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エヌビディア株でブル・コール・スプレッドを開始しました
カガミルです。
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最近好調のエヌビディア株が、2024年6月10日に10分割されました。
1株1000ドル以上だったのが100ドル台になったので、個人投資家にはかなり買いやすくなりました。
私はインデックス投資をメインでやっていて、個別株投資はほとんどやりません。
しかし以前からNVDAのボラティティの高さに注目しており、株式オプションでそれを生かした投資(後述)をしたいと考えていました。
1単位(100株)の金額が大きすぎるので見送っていましたが、今回分割されたことにより、ようやく組める状態になりました。
今週、ブル・コール・スプレッドを組んだので、解説します。
オプション取引はとっつきにくく、ハードルの高さを感じている方もいらっしゃるかもしれません。私の実際の取引がオプションの理解の一助となれば幸いです。
基本的なことを勉強したい方は、このページの最後にある「オプション投資の勉強にお勧めの書籍」を参考にしてください。
オプション用語の解説
オプション取引にはさまざまな戦略があり、いろいろな用語が登場して理解が追いつかないという方もいるでしょう。実際、私も初心者の頃はそうでした。
そこで、まずは用語を整理しておきます。
バーティカル・スプレッドとダイアゴナル・スプレッド
私が今回行ったブル・コール・スプレッドは、バーティカル・スプレッド (vertical spread)という戦略の1つです。
他の記事にある通り、私はダイアゴナル・スプレッド (diagonal spread) という戦略も行っています。
まずはバーティカル・スプレッドとダイアゴナル・スプレッドの2つの違いを説明します。
バーティカル・スプレッド
ある原資産のオプション(コールまたはプット)のうち、満期日が同じで権利行使価格が異なる2種類を用いる。そのうちの1種類を買い、もう1種類を売る。
ダイアゴナル・スプレッド
ある原資産のオプション(コールまたはプット)のうち、満期日も権利行使価格も異なる2種類を用いる。そのうちの1種類を買い、もう1種類を売る。
図で表してみましょう。○は用いるオプションを表します。
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時間軸に対し、
バーティカル・スプレッドで用いるオプションはvertical (垂直)
ダイアゴナル・スプレッドで用いるオプションはdiagonal (対角線上)
となっています。
このように、両者の名称の意味がわかれば、どのような戦略かを記憶するのは難しくないでしょう。
バーティカル・スプレッドの関連用語
バーティカル・スプレッドの中にも、その性質や構成要素の種類に応じたいろいろな呼ばれ方があります。
以下、要素ごとに解説します。
コール・スプレッドとプット・スプレッド
コール・スプレッド:同じ原資産のコールを用いたもの
プット・スプレッド:同じ原資産のプットを用いたもの
これは名前の通りで簡単です。
ブル・スプレッドとベア・スプレッド
ブル・スプレッド:原資産価格が上昇すると利益が得られるもの
ベア・スプレッド:原資産価格が下落すると利益が得られるもの
これも、「ブル」「ベア」という投資用語を知っていれば簡単です。
クレジット・スプレッドとデビット・スプレッド
クレジット・スプレッド:取引開始時にプレミアムを受け取れる
デビット・スプレッド:取引開始時にプレミアムを支払う
これは、初心者のうちはとっつきにくいかもしれません(私もそうでした)。Creditやdebitという英単語の意味がわかれば理解できます。
「受け取れる」「支払う」の意味は、実際の取引をするうちにわかるようになります。
今回私が建てたポジションの特徴は以下の通りです。
①コールオプションを用いる → コール・スプレッド
②原資産価格が上昇すると利益が得られる → ブル・スプレッド
③取引開始時にプレミアムを支払う → デビット・スプレッド
これらの特性から、呼び名は
ブル・コール・スプレッド(上の①②を採用)
デビット・コール・スプレッド(上の①③を採用)
のどちらも使うことができます。
今回は、ブル・コール・スプレッドとします。
このように同じオプション戦略に複数の呼び名があるので、基本用語を理解しておくことは重要です。そうしないとオプション戦略を勉強する効率が低下します。
NVDAのブル・コール・スプレッド
現在の状態
私がNVDA株で組んだブル・コール・スプレッドは、6月15日現在以下のようになっています。
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1は6月12日、2は6月13日に組みました。
このポジションにより、NVDAにレバレッジをかけることができます。
その後NVDA株が上昇したため、幸先よく含み益が出ています。
権利行使価格の選び方ですが、ロングコールとショートコールが株価から等距離になるように選んでいます。
スプレッド1を建てた時のNVDAの株価は、約126ドルでした。
(156 + 96)÷ 2 = 126なので、ロングコールとショートコールの中間点となっていることがわかります。
スプレッド2も同様で、こちらは株価がおよそ128ドルの時に建てました。
(173 + 83)÷ 2 = 128なので、同じ条件を満たしています。
最大利益と損失
ブル・コール・スプレッド1で説明します。
なお、これを建てた時のNVDAの株価は約126ドルでした。
