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加賀屋三鷹店について

【2021/8/17追記】その後、三鷹店の前を通る機会があったが、店の左側半分はビルごと解体され更地になっていた。もしかすると、「大規模なリストラを実施した」というより、単純に耐用年数を超えたビルの取り壊しによる、やむを得ない店舗縮小だったのかもしれない。もしそうであれば、以下の文章は私の思い違いにすぎないことになるが、実際のところはどうだったのか・・・

私が初めて訪れた加賀屋は、学生時代のアルバイト先から至近距離の三鷹店だった。この話は初めての投稿にも詳しく書いたので省略するが、三鷹店の最大の特徴は、隣接する2棟の雑居ビルの境界をぶち抜いて広がる自由すぎる店内で、初めてここを訪れた客は、左右どちらの扉から入店すればいいのか分からず、必ず店の前で首をかしげることになるのが「お約束」であった。ちなみに、店内は廊下で繋がっているので、どちらから入店しても問題ない。

先日、三鷹店を久しぶりに訪れた。ディープな加賀屋ファンならご存じだろうが、三鷹店は、荻窪店・練馬店と経営が同じで、メニュー構成から金額・煮込みの味つけまで基本的に全く同じである(というか卓上に全く同じデザインのメニューが置いてある)。私は通いなれた荻窪店を訪れることが多いので、必然同スタイルの三鷹店で飲むことはそれほど多くない。

そんなわけで、数か月ぶりに三鷹店を訪れたわけだが、店の前までやってきて思わず声を上げてしまった。

店の左側半分のシャッターが降りているのである。

繰り返しになるが、店内の敷地は左右に分かれていても、店内は繋がっている(暖簾をくぐってしまうと店内がビル2棟にまたがっていることにまるで気づかない)ので、店の「半分だけ」がシャッターを降ろしている場面など一度たりとも見たことはなかった。コロナ禍で飲食店が壊滅的なダメージを受けている昨今である。嫌な予感に、胸のあたりが強張った。

右半分には暖簾が下がっていてこれまで通り営業しているようなので、動揺も鎮まらぬまま入店する。やはり、嫌な予感は当たった。店の左側に抜けるための通路が消失している。つまり、左側のシャッターが下りていたのは、一時的に客席数を絞っているのではなく、今後、加賀屋は「こういう店」として営業をしていくことを決断したようなのだった。

もともと三鷹店の右半身は「調理場」としての役割が大きく、客席はカウンター数席とテーブルがいくつかあるだけだった。客席の少なくとも6割は左側の敷地に存在していたはずである(左側の敷地には4~5グループくらいは入れる座敷席があった)。

つまり、加賀屋は以前の半分以下のサイズに規模を縮小して営業を続けることを決断したということだ。

私は衝撃を受けた。私が最も足しげく通う加賀屋は荻窪店で、もちろんこちらも時短営業等で大変には違いないだろうが、それでも基本的に常連でほとんどの席は埋まっている。三鷹店は、かくも大掛かりなリストラを断行しないといけないほどの苦境に陥っていたのか。

なにはともあれ、瓶ビールと煮込みを頼んでからメニューを見る。品ぞろえは以前と変わらないが、値段は軒並み1割くらい値上げされていた。ここにも苦境がにじむ。三鷹店・荻窪店はもともと加賀屋系列としては少し高めの値段設定なのに。

その後出てきた煮込み・串焼きの味は全く逆風を感じさせない堂々たる絶品で、少しだけ救われた気分になった。この逸品が失われない限り三鷹店はきっと大丈夫、と自分に言い聞かせた。

この日は、久しぶりに再会した親戚が、大病でげっそりとやつれていてショックを受ける、というような心境に陥りずいぶん落ち込んだりもしたが、よく考えれば失礼な話で、三鷹店はこれからも生き残るため、設備投資をしてまで店の規模を縮小したのである。つまり、今後も末永く営業を続けるためこの大手術に踏み切ったわけで、私がなすべきは動揺でも憐憫なく、繁盛を祈って、三鷹店でこれまで以上に楽しく食べて飲むことであるはずだ。

今晩も三鷹店で一杯飲んでこようと思う。頑張れ、三鷹店!

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