子を空に返す


"不覚にもこんな日が晴れていてなんともいえん気分"

2022 09 30 am tweet

2年前のあの晴天の日はずっと鮮明に蘇る。
どうして何かある日は雨なのにこんな日に眩しいくらいに晴れ渡っているのかと緑2色の電車の車窓から久しぶりに空を見上げた。
ぎゅっと鞄の紐を両手で握りしめて1人でその場所に向かう事に悔しさだけは感じていた。

人工妊娠中絶

私はその日自分の意思で小さな小さな命をお空に返した。

選択肢というものは成人していれば何個でもある。
けれど"普通の人とは少し違う"私には選択肢は限られていた。妊娠がわかった時は嬉しさと驚きが最初にあったが、選択する道はひとつしかない。と相手には伝えずに自分の意思で中絶を選択しました。

自分が精神障害で遺伝する可能性
障害の病状悪化で突発的自死を選んでしまう可能性
処方薬の影響で5体満足に産むことができない可能性
相手側との関係性があやふやな状態でありできたとしても中絶するしかないよねと話しはしていた事
アルバイトから積み重ねやっと正社員に上がることができキャリアアップの目標があった事

人にしたら全てが言い訳にしか受け取れなくなるかもしれない。産むリスクと産まないリスクを考えた時に私には"今は産めない"という結論に至った。

なぜ今になって、となるかもしれない。この数ヶ月テレビドラマで中絶や出産を題材にしたものが増えてきてそのどれもが"産む"選択をした話だったからだ。確かに"産まない"選択は批判されやすい事もあるからなのか...不思議に感じたからである。

ただし矛盾がある。
昨今話題にあがる旧優生保護法問題と、SNSでの障がい者の出産育児についての誹謗中傷だ。

産まなくても産んだとしても批判されるこの世間に
私は伝えたい。選択をするのは本人たちだ。周りが本人達の意思よりも世間体を気にして本人達に選択をする隙を与えない環境は作るべきではないのではないかと私個人として伝えたい。画面上でしか見てない産むを選んだ人を産まないを選んだ人を否定的に感じたとしてもそれを言葉や文字にしてはいけない、あなたの家族の誰かがとかじゃない限りやめるべきだと強く思っています。

私は2年が過ぎた今だからこそやっと母親に伝える事ができました。エコー写真を見て母は間違いじゃないよ。あなたが間違いじゃないって今思っているなら。あなたが決めた事、そこが大切なのよ。
周りにはせんど言われたけれど私はあなたを産んで良かったから。生まれてすぐに手術をしてお医者さんにも子供が授かれるかは...と言われていたけれど
子供を授かれる体だったんだねと優しく言葉を紡いでくれました。

あの日以来私は空を沢山見上げます。
空に返ったあの子がいつかもしもその時がきたら私の元に返ってきてくれたら幸せだなあと。
その日がくるかはわかりませんが
一度でも私の元へ来てくれてありがとう。

術後の翌日に昇進辞令を頂きがむしゃらに2年を駆け抜けました。少し休みなよとの子からのメッセージなのか不慮の事故を起こしてしまい今は少し長いお休みを頂いています。休みながら少しずつあの日から止まったかの様な心の時間を進められるようにお腹に手をあてて、麻酔が効かず感じた痛みとほんの数週間私のなかにした小さな命を抱いています。
それがまだ小さな丸いままでも命であると感じていました。

男性にはなかな伝わらないかもしれませんが
授かると女性にはなんとなくそこに命がある暖かみさを感じます。その小ささがどれだけでも遺伝子でしかないと感じるならあなたは女性の気持ちに添える人ではないのかもしれません。きっとどれだけ口が上手く丸めこもうとしてもわかってしまうものがあります。

私は今からお線香と花を添えてしっかりと手を合わせにあの日乗った緑の電車にのります。

どうか、皆さんには皆さんの選択をしていつかの幸せを掴んでください。
私は私なりの幸せをこれから探しにでる長い道の一歩を今から踏み出します。

"幸いにも今日という日が晴れていて
背中を押された気持ちである

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