使うのはOptions profit calculatorというサイトです。
このサイトで作成したブル・コール・スプレッド1の損益グラフは以下の通りです。
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1.最大利益
以下のように計算されます。
(ショートコールの権利行使価格) - (ロングコールの権利行使価格) - (新規建て時のロングコールのプレミアム) + (新規建て時のショートコールのプレミアム)
= 156 - 96 - 37.16 + 8.98
= 31.82ドル
1単位は100株なので、実際の最大利益はその100倍の3182ドルとなります。
(手数料は考慮しません。以下同じ。)
2.最大損失(=最初に支払うデビット)
新規に建てた時、ロングコールを37.16ドルで買い、ショートコールを8.98ドルで売ります。つまり、
(新規建て時のロングコールのプレミアム) - (新規建て時のショートコールのプレミアム)
=37.16 - 8.98
= 28.18ドル
この100倍の2818ドルを最初に払うことになります。
このように最初にdebit (= 借金) を支払うため、上述の通りデビット・スプレッドと呼ばれます。
最悪のケースでもこの金額を超えて損をすることはないため、最大損失は2818ドルとなります。
レバレッジをかけていますが、追証が発生することはありません。
このようにブル・コール・スプレッドは、利益も損失も限定された投資法です。
3.損益分岐点
以下のように計算されます。
(ロングコールの権利行使価格) + (新規建て時のロングコールのプレミアム) - (新規建て時のショートコールのプレミアム)
= 96 + 37.16 - 8.98
= 124.18ドル
※(ロングコールの権利行使価格) + (最大損失)を計算してもよい
フォローアップ
次に、NVDAの株価が動いた場合にどうフォローするかを説明します。
損益グラフを再度示します。
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1.株価が大きく上昇する場合
時期ごとのグラフをご覧ください。
NVDAの株価が上昇するにつれてグラフの傾きが緩やかになり、株価の上昇に対する利益率が低下します。
さらなる上昇を予測するなら、最大利益の半分が確保できた時点で利確し、新規にブル・コール・スプレッドを建てます。
この場合の最大利益は3182ドルなので、1591ドルを利確できる場合にそうします。
このように株価がどんどん上昇する場合は、利確→新規建てを繰り返します。
2.株価が下落する場合
NVDAの株価が下落しても、満期日が近づくまでは放置します。
それは、このブル・コール・スプレッドの最大損失が限定されているためです。
まずあり得ないことですが、NVDAの株価が0ドルになっても、上述の通り失うのは2818ドルですみます。
経済危機などで株価が下落しても、時間が経てばそのうち戻る可能性があります。
そのため(NVDAが倒産するような重大なイベントがない限り)損切りはせず、放置します。
3.株価があまり動かない場合
満期日が近づくのを待ちます。
このスプレッドを建てた時のNVDAの株価は約126ドルでした。
一方、上述した通り損益分岐点は124.18ドルであり、満期日の価格がそれ以上なら利益が得られます。
もし満期日の株価が126ドルなら、その時点での利益は
(126 - 124.18) × 100 = 182ドル
となります。
このようにこのスプレッドでは、株価が126ドルから動かなくても利益が得られるのです。レバレッジをかけているのにそうなるのは不思議に思えるかもしれません。
もちろん株やNVDU(NVDAの2倍レバレッジETF)ではそのようなことは起きません。
ただし、実際には満期日の前に決済します。
具体的には、満期日の約21日前(この場合は11月29日か12月2日の予定)になったら決済します。
これはガンマリスクを軽減するためですが、今回は詳しい説明は割愛します。
他の原資産ではどうか?
さて、NVDAでブル・コール・スプレッドを組んだ場合、レバレッジをかけているのに、株価が動かなくても利益が得られることがわかりました。
もしそんな投資法があるなら、他の原資産でもやってみたくなりますね。
では、QQQではどうなるでしょうか。
実際に、6月14日にサクソバンク証券の画面上で、今回のNVDAに近い条件のスプレッドを組もうとすると、損益分布図は以下のようになりました。
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損益分岐点は485.49ドルで、現在のQQQの価格477.57ドルよりも上です。
つまり、QQQの価格が動かなければ損をするのです。
SPYやSMHで組んでも同様の結果になります。
多くの原資産では高金利のため損失が生じ、「株価が動かなくても利益が得られる」という現象は生じません。
では、なぜNVDAではそのような現象が生じるのでしょうか。
これは、NVDAのボラティリティが非常に高いことと関係します。
普段個別株投資をしない私がNVDA株に着目してブル・コール・スプレッドを組んだのは、その特性のためです。
(もちろん、NVDA株の長期的な上昇が期待できる前提です。)
ブル・コール・スプレッドの状況は、今後も報告していく予定です。
オプション投資の勉強にお勧めの書籍
外国株式オプション取引に関する日本語の書籍やWebサイトは極めて少ないのが現状です。
KAPPA先生の以下の2冊は、オプション取引の基礎から代表的な戦略まで幅広く書かれているので、ぜひお勧めします。