理三はどれくらい難しい?合格者の視点から
理三→東大医学部卒医師のカガミルと申します。
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今回は実際に理三に合格した一人として、理三合格の難易度について解説します。
理三といえば、ドラゴン桜の桜木先生が「理三は宇宙人」と言っていました(汗)
それぐらい難しいイメージですが、経験者だからこそ語れる内容もあります。
私が合格したのはかなり昔のことですが、毎年入試問題を見ているので最近の状況も踏まえて解説します。
なおこの記事は以前の私のブログ記事とほぼ同じ内容ですが、ブログを休止中のためnoteで公開しました。
理三の入試データ
東大入試の概要
まず東大入試の配点について押さえておく必要があります。ここでは理科だけに絞ります。
ここにセンター試験の得点が110点に圧縮されて加算され550点満点となり、この点数で合否が決まります。計算で小数点以下の端数が出るため、過去には0.1点差で不合格になった人もいます。
他の予備校の偏差値を見ても同様で、日本の大学の中で最高偏差値です。
合格者数と倍率
第一段階選抜倍率とは、いわゆるセンター試験による足切りの後の倍率です。
理三の志願倍率と第一段階選抜倍率は理一より高いですが、両方とも理二とはあまり変わりません。しかしだからといって難易度が同じという意味ではありません。両者では志願者のレベルが全く違うからです。
合格者数は以下の通りです。
理一と理二に比べ、理三は圧倒的に少ないです。
上記のWebサイトには2名増加して97人になる可能性があるとも書かれていますが、狭き門であることに変わりはありません。
同学年人口が100万人とした場合、合格者はそのわずか0.01%ということになります。
合格最低点
2020年度で見てみましょう。センター試験の点数を加えた550点満点での合格最低点です。
では、二次試験でどのくらい点数を取る必要があるのでしょうか。
東大の受験生だとセンターは900点満点中850点くらい取れることが珍しくないので、110点満点換算で104点とします。上の合格最低点から引くと
二次試験では60%台半ば以上の得点率が必要です。
「なんだ、6割台でいいのか」とあなどってはいけません。
理1、理2の受験者は、全国的に見れば受験生のトップクラスです。そんなトップクラスが5割取れれば合格できる試験なのですから、一般の大学よりはるかに難しいことはご理解いただけると思います。
また東大入試では1点差に何十人がひしめき、0.1点で合否が決まることもあります。そんな東大入試で理一より60点以上多く取らなければいけないのがいかに大変かはご理解いただけると思います。
なお理三にも推薦入試での合格者が数名いますが、研究などで相応の成果を上げる必要があり、一般入試の方が確実性は高いと思います。
理三合格の難しさ
ここまでは入試データを元に理三の難易度の高さを説明しました。
一方でデータには現れない難しさもあると思います。私が実際に理三を受験し合格した経験も踏まえ、説明したいと思います。
求められる能力の高さ
処理能力
東大入試の特徴は、どの科目でも高いレベルの処理能力を要するということです。
英語は限られた時間の中で読解、英作文、文法問題などの幅広い問題をこなし、かつ高得点を取らなければなりません。
昔の数学は発想力を問う問題が多く、捨てる問題を見極めて解ける問題に全力を注ぐという戦略が有効でした。しかし最近では高度な発想力を要する問題や手が出ない難問は以前より少なく、ある程度方針を立てやすい問題を、時間制限の中でどこまで解ききるかの勝負になった感があります。理科でも処理能力が要求されます。
論理的思考力
受験だけでなく社会に出た後も必要な能力ですが、これも高いレベルで求められます。現代文ではもちろん、数学や英語でも問われます。
英語力
英語は比較的点数が安定しやすい科目です。理三に合格するには高得点を取ることが必須で、読み、書き、リスニングと総合的な能力を身につける必要があります。
一方で語彙力はそれほど要求されず、むしろ私大の方が難易度が高い語彙を問う問題が多いです(自由英作文をやる上では語彙が多いに越したことはありませんが)。その代わり英語の本質について問う問題が多いと感じます。
読解力
国語ではもちろん、問題文を正しく読んで理解する力は数学など他の科目でも必要です。
計算力
数学や物理で高得点を取るためには、計算を高速かつ間違えずにやりきる能力が必要です。
言語化能力
答案とは、自分の思考内容が採点者に伝わるよう言語化したものです。
現代文では設問の解答を作るのに必須で、特に抽象と具体を行き来して表現する必要があります。また数学でも「頭ではわかるけれどもうまく表現できない」という問題をしばしば見かけるため、思考を言語化して答案に落とし込む力をつけなければなりません。
その他の能力
東大入試の数学では空間図形についての問題が頻出であり、空間認知能が高いことが望ましいです。
