INFJの本質は何か

16タイプの「あるある」はよく目にする。
一方、各タイプの"本質的"な特徴について論じているものは少ない。
そこで今回は、私が慣れ親しんだINFJの本質について書く。


仮説:INFJは世界と一体化している

 INFJの本質、つまり、INFJの最も重要な性質は「自分と世界が一体化している」ことだと考える。INFJにとって、世界は自分そのものということだ。ここでいう"世界"とは文字通りの世界のことで、人の集合である人間社会を中心に、それ以外の動物や植物、山や海などの自然、月や星などの天体まで含む。また、"一体化"も文字通りの一体化で、自分が世界の一部であるだけでなく世界そのものであること、自分と世界の区別がないことを指す。
 以下、こう考える理由を説明する。

理由1:Fe・Niの所有

 最初に、INFJの心理機能の面から説明する。INFJは、第2機能にFe(外向的感情)を持つ。このFeが議論の鍵だ。Feは他者に共感し、思いやる機能である。共感とは「他者と喜怒哀楽の感情を共有すること」、思いやりとは「他者の立場になって思いを共有すること」だ。INFJは、この"共感"や"思いやり"を生来的に実行しており、この"他者と心理的に共に有る"機能が、まさに"他者との一体化"につながっている。

 さらに、第1機能のNi(内向的直観)がこれに拍車をかける。Niは五感で得た情報を抽象化し、新たに意味を施す機能である。言い換えると、これは、目で見た光景や耳で聞いた音をそのまま受け取るのではなく、そこから規則性や傾向を見出したり、背後にある原因や今後の展開を想像したりする機能だ。この機能により、INFJは想像力が豊かとなり、目の前の現実にないことまで思考が及ぶ。そして、その対象は広大だ。目の前にいない第三者はもちろん、人間社会、世界の人々、動物、自然、宇宙や過去、未来までも思考の対象になりうる。INFJが、"現実を生きている"というよりも、"夢想している"イメージなのもこの機能からだろう。これに前述したFeによる共感が合わさると、"一体化"の対象が、周囲の者から、人間社会、生命、地球、宇宙へと拡大していく。

理由2:自己の感情の欠如

 次に、INFJ自身の感情についてだ。最近、INTJになって気づいたことがある。私自身、感情がほぼないということだ。INTJの第1機能と第2機能は、Ni(内向的直観)とTe(外向的思考)であるため、これ自体はおかしなことでない。しかし、重要なことは、INFJであった当時も、"自身の感情"と呼べるものは持っていなかったのではないか、ということだ。当時は、実は自分の感情はほとんど持っておらず、周囲の人間や空気が作りだす"集団の感情"を自分の感情として認識していた、と考えている。別の見方をすると、INFJは"自分の感情"が希薄であるため、周囲の感情に染まりやすい。私が、INFJのイメージカラーを"白"や"透明"だと考えるのは、このためだ。

 このように、INFJは、自身の感情が弱く、"他者"や"集団"の感情を自分の感情のように感じたり、優先させたり傾向にある。こうした性質が"世界との一体化" につながっていると考えている。

理由3:境界の曖昧さ

 最後は、境界の曖昧さだ。"境界"とは、他者との心理的な距離・線引きの濃さを表す。INFJは16タイプの中でも、他者との境界が最も曖昧だ。まず、T型はF型に比べて、感情よりも論理を優先する傾向にある。そのため、他者との関係性は、感情的な結びつきというよりも、上下関係や合理性に基づくドライなものになることが多い。目的を同じにする部活や仕事、あるいは軍隊といったイメージだ。また、F型の中でもFi(内向的感情)ユーザー(ENFP,ESFP,INFP,ISFP)は、"自分自身の感情や価値観"に重きを置いており、感情豊かではあるものの、自分軸が確立している。自分が好きなことをやるのが大事で、それに賛同する友達がいたらなおうれしい、といったイメージだ。

