空間の先にある暮らしの美学
ある日、設計士としてのキャリアを経て現在フラワーデザイナーとして道を歩む方と出会いました。その方が語った言葉の意味は、私の心に刻まれました。
良い空間を得て終わりでは無い。その空間に合う暮らしの営みをするべき。
このシンプルな意味に、住宅づくりや空間デザインが持つ本質的な意味が凝縮されていると感じました。
空間演出が暮らしを導く理由
設計士としてのキャリアを積み重ねたこの方は、「住まい」とは単なる建築物やデザインの完成形ではなく、そこで繰り広げられる人の暮らしを含めた「総体」として捉えているようでした。
人が、その人らしく暮らせる空間、そしてその空間にふさわしい暮らしの形。
その双方がそろって初めて、真に豊かな生活が実現するという考えです。人が何の為に暮らしについて考え、新しい住まいを得るのかを追求する家づくりでは納得の思考です。
特に”植物”という自然物を使って空間を演出するアプローチは、人が植物と炭素ベースで繋がる為、深い説得力があります。
植物には、単に空間を美しくするだけでなく、暮らす人に癒しやエネルギーを与える力があります。それは、人がこれまで自然と共生する生き物として歩んで来たからかもしれません。そのため、植物を取り入れた空間づくりは、「人らしい暮らし」を追求する為の きわめて自然な選択だと感じます。
住宅デザインの新たな視点
『空間の先にある暮らしの美学』とは、住宅業界における「家=完成形」という固定観念を覆します。多くの場合は担当者にとっても、時にはお施主様にとっても、「引き渡し」の瞬間がゴールとなりがちです。しかし、その先にある暮らしの営みこそが真のゴールであり、そこにこだわる視点が大切です。
住む人がその家でどのような時間を過ごし、どのように自分の感性を活かして暮らしを創造していくか、それが本当の意味での「住まいづくり」なのではないでしょうか。
自分らしさと自然の共鳴
人は感性を持つ存在であり、同時に自然の一部でもあります。そのため、自然を暮らしに取り入れることで、自分らしい暮らしをより深く追求できるのではないかと思います。植物を通じて空間を演出するという行為は、単なる装飾を超えた「生きるアート」そのものです。
現代社会を生きる私たちにとって、このような視点はとても貴重です。忙しさに追われがちな日々の中でも、自分らしい自然的な暮らしを意識し、そのための環境を整える努力を意識的に怠らないことが重要です。そして、その環境を考える際に、自然や植物が持つ力を見逃してはいけません。
おわりに
「住まい」は単なる空間として完結するものではなく、その先にある「暮らし」をどう創るかという問いに応えるための基盤です。空間に命を吹き込むのは、住む人自身の感性であり、暮らしの姿勢です。その姿勢を育てるきっかけとして、空間演出に植物を取り入れるというアプローチを、私たちも一度見つめ直してみてはいかがでしょうか。
あなたの住まいにも、自分らしさを表現する植物や空間演出の可能性を取り入れてみてください。