意外に思われるかもしれませんが、長時間筆記を続けられるような指先の体力も必要です。特に東大数学では書く分量が多いので、健常者でも途中で疲れてしまうくらいです。病気や事故などで手に少しでも障害がある受験生の方は事務局に相談してみてください。東大では障害者の受験も受け入れているので、代筆などの配慮をしてもらえるでしょう。
逆に天才的な記憶力はそれほど必要ないと考えます。私を含め、理三合格者の中でも暗記物が苦手な人はかなりいると思います。
滑り止めの少なさ
第一志望に落ちた場合に備え、多くの人は複数の大学に出願すると思います。しかし理三を受験して不合格になった場合の滑り止めはかなり限られています。ここでは2つのケースについて説明します。
医学部志望の場合
首都圏で医学部のある国公立大は、東大、東京医科歯科大、千葉大、横浜市立大学など複数あります。しかし国公立大学の前期日程は1つしか出願できません。理三に出願した場合、東京医科歯科大や千葉大などの前期には併願できないのです。
そのため理三の滑り止めとなる医学部は、慶應義塾大学医学部などの私大か、国立大学医学部の後期しかありません。私大は授業料が2000万円以上であり経済的に困難な家庭が多いでしょう。国立大学の後期も決して楽ではなく、例えば千葉大の後期は理三に落ちた人が受験するためかなりの難易度だと言われています。
前期で理三か他の国公立大学かの二者択一を迫られる受験生は多いでしょう。毎回A判定を取れる人ならそれほど不安なく理三を受験できるかもしれません。しかし自信がなく安全策を取りたければ、合格圏内の国公立医学部を受けざるを得ないでしょう。
私が理三を受けることを決意した理由の1つは東大模試で理三A判定を取れたからでした。そうでなければ臆病者の私は受けていなかったと思います。補足しますと、高3で受けた全ての東大模試で理三はA判定でした。
また理三を受ける前、試験慣れのためにある私大を受けました。理三受験より前に合格がわかりましたが、経済的に行くのは無理だったため滑り止めにはなりませんでした。
他の学部(例えば工学部)志望だが、理三も視野に入れている場合
理一には余裕で合格する力があり、理三を受けようか迷っている場合です。前期で理一と理三の併願はできないため、1つに絞るしかありません。
昔は後期で理一を受けられましたが、最近は廃止されています。理系志望であれば滑り止めとして私立(早稲田や慶應)か、国立大学の理系の後期試験に併願することになるでしょう。それでも理三に落ちた時に、(表現が悪いですが)世間的に理一より格下と認識されている大学に行くことになるので、それなりの覚悟が必要でしょう。
ナンバーワンかつオンリーワンであること
まず、近年医学部人気が過熱していて、公立・私立問わず全国的に医学部の偏差値は上昇傾向です。先行き不透明な時代、医学部に入って医師になれば「手に職をつける」ことができるからです。
2022年現在、医師は非常に安定した職業です。働き口は多数あって困ることはなく、非常勤でも十分にお金を稼げます。
しかし理三合格を難しくしているのは医学部人気だけではありません。それは、理三がナンバーワンかつオンリーワンだからです。
テレビで活躍した河野玄斗氏や水上颯氏をご存知の方も多いと思います。2人とも理三→東大医学部卒の人で、多数のバラエティ番組で活躍していました。「頭脳王」を見た方は「東大医学部卒」という肩書きが幾度となく強調されていたのがおわかりでしょう。
今や理三/東大医学部はブランドなのです。これは偏差値が同程度の京大医学部では見られない現象であり、オンリーワンでもあるのです。
そんなナンバーワンかつオンリーワンが故に多くの受験者が目指します。中には、医学に興味がなくてもそれを理由に目指す人もいるかもしれません。そんなハイレベルなライバルとの戦いに勝たなければ合格できないのです。
終わりに
今回は理三の難しさについて、実際に合格した者の視点から解説しました。
最後に補足したい点があります。
確かに理三合格者は優秀と言えますが、世の中にはそれを上回る能力の持ち主が多数います。理三は医学部に行く人が入るところなので、それ意外の進路に関心を持つ層は他の科類や学部を目指します。首都圏在住でなく、地元の大学を目指すケースもあるでしょう。特に、理一のトップ層は理三のトップ層に引けを取らないかそれ以上に優秀です。
理三合格は難しいですが、単に1つの試験に合格しただけとも言えますし、毎年95人は誕生するのです。理三を絶対視、時に神格化する流れに私は反対したいと思います。
理三などの難関大学受験にお勧めの書籍
特に私がお勧めしたいものを2冊だけ紹介します。
英語
鉄緑会が出している定番の英単語帳です。記憶に定着しやすくするための工夫が散りばめられて、派生語も多数覚えられます。ライバルに差をつけられないためにもぜひマスターしたい一冊です。
数学
東大入試数学では整数問題は頻出であり、この1冊をしっかりやることが望ましいです。
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