電気設備の保安点検について考えてみる①盤のお掃除とコツ
電機メーカーで電気設備保守を仕事にして10年が経ちます。会社でも中堅ぐらいになってきて、不満に思うことも増えてきました。同業の方も、同業じゃないけどサラリーマンの方にも、少しでも刺さればと思います。m(_ _)m
電気設備の点検といえばこれ。
配電盤内の清掃
「年に1回ぐらいは停電して、電気送ってるものを綺麗に掃除しましょうよ」という作業です。設備にもよるんですが基本年1回です(年次点検といいます)。何をするかと言うと
「鉄でできたでっかい箱の中を白い布でお掃除する」
です。(怒る方もいるかもしれませんが…)
つまるところただの掃除です。正直誰でもできる作業です。人が足りない時に人数合わせで人呼んで、配置する班がだいたいこれです。
白い布切れ(ウエスと言います)で、配電盤の中に積もった埃やら砂やらを拭き取るんですが、配電盤が置いてある電気室というのは、古い建物だとけっこう汚く、埃まみれの場所が割とあります(普段誰も来ないから物置状態ということも)。そうなると、盤の中も埃だらけになっているので、ウエスやクイックルハンディ(家庭用)で綺麗にします。
それだけ簡単な作業なんですが、なんでわざわざ書いたかというと
誰でもできると思って舐めてませんか?
と最近よく思うようになりました。
簡単なんですが、基本中の基本なんです。
なんで年1回点検しなきゃいけないかというと、
「電気の法律で決まっているから」
「配電盤の性能をある水準に保ちたいから」
なんですね。
この「性能」というのが大事な所で
「性能」=「絶縁抵抗値」になるんです。
「絶縁抵抗値」ってなんやねんというと、
「電流が流れる電路における電路相互間及び電路と大地との間の絶縁性」
らしいです。よく分かりませんね。
ようはダメになってないか数値で記録しましょうという話です。「去年と比べて数値落ちてきてるから、そろそろマズイね」みたいな基準が一応あります。
で、盤の掃除をすることでこの「絶縁抵抗値」が下がるのを緩和したり、改善したりするんです。エアコンも掃除しないと空調機能落ちてきますよね?あれと同じイメージです。
というわけで結構大事な年1回のお掃除なんですが、ただ闇雲に掃除すりゃいいというものでもありません。全部完璧に綺麗にできたら一番いいんですが、それをやろうと思うと
【人の確保・作業時間・お金】
が結構大変なんです。作業が大体日中8時間しかないんですが、盤の数が多いと意外と時間がかかるんです。人を増やせばいいんですが、人件費が増えるのでお客さんの費用が上がります。電気設備は表に見えない分、お金をしっかりかけたがる人はほぼいないので、必然的に人が減らされることになります。
そんなわけで、人数不足と時間が無い中、目指すべきは
「どれだけ効率よく、絶縁抵抗値が良くなる掃除ができるか」
ってことです。
これを分かってやってる人が割と少なくて、時間無いのにいつまでもどうでもいい所を掃除してたり、肝心なところが汚かったり……というのが多々あります。
ということで本題です。(前置きが長い)
Q:「絶縁抵抗値をよくするには?」
A:「とりあえず碍子(がいし)を磨け」
碍子とはなんぞや?
こんなやつです。
これは高圧でよく見るやつですが、色が白だったり黒だったり素材が陶器でできてたりかなり種類があります。一般の人でも電柱を見上げればお目にかかれます。なみなみの白いやつがそうです。
絶縁抵抗が悪くなる原因は、こいつらかケーブル本体が多いです。溝があるので埃が溜まり、放っておくと段々悪くなってきます。なので、とりあえず最低限「碍子」だけは綺麗にしておきたいということになります。
この「碍子」にウエスやタオルを巻いて、キュッキュッと音が出そうなぐらい磨くと、悪かった絶縁抵抗が劇的に良くなります。
磨くときは乾拭きでもいいんですが、「碍子洗浄剤」というものが大都工業株式会社さんから発売されてます。いいお値段しますが、驚くほど回復したのを見たことがあるので、一度試されてもいいかもしれません。私が知ってる営業さんもかなりいい人です。
細かいことを言うと「碍子」というより「絶縁物」になるのですが、話が広がりすぎるので今回はやめます。
そんなこんなで、今回言いたかったことは
①ただの掃除とはいえコツがあるよ
②時間考えて仕事しようね
③とりあえず碍子だけは綺麗にしてくれ
でした。
理論の話や細かい話はだいぶ端折ってますので、ほんとのプロの方が読んだらおそらく怒られると思います。
もっと踏み込んだ質問がある方、間違ってるぞという苦情など、ご意見・ご感想お待ちしております。
お読みいただき、ありがとうございました。
m(_ _)m