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大阪には陰キャがいない?~マッドマックス以上の世紀末シティ大阪~


陰キャラとは?陽キャラとDQNどう違うの?


内向的なほど陰キャラ。コンプレックスの少なさ=自信=モチベーションの高さで外交的であっても、DQNとそうでない陽キャラに分かれる。


前回、藤子不二雄キャラを陰と陽に分けてみたナリ!②にて、
キテレツや「まんが道」の道雄などが陰キャラであると定義した。
また、陽キャラでもDQNであるジャイアンタイプと高次元の欲求を持つドロンパタイプの2つに分かれ、ドロンパタイプを見抜いて友好関係を築くべきという結論に達した。

ただ、一点気になることがある。
他の漫画でこういう分類をしようと思ったときに、藤子不二雄作品と異なり、偏りが見られる作品がある。
なにわ金融道である。

なにわ金融道はDQNだらけ?ほかの作品は?

「あほ!ボケ!カス!」、「何眠たいこと言うとるんや!」…汚い言葉が飛び交い、債務者達の金と人生が交差する大都会大阪。主人公の務めるマチ金(消費者金融)「帝国金融」には、今日も一般庶民から政治家まで幅広く金を借りに来る。
金を借りる理由はただ一つ。今日を生きるためである。

ナニワ金融道(青木雄二)は、「帝国金融」の営業マン灰原達之と借金にまつわる因業深い人間模様を描いた作品である。

この作品に登場してくる人物たちは、職業を問わずまた債務者かどうかを問わず、自己中心的に欲望の赴くままに行動する。
まんが道と同じく”道”がついている作品にも限らず、全く毛色が違う作品だ。まんが道には、石森や赤塚、記者や編集長など陽キャラも多く登場してくるが、なにわ金融道は陰キャラが存在しない。

北斗の拳?ウシジマくん?
北斗の拳は陰キャラであるアイリや聖人トキや籾爺のようにDQN以外も登場する。ウシジマくんも楽園くんのキミノリのような聖人も登場するし、債務者には宇津井をはじめ陰キャラも多い。
ナニワ金融道のように陰キャラ0ではない。

レイの妹アイリは、己の運命に絶望して薬品で目を塞ぎ、心も閉ざしてしまう
宇津井は、己の運命に絶望してギャンブルに打ち込み、心を閉ざしてしまう


なにわ金融道の登場人物と世界観

帝国金融社長 金畑(陽キャラ)

「ええか。わからず屋に対しては対応策は一つだけや。いっさい妥協しないこと、これしかないんや」

社長の金畑 金三は、警察官僚から悪徳弁護士まで広い人脈で、灰原達をサポートする大ベテランの金貸し。灰原や桑田達が解決出来ないような仕事の時には、現場に来ることもあるが、力技ではなく知恵と経験で同業や債務者達を騙し、その場を丸く収めるスーパー陽キャラである。動揺や汗をかく描写の多いこの作品のキャラクターにおいて、潜ってきた修羅場が違うからか、終始ポーカーフェースを貫くハードボイルドな男。


帝国金融 営業マン桑田(DQN)

「ワシらは得するほうやで!!ワシは損するほうにはぜったいにならんで!!」
灰原の先輩であり教育担当の桑田。出っ歯でパンチパーマに粗野な大阪弁。荒事が得意。

帝国金融 営業マン 灰原(ややDQN)

なにわ金融道の主人公灰原。桑田と共に大阪一の営業マンを目指す。ヤクザにも食らいつく持ち前のド根性と行動力の持ち主で、知恵やとっさの機転にも長ける。

肉欲棒太郎(左のDQN)と肉欲を信じてどこまでも付いていく部下の川井(右のDQN)

ワシはいつでも一人でやるんや腕が良ければ誠心誠意 一人でやるのがいちばんなんや

若干26歳で、不動産会社「肉欲企画」を経営する青年実業家。地上げ屋として儲かっていたが、灰原達帝国金融に型にはめられ事業を失敗する。
そこから無一文から広島で、妻や元社員の川井と激安チケット販売の商売に転じて、不死鳥のごとく会社(株式会社肉欲チケットサービス)を復活させた。
堅気に戻る為に犬の糞を食べる。親子三人と川合で山にテントを勝手に張り、そこで生活をしながら商売もやる。など、灰原以上の行動力と根性である。テントでの生活、販促のチラシを印刷しに川合の学校に忍び込むところは涙なしでは見れない。※債務者としての再登場ではなく、帝国金融とは無関係な肉欲を主役としてのエピソードというところが異質。
詳しくはこちらの記事にて紹介。

マルチ商法で灰原とタッグを組む「枷木」、先物取引に手を出した「校長」とその鬼嫁、抜けたところがある灰原の後輩「吉村」、消せない過去を持つ「朱美」、京大法学部出身でアメフトをやっていた警察官僚の都澤…。その他にも魅力的な人物が多いが、大体有名なキャラクターはこのあたりだと思う。
これ以外にも有象無象の債務者や庶民一人一人に、キャラクターがありストーリーがあるところがこの作品の魅力だ。

貧困が陰キャラをDQNにする

ナニワ金融道に登場する人物たちは、今日を生きるために金を借りに来るのである。大阪で生きていくためには、コンプレックスなどに悩んでいる余裕は無いのだ。
我々は、今日も明日もなんとなく生きていく事ができるから、コンプレックスなどに気がいき内向的になっていくのかもしれない。
なにわ金融道の登場人物で、泥沼や吉村など客観的にコンプレックス要素があるだろうキャラクターであっても、何も気にしない。今日を生きるために、必死なのである。泥沼に関しては、犯罪行為に手を染めて、灰原をはじめ周囲や社会に迷惑をかけるモンスター級のDQNである。
泥沼以外の債務者も、夜逃げや従業員を連帯保証人にするなど、同じように周囲に社会に対して不義理を働いていく。
自分が生きるために、他人を犠牲にすることが当たり前なのだ。この町では、政治家も警察も腐敗している。

ナニワ金融道は世紀末?マッドマックスの世界?


誤解の無いように言っておくが、私はこの作品が大好きで10代から何度も読み返している。
ただ、大阪に住んだことがないからか、周囲の環境に恵まれているのか、私はこの作品の世界をどこか他人事だと思って読んでいるのだ。北斗の拳やマッドマックスの方が、親近感というかこうなったらどうしようというリアリティを感じてしまう!
もちろん、法律や社会システムは日本であり、同様の事件や出来事もあっただろう。関西弁がなせるわざなのか?
やはり私にとって一人も陰キャラがいないという世界がファンタジーなのである。ベルセルク並みに別世界の理で動いているのだ。

灰原や肉欲には少年漫画の主人公に対する思いのように、熱くなるものがあるほか、肉欲を始めとする図表の陽キャラたちには共感できる部分がある。ただ、泥沼や当り屋やその当たり屋にカマを掘った田舎者などDQNにだけは、感情移入できない。理解できない人物達の集まった世界それがナニワ金融道なのだ。

なにより、陰キャラが絶滅(退化)してDQNだらけになってしまう世界など考えたくない。陰キャラが多い世界を切に願う今日この頃。
みなさんは、どう感じただろうか?


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