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長編小説『処刑勇者は拷問好き王子を処刑する【人体破壊魔法】特化でサクサク、サクリファイス 第13話「伝言」

 怒りは最高潮! ぼこぼこタイム。おら、食らえ! おら! 割愛。だってグロシーンだし。

 おっさんを何度も殴ることに抵抗感はないが、最初に切断魔法を使ったのがいけなかったのか、かなりのショック状態で無反応なのが心配だ。腕がなくなったショックと、出血多量によるショック症状で、不死鳥のグローブの上からでも返り血が手に染み込んでくるぐらい殴ったというのに、喘(あえ)いでもくれないなんて。

 俺は肩で息をしている。疲れたからじゃない。心の隙間が埋まらない焦りを感じる。

「詠唱団(えいしょうだん)! このまま勇者を結界に閉じ込めたまま運べるか?」

 側近モルガンがいたことをすっかり忘れていた。詠唱団が呻(うめ)くように答える。

「モルガン様。できないことはないですが。グスタフ様をどうされますか! た、助けに行かないことには結界の移動はできませんよ」

 結界の境目に取り残されたら、それこそ人体が切断される。お、これはいいプラン閃いちゃったかも。動かなくなったお兄様を引き連れて詠唱団に向かっていく。あいつらのいる辺りが、ちょうど中と外の境界線だ。お兄様の身体よ、真二つになれと願いながら放り投げる。

 境目に差し掛かると火花が散るような電撃の音が鳴って、お兄様の身体は上下に分かれた。詠唱団は最後まで、お兄様の処刑を見届けた。褒めてやることにする。本当はこういうショーが好きだろ? なんたってリフニア国の人間は全て腐っているんだからな。

 俺は怯えた詠唱団の一人に指を伸ばす。俺のメスの指なら結界だって切り裂ける。泥棒が窓に丸い穴を開けるときの歪(ひず)んだ音がする。自分が通れるくらいの大きな穴を開けて、そこから外に出る。

 相変わらずの晴れ渡る草原だ。魔物もいなくて気持ちがいい。詠唱団の逃げ足が速いので、お兄様の腸で投げ縄をして側近モルガンを捕まえる。マルセルの兄の血の味が気持ち悪いから、こいつで口直しでもしようかと思ってメスの指で頬を裂いて、それから舌を伸ばす。

「ま、まさか、わしの血を」

 ここまで本気にされると笑ってしまうな。冗談だって。じいさまには興味がない。ちょっとした脅しだ。

「飲むかよ。それより、帰って潔癖腐れ王子に伝えろ。俺が次に処刑(サク)る標的を教えてやる。アデーラの命が欲しぃ。俺の手から守って見ろ。できるもんならな」

 アデーラは、俺の元仲間で弓と短剣が得意な女エルフ。そして、森を守り、水源を浄化している。でも、その水源の川は全部リフニア国に流れている。アデーラがもし死んだりしたら、リフニア国の川は汚染されることだろう。リフニア国の崩壊が楽しみだ。

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