あなたを愛せるかわからない
でも
わたしは決して
あなたを
踏みにじらない”
両親を交通事故で亡くした15歳の少女“朝”に、彼女の亡き母の妹である“槙生”が言ったセリフ。
葬儀の場で親戚中でたらい回しにあっていた朝に、嫌いだった姉の娘ということで愛せるかどうかもわからない、人見知りの槙生がかけたということで「勢い+覚悟」があっての言葉であったことがうかがえる。
おそらく冷静だったら尻込みをしただろうし、だからといって無責任に出す言葉ではない。槙生の中にある美徳とか、そういったこととも関わってくる啖呵でもあることが直前に発した言葉からもわかる。
“こんな醜悪な場にふさわしくない
少なくともわたしはそれを知っている
もっと美しいものを受けるに値する”
誰かを受け止める、受け入れるのにも冷静な判断力だけではないその場のリズムや審美眼など、おおくのものが発動して気持ちとなって表れる。
だれかの命を受け止めるということは、自分の命をぶつけるということだ。