 F型のうちFeユーザーは、これまでのタイプに比べると境界が曖昧だ。しかし、このうちのE型(ENFJ,ESFJ)は、他者に共感を示し、思いやりの気持ちを持つ一方で、前提として自己の存在がある。E型は積極的であり、自ら進んで人助けをしたいという意志やある種の独善性を持っている。意志がない"主人公"やお節介でない"世話焼きの母親"は考えづらい。これに対し、I型(INFJ,ISFJ)は消極的で受け身だ。共感能力の高さと思いやりの強さはE型と変わらないが、その動機がなんなのかいまいちはっきりしない。なんとなく、人が喜んでいるのを見ると自分も嬉しい気持ちになる、人の笑顔が好き、そんなところだと思う。他者に依存的な傾向もある。自分の定義や意志が弱い分、自他の区別がつきにくく境界が曖昧なのだ。

 最後にISFJとの比較だ。S型が現実的で地に足をついた考えをする一方で、N型は理想や未来を想像する。S型が"写実画"なら、N型は"抽象画"だ。そのため、INFJの方が他者との輪郭がよりぼやけていて、自他の区別がつきにくい。もう一つの違いは、"他者"の範囲だ。ISFJが家族や友人、職場の同僚などの身近な人間関係を大切にする一方で、INFJはそれ以外の他者、すなわち、赤の他人や異国の人々、動物に対してもフラットに愛情を注いでいるようにみえる。これは、第1機能の違いからくるものだろう。ISFJの第1機能であるSi(内向的感覚)は、目に見えるものをありのままに捉える機能だ。そのため、目の前の人物に集中できる一方で、それ以外の他者や認知できない人・動物には想像が及びづらい。対して、Niを第1機能にもつINFJは、目で見たもの、耳で聞いたものから想像力を働かせて、より世界を広く捉える傾向にある。こうした第1機能の違いにより、INFJ の方が"他者"の範囲がより広いと考えられる。

 これまでの考察から、INFJは16タイプの中でも最も境界が曖昧だと考えている。なお、本項は、理由1(共感力)、理由2(自己の感情)を他のタイプについて考察したものとなっている。

まとめ

 ここまでの話をまとめる。
 INFJは、Feにより他者への共感がベースとなる。また、Niによりその他者の範囲が拡大する(理由1)。さらに、自己の感情が希薄であるため、他者に共感するだけでなく他者の感情が自分の感情になる(理由2)。これらによる"世界との一体化"は、他の16タイプでは見えず、INFJ特有の性質である(理由3)。そして、INFJの本質である可能性が高い。

検証:性質の説明可能性

 ここまでの考察から、INFJの本質は「世界と一体化している」ことだとする仮説を立てた。これを検証するため、この仮説によりINFJが持つ性質を説明できるかどうか試みる。

検証1:壮大な理想

 INFJは理想を持つ。そして、その理想は壮大だ。「世界を平和にしたい。」「思いやりにあふれる世の中を作りたい。」「みんなが幸せに生きられる社会を実現したい。」こうした理想は、自分と世界が一体化していると考えれば納得がいく。自分をより善く、より美しくしたいと思うのは自然だからだ。他のタイプが「親切で誠実な人間でありたい。」「仕事で成果を上げたい。」「痩せてきれいになりたい。」と思うのとちょうど同じだ。INFJの中では、これが"世界"が主語で起こっているのである。ちなみに、理想がマイナスに振れることもある。「世界が滅びればいいのに。」「こんな世の中はなくなってほしい。」こうした負の理想は、社会に絶望したINFJにしばしば見られる。自傷や自己否定を超えた"社会や世界の破滅"まで思考が及ぶのは、自己と世界が一体化していると考えると理解しやすい。

 なお、16タイプの中では、NJ型が理想主義傾向が強い。N型にみられる抽象的で未来に向いた思考と、J型に見られる一貫性、計画性が合わさるからだ。目指すビジョンに向けて一直線に突き進む"目的思考"を持っているといってもよい。ただし、タイプによって目指すビジョンの種類が異なる。T型(ENTJ,INTJ)は、理想の中でも"望ましい自分"にフォーカスしている。ENTJは、学歴や出世、業績、褒賞など目に見える結果を追い求める。INTJは、どういう人間でありたいか、どうやって生きたいかといったより内面的な自分像の実現を求める。いずれにしても、理想の対象は自分自身だ。

