プロダクトが持つ「特徴」をどう捉えるか
プロダクトが持つ「特徴」をどう捉えるかによって
恩恵があることが実は無償であり
むしろ害を及ぼす様なことに見える視点があります
現代の家づくりにおいて、特にハウスメーカーが提供する住宅の中には、「縦空間が得意」「長く軒を延ばすことができる」「3640mm以上の大空間を実現できる」といった特徴を持つものがあります。これらの特徴は、一見すると消費者にとっての大きなメリットのように映ります。確かに、広々とした空間や美しいデザインは、多くの人が求める理想の住まいの一部かもしれません。しかし、その「特徴」はどのような目的で設計され、伝えられているのか、立ち止まって考える必要があります。
私はここで、2つの視点からこの特徴を見てみたいと思います。
1. 消費者目線での「特徴」
消費者側から見ると、住宅の特徴はそのままメリットとして捉えられることが多いでしょう。広い縦空間があることで開放感を得られたり、長い軒によって日差しを遮りつつも快適な屋外空間を楽しめたりします。これらはまさに「住む人のための工夫」であり、日常生活の質を高める要素と言えるでしょう。時に人の感性と共鳴し心地よさを得ることが出来ると考えるのもこの視点です。
例えば、大空間が得意な要素は、家族の時間を共有しやすく、未来を見据えた柔軟な空間利用が可能です。長い軒は、雨の日でも外に出ることができたり、夏の暑さを和らげる効果をもたらします。こうした特徴が住む人々の生活にポジティブな影響を与えるのであれば、その要素には大きな価値があります。
2. プロダクトを売るための「武器」としての特徴
一方で、同じ「特徴」が、販売側にとっては「商品を売るための武器」として扱われているケースもあるように思います。たとえば、他社との差別化や競争において有利に立つために、意図的にその特徴が強調されている場合です。その場合、広い空間や独特の設計が果たして本当にお施主様のためなのか、それとも競争のためだけに作られているのか。こうした疑問が生まれます。
特に、「自由設計」という言葉がその象徴的な例として挙げられるでしょう。表面的には、消費者に「自由な家づくり」を提供するように見えるこの概念ですが、実際には多くの企業が内部のレギュレーション(規制)によってその自由を制限しています。これは、企業として一定の品質やコスト効率を保つために必要なことである一方、結果的にお施主様が思い描く本当の「自由」とはかけ離れていることも少なくありません。
このような場合、自由設計という言葉自体が消費者を引きつけるための「武器」として使われていると考えざるを得ません。顧客が自由を求めているのではなく、実際には企業のルール内で提供可能な選択肢を選ばされているに過ぎないのです。
自分らしい家づくりが失われるリスク
こうした「武器化された特徴」の問題は、最終的にお施主様自身の自分らしさを欠いた家づくりへとつながる可能性があるという点です。与えられた特徴の中で選択肢を絞られると、本来の住まい手の希望や生活スタイルが置き去りにされ、結果として「誰のための家なのか」が不明瞭なものになる危険があります。
たとえば、広い空間や長い軒が必ずしも必要でない生活スタイルの人にとって、それが必須条件のように提案されることで、自分が本当に望む空間の形を見失うことがあるでしょう。また、自由設計が実現できる範囲が最初から制約されていると、消費者はその制約の中で最適な選択をしているつもりになり、本来のニーズが満たされないまま家づくりを終えてしまうリスクがあります。
家づくりの「特徴」と向き合う
では、どうすれば「武器化された特徴」に流されずに、自分らしい家づくりを実現できるのでしょうか。一つの方法は、まず「その特徴が自分にとってどんな意味を持つのか」を問い直すことです。空間の広さや軒の長さ、そして「自由設計」という言葉が、自分や家族の暮らしにどう影響するのかを考え、単なるプロダクトの魅力以上に、自分の価値観に合った選択肢を見つけることが大切です。
また、家づくりを進める過程では、設計者やメーカーとの対話を重ね、表面的な特徴だけでなく、その背後にある意図や背景を理解する努力も必要です。特に「自由設計」という言葉に対しては、その範囲や制約について具体的な説明を求めることが重要です。それにより、受け身の立場を超え、能動的に自分の住まいを形作ることができるでしょう。
現代の家づくりでは、私たちは「特徴」を持つプロダクトの数々に囲まれています。しかし、それが本当に自分の暮らしを豊かにするものかどうか、見極める目を持つことが求められています。言葉に惑わされず、本質を見抜き、自己分析をして自分を理解する。その上で自分らしい暮らしを実現するための選択をする。これが、家づくりの本当の価値を引き出す第一歩ではないでしょうか。