銀魂の天鳥船から考える長谷川泰三と坂本辰馬の類似点と相違点

銀魂の重大なネタバレを含みます


銀ノ魂篇にて宇宙大戦が起きたのは、虚を主としたものではなく、天人の侵略を再現し、自らの意思で侍に敵ごと救う天人との共生を選ばせるための舞台として用意されたと考えています。

鳥船にて、「侍の国へようこそ」と言える可能性があったのは、おそらくその為に作り上げてきたキャラであろう長谷川泰三の他に、坂本辰馬も候補にいたのではないかと考えています。

全巻を通して「天人との共生」を口にしたのは2話目の長谷川泰三のみですが、実は27訓では坂本辰馬が「地球人も天人も星さえも見渡せる高い視点」を持って星ごとすくいあげると発言しています。

また桂とエリザベスが主役の蓮蓬篇では鳥船とほぼほぼ同じプロットを描いています。地球を侵略する蓮篷を止める為、侍という最後の希望を乗せたノアの箱舟(快援隊)は蓮篷母艦に向かいます。坂本は地球を売るという商談を米堕に持ちかけますが交渉は決裂。牢にぶち込まれる陸奥。蓮篷軍(ガン○○連邦軍)に対抗し母艦ごと爆発させようとするエリザベス。蓮篷の民ごと全てを道連れにしようとする米堕。ここで坂本が地球と蓮篷の民の両方を救うと宣言し蓮地同盟結成。蓮篷母艦は最後の手段として地球に墜落しようとするも快援隊が母艦をとめ、フミコは母艦システムを破壊して生死不明。

蓮地同盟を組めたのは恐らく坂本が蓮篷の民を救う事を約束したから。長谷川さんが地球も鳥船も両方救うと言ったパターンと同じです。長谷川さんがハタ皇子を殴った時のもっさんの表情は、自分がそれを言おうと思ってたという顔という可能性もあるかもしれません。

では何故鳥船で「侍の国へようこそ」と天人との共生を打ち出したのが坂本ではなかったのか。

一つ目に蓮篷篇と同じプロットの鳥船で坂本がその役目を負ってしまうと、蓮篷問題が再燃してしまr…

二つ目にすでに長谷川泰三がその役目を負うことは決まっていたから。蓮篷篇はそのためのプロトタイプだった。

三つ目に攘夷志士の立ち位置では、その役割を荷負えなかったから。

銀魂は万事屋の物語が主軸ですが、物語を動かすプロットとしては別の軸が存在しています。激動の時代において過去の価値観が否定される中での新しい時代の生き方です。src神がラスボスは時代(笑)と語っていますが(銀ノ魂篇ではキャサリンがラスボスは長谷川さんと言っている)、鳥船ではたとえ何度敵を倒したとしても止まらない戦の連鎖として表現されています。

鳥船のプロットからすれば虚が引き起こした宇宙大戦はきっかけにすぎないのです。銀ノ魂篇の序盤で既に天導衆は解放軍の手の内なのですが、圓翔は憎しみ戦い続ける事を選びます。

src神は銀魂の世界について「天人と共生するしかない」と語っておられたらしいのですが、万事屋の物語を俯瞰して時代の流れの中で見てみると、攘夷戦争も見廻り組と真選組の争いも将軍家の主導権争いも、あえて乱暴な言い方をすれば「内輪揉め」です。

では迫り来る新しい時代に対する戦い方としては何が有効なのか。一つに自分の立ち位置に自覚的かどうかという点があると思います。茂々は途中まで定々の傀儡であり俯瞰してみれば暗君とも読めます。それが一国傾城篇で定々と警察機構に鉾を納めさせ定々に引導を渡したのは将軍が国を背負う立場だと自覚したから。鳥船で争いを止めたのは喜々(と圓翔)。喜々が争いを止めたのは、鳥船の中で自分がそれをできる唯一の立場だと自覚したから。

そして長谷川泰三が新しい時代において敵ごと救うという道を示したのは、最初から彼をその立場に置くためにsrc神が描き続けていたから。なぜ長谷川泰三が局長の姿をしていたかというと、天人との共生を打ち出せる唯一の立場だから。眠っていた魂が目覚めるという煽りの通り、彼は元々そういう魂を持った人物だという説明しかされていません。圓翔が争いを止めるという決断の為に生み出されたように、長谷川泰三は当初からsrc神によってその役割が与えられ、局長という立場を通して自分の立場を自覚させられたのだと考えます。

そして物語は王なき時代においてその役割を担うのは民(読者)であると明示し、2年後世界でのアンサーにつながります。

この流れで考えれば攘夷志士は鳥船においても戦いの真っ最中で、戦いを止め天人との共生までは打ち出せないという立ち位置とsrc神は考えていたのではないでしょうか。2年後で桂がヅランプとして退場するのは、鳥船での将軍の選択に影響された結果と考えられます。つまり鳥船の時点では攘夷志士達はその立ち位置になかった、もしくは自覚的ではなかったとも読めます。

鳥船の時点では坂本は攘夷志士組の仲間として立っており、銀魂の物語の中でもそこまで理想をぶち上げられるキャラには育て上げられなかったのかもしれません(洛陽では喜々を救済して目覚めさせたのでお役目は果たしている)。もっさんだけ覚醒してしまったら他の攘夷志士が霞んでしまいますしね。

ところで読み返して気づいたのですが、二巻目のコラムで坂本龍馬の「恥ということを打ち捨てて世の事は成るべし。」という名言が出てきます。もしかして長谷川泰三の局長→無職→鳥船での復活というプロットは、銀魂の一番最初から組まれていたのかもしれません。

いや流石にそこまでいったら銀魂がサイコホラーになってしまうので(多分長谷川さん婿養子は後付けだし)、やっぱり長谷川さんが侍の象徴になってしまうのはホームレスになった辺りからという説にしておきたいと思います(作文)

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