 対して、F型(ENFJ,INFJ)の理想は、他者や社会に焦点を当てている。前述したINFJの理想のように、社会や世界をより良いものに近づけたいというのが彼らの願いだ。両者の違いは、"自分"の立ち位置だ。ENFJは、他者や社会を自分の視点から捉えている。「弱者に手を差し伸べるのは、自分にとって当然だ。」「自分はこんな社会は嫌だ。変えたい。」こうして、自分と他者が別であること、自分が社会の一部にすぎないことを理解している。一方で、INFJは、世界を善く美しくすることに明確な理由を持っていない。世界が良くなることは、当然に自分が良くなることだからだ。こうした"自分=世界"という性質は、先の仮説に合致する。
 一言で表すなら「"世界"の理想が自分の理想」だ。

検証2:人類への愛

 INFJは優しい。思いやりがある。愛情深い。それだけでなく、その愛の対象は周囲の人々を超えて、世界中の人々や動物、自然にまで及ぶ。こうした人類愛や自然への慈愛は、"自分=世界"だと考えると理解できる。INFJにとって、他者や世界は"鏡"だ。自分が注いだ愛情で相手が幸せになれば、その気持ちがINFJ自身にも反映される。そのため、いわば自分を満たすために、人を喜ばせるような行動を自然としてしまうのだろう。

 この点は、ISFJも同じだ。Feによる共感力と、I型ゆえの慎ましさを持ち合わせているからだ。しかし、"鏡"の対象が異なる。前述のとおり、ISFJの世界は身近な人々で閉じているため、"鏡"も身近な人々に限定される。一方で、INFJの世界は開けているため、"鏡"の対象は果てしなく広がる。世界が穏やかで幸せに満ちていることが、INFJにとって心の安らぎとなる。
 一言で表すなら「"世界"の平和が自分の平穏」だ。

検証3:神秘性

 INFJは神秘的だ。未来を見通す力、深い共感力、高い理想、創造性、柔和な表情、広大な愛、多くを語らない内向性、それに、儚げで幸薄い姿が神々しさを生み出していると考えられる。時にはその神秘性から神や仏と言われることもあるし、INFJ自身、神や女神、神聖、巫女、天使、精霊、教会、神社、寺などのスピリチュアルな言葉に惹かれることがある。こうした神秘性も、「世界と一体化している」ことを考えれば納得がいく。"世界と一体化している"存在は、一人の人間を超えた存在である。これはまさしく神に等しく、神秘的だ。

 この点、INFPも近いイメージがある。INFPもNF型らしく、高い理想や優しさ、柔和さを持つからだ。それに、I型であるため、一人でいることを好み、秘密主義的だ。しかし、あくまで「変わった"人"」という印象だ。INFJのように人智を超えた存在とまではいえない。不思議ちゃん、夢見がち、芸術家、詩人などと呼ばれるが、やはり"人"である。これは、心理機能Fi(内向的感情)とPJ軸の違いからだろう。Fiユーザーは、"自分の感情"を優先するため、Feユーザーのように"周囲の感情"をそこまで重視しない。「世界平和」や「環境問題の解決」よりも、「自分が自分らしくいること」や「好きなことをしていること」のほうをよほど重要視しているようにみえる。
 また、P型はJ型と異なり、柔軟で適応能力が高い。ネガティブな言い方をすると一貫性がない。こうした"移ろいやすさ"は、INFPをより自由で柔軟な発想に導く一方で、不変の理想は持ちにくくなる。
 こうした理想の"範囲"や"一貫性"の違いから、同じINF型であっても、INFPはINFJほど神秘性は有さない。よくて、妖精やキャラクターといったところだろう。
 最後に、INFJの神秘性を言い換えるなら「個人の超越と"世界"との同化」だ。

まとめ

 ここまで、代表的なINFJの性質について、"世界と一体化している"ことで説明可能かどうか見てきた。それなりに説明ができている、というのが私の考えだ。もちろん、このほかにもINFJが持つ性質は存在する。自然が好き、音楽が好き、猫が好き、中性的、美意識が高いなどを私はINFJの性質として認識している。ドアスラム、燃え尽き、闇堕ちなど負の側面もある。こうしたものと仮説の関係性についても、今後考察していきたい。

最後に

 今回は、INFJの本質、すなわち「INFJを一言で表すと何か」という問いに対して自分なりの答えを書いてみた。全体として客観的な記述を心がけたが、特定のタイプについて批判的な表現と受け取られ、気分を害する方がいた場合は申し訳ない。私の思考の一端が、読まれる方の自己理解につながっていればうれしい。

ここまで読んでくださり、ありがとうございました。

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