加賀屋をハシゴする
秋葉原駅について、私がまず足を向けたのはドラッグスアだった。この後のハードな行程をできるだけ快適・スムーズに駆け抜けるため、肉体の「仕込み」を済ませてしまおうという算段である。
ドラッグストアでは、個包装のサクロンと、ヘパリーゼ2本を購入する。人工的な雰囲気のグリーンがいかにも「効きそう」なサクロンを1包飲み干してから、ヘパリーゼも続けて内臓に送り込む。
すぐに駅改札に引き返すと、すでに友人のFが待っていた。1本余分に買っておいたヘパリーゼを進呈し、彼がそれを飲み干すのを数秒見届けてから目的地に向かう。
昭和通りを渡ってすぐの雑居ビルの地下1階、「こんなところに」という立地に加賀屋秋葉原店はある。まだ夕方5時半だと言うのに店内は大賑わいだったが、うまくテーブルが空いていた。着席してすぐに瓶ビールと煮込みを注文する。
このFと徒歩で移動しながら、加賀屋の支店を3店舗連続でハシゴしてしまおうというのが今晩の計画である。一晩に複数の加賀屋支店を訪れたことは過去何度もあるが、それはあくまで蒲田や神田など近距離に複数の支店があるエリアで「1軒目:加賀屋⇒2軒目:別の店⇒3軒目でいい店が見つからず、1軒目と別の加賀屋」というようなパターンがほとんどであって、2軒以上の加賀屋を連続して訪れたことはないし、3つもの支店を一晩で回ったことなど当然のごとくない。
この加賀屋縛りのハシゴ酒の出発地として選んだのが、この秋葉原店なのであった。とにかく賑やかな店で、Fと話す声も自然と大きくなる。続けて大声を出しているとアドレナリンでも出るのだろうか、なんだか高揚した楽しい気分になってくるから不思議である。
Fは職場の同僚である。2年後輩だが、十条に住んでいて、学生時代から度々十条店と東十条店で飲んでいたという立派な加賀屋ファンである。曰わく、「串焼きと煮込みでがっつり『モツ飲み』したい時は十条店、うまい魚を食べたい日には東十条店、と使い分けるんです」。なお、十条店と東十条店をハシゴしたこともあるといい、「加賀屋ハシゴ」に関しては私より先輩と言っていい。
ちなみに東十条店は個人的にも一番好きな支店の一つで、食べログの基準で採点するなら、「8.6」くらいが妥当な評価ではないかと考えている。
いや、近隣の十条店が嫌いというわけではなく、むしろ大好きなのだが、こちらは食べログ換算で7.8くらいか。いずれにせよ、この評価は銀座のすきやばし次郎(4.10)よりも高いわけで、改めて加賀屋という酒場の実力の高さに感じ入る他ない。
余談ついでに食べログについて少しコメントさせてもらう。先に取り上げた十条店と東十条店だが、実際に食べログのサイト上で表示される点数は、十条店が3.03、東十条店が3.24であり、上記の私の見立てよりも大幅に低い、というより半分以下のスコアになっている。
「運営会社に年会費を払うと本来の評判以上に点数が上がり、逆に支払いを拒むと評価を落とされる」など、食べログについては、度々評価操作の疑惑が取り沙汰される。他の店がどうかは知らないが、私が確信をもって言えるのは、加賀屋に関して言えば、確実に不当な点数操作が行われているという事である。
十条店にせよ東十条店せよ、本来の実力の半分以下に点数を抑えられているわけで、これは加賀屋だからなんとかなっているが、並みの飲食店だったらとっくに廃業に追い込まれているだろう。だって、3.5クラスの実力をもった店が、1.7点をつけられるようなものなのだから。
加賀屋がなぜ食べログからこのような不当な扱いを受けているのか。年会費云々は証拠がないので何とも言えないところだが、一つ素人でも分かるのは、食べログに登録されている飲食店の中で、評価が5を超えている店が1店たりとも存在していないということである。
そんな状況下で7点や8点を優に超えてくる飲食店があったら何が起こるか。簡単な話で、食べログ内で一種のステイタスになっている「百名店」、あれを軒並み加賀屋が席巻することになる。こうなると、「百名店」は実質的に「単なる加賀屋系列の支店リスト」になってしまい、街中でよく見る、店の入り口に百名店ステッカーを貼っているような店は、軒並みこの強力な称号を失うことになる。
百名店に指定されている店の多くは、食べログにとって、安くない年会費を払ってくれている「お客様」である。食べログが加賀屋の評価を露骨なまでに低く掲載する理由はどうもこのあたりにありそうだ。