第21回 日本一簡単なオプションの「オ」
0.前書き
9/8の昼間に9月限日経オプションの建玉を表にしたらそこから1日余りでフォロワーがあっとう間に増えた。皆さんの注目度が高いと感じる。ただし中には余りオプションのことは詳しくないという声も聞かれたので『ギリシャ文字を使わない』オプション講座をやってみようと思う。
1.オプションのパラメータをラクに理解する
恐らく理科系の大学でも出てなければ普通はここでギブアップする。そこでこのパラメーターについては詳細よりも「一言でいうとナニソレ?」とか「具体的にその数字は何を意味するの?」という疑問に答えるよう解説する。
<デルタ>原資産「1」に対するポジション量
今、日経平均が36,000円だとすると行使価格36,000円のオプションのデルタは0.5(50や50%とも言う)。オプションの世界では相場は上も下も対称的に動くと仮定されてる。つまり、上に行くか下に行くかは確率50%である。だから日経平均の値動きに対してその50%分だけオプションのプレミアムが動くと言う意味である。日経が1,000円上がればプレミアムは500円上がる。これだけ覚えていればよい。40,000円のコール・オプションのデルタが10と言うことはマーケット参加者は40,000円まで戻る確率なんぞ10%だと考えているということです。
<ボラティリティ>ガチャガチャ動く度合い
ボラが上がればプレミアムは何故上がるのか?今、アナタが40,000円コールを持ってとする。赤線のように大きく動く相場の方が権利行使する可能性は高いというのは感覚的に理解できるだろう(だからチャンスがある=プレミアムが高い)。一方、青線のような凪相場が来るのなら40,000円コールなんぞ価値はない(だからプレミアムが安い)。なお、ボラは%表示されてるがこれが1%動いたらプレミアムがどれだけ動くかをベガという。
<セータ>1日経過した時のプレミアムの変化
何も他の条件が変わらなければ(そんなことはないのだが)明日になればセータの数字だけプレミアムは減価してますよという意味。今日現在100円のプレミアムのオプションのがセータが▲20ならば明日になれば80円になってると言う事。満期時には時間的価値がゼロになるので、例えば3ヶ月前ならば1日の時間経過は大した影響ではないが、これが満期まで1週間前になると相場がフェイバーに動いてもセータで負けてしまうことはよくある。
覚えておくのは実はこの三つ(四つ)でよい。
2.買い手と売り手の言う考え方
まずコール・オプションを買うと言う行為は相場が上がることを狙う戦略と言うのは間違ってる。先物を買えば儲かるのだからわざわざオプションを買う必要はない。ではオプションンの売買の妙味はどこにあるのか?買い手/売り手に分けて考える。コールやプットではないことに注意。
買い手にとってはオプション・プレミアムは将来の期待収益に等しい。
チョット分かりにくいと思うので早速実戦に入る。今、日経平均が36,000円の時に36,000円コールを買うとする。この時、上記でも触れたがデルタは0.5である。相場が下がってしまうと元も子もないので先物でヘッジをすることにする。コールオプションのデルタが0.5ということは先物を0.5枚売ればよい(実際にはミニでやって下さい)。
この時のポジションは以下の通り。
コール1枚(上がれば儲かる)vs 先物0.5枚(下がれば儲かる)
この時点では(瞬間的に)日経平均が上がろうが下がろうが損益は相殺されることになる。これをリスク・ニュートラル状態の「デルタヘッジ」をしてると言う。では相場が次のように動くとしよう。
(1)40,000円近くまで上昇すればコール・オプションの価値は高まってる。デルタが70になってるとすれば、この時先物は0.5枚しかヘッジしてないので、追加で0.2枚を売ってデルタをニュートラルにしなければならない。
(2)次に34,000円まで相場が下がりコールオプションの価値は減価、デルタが0.3になってるとする。先物は0.7枚売ってるからヘッジ量は多すぎる。よって0.4枚買い戻さなければならない。勘のいい方は分かると思うが「上で売って下で買い戻す」という必ず負けない先物ポジションが出来上がる。後はこれを満期までに何回も繰り返すだけ。そして相場が大荒れで何回も繰り返せるときに先物の収益はグンと上がる。ボラが上がればオプション価値が上がる=プレミアムが上がるという理屈はここにある。そしてココが大事なのだが市場が合理的であるならば、この先物売買収益の合計と最初に払ったオプションプレミアムは同じでなければならない。だから買い手にとってはプレミアムとは未来の期待収益なのだ。
一方、売り手にとってはオプション・プレミアムを護るためのヘッジコストである。売り手は最初にオプションプレミアムを貰っているため、これを原資にしてヘッジが出来る。そのヘッジコストがプレミアムを下回れば勝ちである。先の例で言えば、36,000円コール売りと先物0.5枚の買いをセットにしてスタート。上に持って行かれればデルタが上昇しているので、上で先物を買わなければならない。相場が下がればヘッジ量が余分なので下で先物を売る。オプションの買い手とは逆に必ず負ける。しかし相場が動かずにデルタの変化がなければ先物のポジションは動かさなくてもいい。後は満期日よ早く来いと祈るだけ。ボラ売りとかガンマ・ショートとかベガ・ショートと言われるが全部同じことを言ってる。
3.今日(9/9)の相場解説
今日、日経平均は1,000円安近辺で寄った。仮に36,000円コールを買っていて先物でデルタヘッジ(先物売り)を既に先週時点で組んでいるプライヤーがいたならば、コールの価値減少+先物のオーバーヘッジと言う組み合わせになってる。よって先物を買い戻さなくてはならない。下から1,000円上がって行った相場の片隅にはこういうポジショニングがあったかも知れない。逆に8/5以降のリバウンドでもう二番底はないと確信し、36,000円プットを売っていたプレイヤーは相場が下がってるのでデルタヘッジの積み増しで先物を売らなければいけなかった。しかし荒れ狂うボラの高い相場ではそういうプレイヤ-はいなかったようである。
・・・という推測も出来る。ホントかどうかは相場の神様にしか分からないが。
超端折って書いてますので表現が正確には正しくない箇所がありますが、無料Noteなのでご容赦ください。本日は以上です。