それでも君がいい(Ⅰ)
菜:でな!そこのクレープがめっちゃ美味しくて!
陽:いいな〜、陽菜も食べたい!
菜:今度美玖も誘って行こ!
陽:うん!
わちゃわちゃした教室の中でも、一際オーラを放っているこの2人はクラスの中心人物である「小坂菜緒」と「河田陽菜」。
小坂菜緒は学校のマドンナ的存在で全男子の憧れの的である。
一方、河田陽菜はその小坂菜緒の影に隠れてあまり目立たないがかなりかわいい。
僕は、そんな河田さんが好きだ。
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「じゃあ、係と委員会決めてくぞ〜」
新学期の恒例行事が始まった。
〇:僕、国語係いきます
僕は迷わず去年と変わらず国語係を選ぶ。
〇:河田さんは、、、寝てる、、、
高校生活は2年目になるので、役割はサクサクと決まっていった。
「そしたら、全部決まったんで一旦休み時間にしまーす」
担任がそう告げると教室は一気に騒がしくなった。
陽:むっ、、、
菜:陽菜〜、ずっと寝てたな笑
騒がしくなったと同時に目を覚ました河田さんに声をかける小坂さん。
陽:なにしてたんだっけ、、、?
菜:係と委員会決めやんか〜笑
陽:あ、そうだそうだ笑私なに係?
菜:私と同じ家庭科!
陽:菜緒ちゃんと同じなら安心だ〜
なんだかあそこだけ空気が澄んでいる気がする、、、
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特に何事もなく1学期を過ごしもう夏休みが始まる時期。
「夏休み明けの文化祭に向けて実行委員を決めます!」
この学校では文化祭が盛大に行われるため、準備期間もそこそこに長い。
「委員会に入ってる人は掛け持ちになっちゃうので、基本は教科係の人にやってもらおうと思ってます!」
1年の頃も教科係だった僕は去年も実行委員をやった経験があるので立候補することにした。
〇:僕、やりま〜す
「〇〇くん、ありがと!そしたら、もう1人誰かやってくれる人いますか?」
実行委員といってももう1人相方もいるわけで、文化祭の雰囲気は割と好きなので特段苦ではない。
すると、、、
菜:陽菜やれば?
陽:えー、大変そうじゃん、、、
彼女らの声が聞こえた。
他のクラスメイトも同じような会話をしており、半ばなすり付け合いのようになっていた。
「俺夏休み部活あるんだもん」
「やってもいいんだけど委員会入ってるからな〜」
僕が立候補したからじゃ、、、とちょっとショックを受けつつも他の立候補を待つ。
何分か経った時、1人が手を挙げた。
菜:河田さんがやってくれるみたいでーす!
陽:えっ!?菜緒ちゃん!?
「河田さん、ありがと!助かる!」
小坂さんの発言に困惑気味の河田さん。
「じゃあ、今年の文化祭の実行委員は〇〇くんと河田さんにお願いします!」
結局、もう1人の実行委員は小坂さんの推薦?で河田さんに決まった。
僕の好きな河田さんと仕事ができることは嬉しいが、正直とても不安だ。
放課後、、、
僕は実行委員の話し合いのために河田さんに話しかけることにした。
〇:河田さん、今日ちょっと残れる?
陽:うん、いいよ〜
憧れの河田さんに話しかけるのはハードルが高かったが残ってもらえそうでよかった。
菜:陽菜〜、帰ろ〜
陽:ごめん菜緒ちゃん、私今日ちょっと残ってく
〇:ごめんね、小坂さん、実行委員のことで、、、
菜:ふ〜ん、がんばりや笑
陽:ちょっ、、なんでもないから、、!
そう言って小坂さんは帰って行った。
〇:じゃあ、読み合わせしちゃおっか
陽:う、うん!
まず、僕らは文化祭の要項について読み合わせを行うことにした。
〇:で、各クラス出し物か展示品ってことだけど、、、河田さん?
陽:すぅ〜、、、んっ、、!ご、ごめん!
〇:河田さんいつも寝てるよね笑
陽:い、いつも、、、
〇:あっ!いや、いつも見てるとかそーゆーんじゃなくて!ほ、ほら!係決めのときも!
