誰が〇〇殺したの?銀魂に込められたアンチテーゼを夢想する。

銀魂の重大なネタバレを含みます。

将軍暗殺篇からさらば真選組篇を経て、ラスボス虚が茂々暗殺には関係がない事がずっと不思議でした。あれほど権謀術数をめぐらしハツだミノだと残酷な描写をしておいて、その戦いの中心人物(天導衆と喜々)が突如戦力を無効化され、江戸の政権争いを強制終了させて宇宙戦争が始まったのです。
読者置いてけぼりのぶっ飛び展開ですが、各篇は独立した話で”テーマ”だけは繋がっているとすれば、なぜ茂々は銀魂で死ななければならなかったのかが読み解けなくはないようです。

パロ元ネタはほとんど知らないので読み違えが多々あると思いますが、一読者の感想として書いてみたいと思います。

銀ノ魂篇2年後では長谷川泰三に代わり桂小太郎が新時代の民の象徴として描かれていると仮定します。
桂は最終的には政権を監視するオバZです。
ヅランプは『自らの生き方、国のあり方に責任を追ってこなかった』『ゆえに我らは王を失った』と言っています。
天鳥船では坂本が『2度まで…わしらを王を死なせた愚かな民にするつもりか』と言ってます。

当初は国を守る為に悪に手を染めた定々も長年の時を経て自己保身に走ります。傀儡だった茂々も俯瞰してみれば定々政権を腐敗させた一因です。茂々は家老や影丸や御庭番集の犠牲を経てようやく国を背負う覚悟をします。喜々だって元々は天人に抵抗できる強い国を作ろうとしていたんです。
一人の英雄(将軍)に国を任せきりではいずれ腐敗してしまうので、民が国を作る自覚を持つべきだというのがテーマなのでしょう。その自覚なく天人支配に従い内輪揉めの戦争や政権争いを続けてしまった全ての民が、将軍達を殺してしまった。だから虚が茂々暗殺の黒幕とは描かれていない。
なぜ茂々は死ななければならなかったのかは、民(読者)へのアンチテーゼなのです。不祥事篇の長谷川泰三と同じですね。

テーゼに対する空知先生の個人としての回答が長谷川泰三の敵ごと丸ごと救うです。ただし答えは一つではないのが銀魂の特徴で、一人一人が各々の将として生きる、右も左も中道もたくさんの道があれば、そのうちのどれかが正解に辿り着く。読者は侍の魂を持ってして、銀魂の平和な日常へのパスポートが得られるのだと思います。

2年後は読者へのテーマの引き継ぎですね。
地球に墜落した天鳥船は原爆の暗喩とすれば、2年前に一度滅びた星というのは敗戦国を引きずる現代日本の暗喩なのかもしれません。
75巻で高杉がゾンビ化した天導衆に『敵は私じゃない 人間(きみたち)だ』と言われています。
大国による植民地時代や冷戦が終わってもなおテロとの戦いは続き人間達の戦火は終わる事はない。
長谷川泰三に言わせた『ようこそ侍の国へ』と言うセリフは新八神楽という次世代の民(読者)に託されました。
西洋的価値観がゆらぎテクノロジーが既存の社会構造までも変化させようとする中、読者はそれぞれの譲れない魂を持って生きていくことができますか?
その覚悟を持った時、銀魂は紙面を突き破って私達の人生にそっと寄り添ってくれるのだと思います。

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