陽:ふふっ、勝手に決められてた笑
ちょくちょく雑談を挟みながらなんとか読み合わせが終わった。
〇:そしたら、明日文化祭なにやるか決める時間作ってもらおっか
陽:うん!
〇:じゃあ、お疲れ様!ありがとね、残ってくれて
陽:うん、、、
そう言って教室を出て職員室に寄り担任に時間を作ってもらうことができた。
〇:よし、帰るか
靴を履き替え校門を出た。
?:〇〇くん!1人?かな?
誰かに声をかけられ振り返る。
するとそこには、、、
〇:河田さん?どーしたの?
帰ったはずの河田さんがいた。
〇:もう帰ったんじゃ?誰か待ってんの?
陽:誰かってわけじゃないんだけど、、、
なんだかはっきりしない河田さん。
陽:いつも菜緒ちゃんたちと帰ってるから1人で帰るの寂しいな〜と思って、、、
〇:うん?
陽:誰かいないかな〜って思って〜
いったい何が言いたいのかわからないが、、、
〇:じ、じゃあ、一緒に帰る?
恐る恐る聞いてみると、、、
陽:うん!
河田さんはにっこり笑って近づいてきた。
さすがにかわいい、、、!
〇:じゃあ、帰ろっか
陽:帰ろ〜
〇:てか、河田さん電車通?
陽:そーだよ
〇:最寄りどこ?
陽:××駅〜
〇:同じじゃん!
陽:えっ!ほんと!?
〇:がちがち!何中?
まさかの河田さんと最寄りが同じということにお互い驚きつつ、中学時代の話や他愛もない話をしながら駅に向かう。
ゆっくりお話ししながら歩いてようやく駅に着く。
高嶺の花のように感じていた河田さんとこんなに仲良くなれるなんて思ってもいなかった。
そんなことを耽っていると、、、
?:あれ?陽菜?と〇〇くん?
誰かに名前を呼ばれ2人とも振り向く。
陽:金村だ!
そこにいたのは隣のクラスの金村美玖さんだった。
陽:金村1人なの?
美:ううん、今菜緒がお手洗い行ってるから待ってたの
陽:そーなんだ
すると、ちょうどそこに小坂さんが戻ってきた。
菜:美玖お待たせ〜、って陽菜と〇〇やん!
美:今たまたま会ったんだ〜
菜:そーなんや
陽:ちょうど帰るとこ
河田さんがそう説明すると、
菜:はぁ〜ん、放課後デートちゅーわけですか!
とんでもない爆弾を投下してきた。
〇:えっ!?
陽:菜緒ちゃん何言ってんの!?
当然困惑する2人。
そんなこともお構いなしというように小坂さんは続ける。
菜:美玖、うちらまだ用あるもんな?
美:いや、もうクレープ食べたし、、、
菜:あるよな???
なんか金村さんが詰められているようにも感じるが、、、
美:あっ、そーだった!まだ用あったわ!
菜:よな!じゃ!そーゆーことで!
と言って小坂さんと金村さんは去って行った。
〇:な、なんだったんだ、、、
陽:、、、
河田さんは俯いてモジモジしている。
さすがに怒ったか?と不安になるが、、、
〇:と、とりあえず帰る?
陽:、、、うん
そのまま2人で電車に乗って帰ることに。
なんだか気まずくなり口数が減ってしまう。
しかし、特段話すこともなかったため車窓の外を眺めながら電車に揺られる。
「××、××、お出口は右側です。」
2人の最寄りに到着し、改札を出る。
〇:じゃあ、僕こっちだから
陽:、、、うん
〇:なんか小坂さんたち勘違いしてるみたいだけど、なんかごめんね笑僕なんかで、、、
陽:そ、そんなことない!
〇:河田さん?
陽:〇〇くんは勘違いされたくなかった、、、?
今にも泣き出しそうな顔でこちらを見つめる河田さん。
〇:い、いや、嫌だと言ったら嘘になるけど、、、
そう言うと、、、
陽:よかった!じゃあ、また明日学校で!文化祭頑張ろうね!
〇:う、うん
河田さんはまたにっこりと笑って去って行った。
〇:よ、よかった、、、?
河田さんの言葉の真意が分からぬままモヤモヤすることになった〇〇だった。
つづく。