見出し画像

LEAPSダイアゴナル・スプレッドを開始しました。

カガミルです。

サクソバンク証券で外国株式オプション取引をしています。

先日、外国株式オプションが米ドル口座でできるようになりました。

これまでは円口座しかなく、オプション売買のたびに1%の為替手数料がかかっていました。
例えば1ドル=140円の時に100ドルのオプションを購入する場合、為替手数料が100×100×140×0.01=14000円もかかりました(オプション1単位は100株相当です)。往復ではその倍です。

それが、今後はオプションの金額にかかわらず一律3ドル強で済むようです。

為替手数料が高いため現実的でないと判断していた戦略についても、再度検討できるようになりました。

さっそくドル口座で、LEAPSダイアゴナル・スプレッド (LEAPS diagnonal spread, LDS)を組んでみました。

原資産としてSMH (VanEck半導体ETF) を選びました。半導体のボラティリティが高く、SMHのプレミアムも高いためです。


LDSとは

LDSは、以下の2つのポジションを立てる戦略です。

  • LEAPSコールオプションの買い(ロングコール)

  • 残存期間がより短いコールオプションの売り(ショートコール)

LEAPS (Long Term Equity Anticipation Securities) とは、満期日までの残存日数が9ヶ月以上あるオプションのことです(1年以上としているサイトもあります)。

オプション取引をしている方の中には、Poor man's covered call (PMCC) をご存知の方が多いと思います。これは残存日数がより長いコールオプションの買いと、残存日数がより短いコールオプションの売りを組み合わせた戦略です。

LDSはPMCCと本質的に同じであり、ロングコールにLEAPSを使ったPMCCと考えてよいでしょう。

なおこのnoteにはPMCCの記事はありませんが、これとは逆に下落トレンドでの利益を狙うPoor man's covered put (PMCP) の解説記事や実践例がありますので、よかったらご覧ください。

私が組んだLDSのポジション

7月7日(金)にポジションを組みました。
同日のSMHの終値は149.05ドルで、7月8日の状況は以下の通りです。

ロングコールとして、満期日までの日数が2年近く先のものを選びました。

現在価格が購入時価格より下がっていますが、これはSMHが購入後に下落したためではなく、LEAPSの流動性が低くスプレッドが大きいためです。
LEAPSを使った戦略では、スプレッド分の損を上回る利益を出す必要があります。

ショートコールも満期日までの日数が1年近いものを選びました。
プレミアム減衰による利益を多く狙うため、時間価値が最大となるATMのものを選びました。通常デルタは0.5前後のはずですが、今の相場では0.6前後でした。

ここで、現時点でのロングコールの時間価値を計算します。

時間価値 = オプションプレミアム - 本質的価値
     = 67.54 - (149.05 - 90)
= 8.49 (ドル)

一方ショートコールはOTMのため、時間価値はプレミアムと同じ18.73ドルです。
ショートコールの方が時間価値がだいぶ大きいため、時間経過によるプレミアム減衰で利益が得やすいです。

時間経過による損益グラフは以下の通りです。
こちらのサイトを使っています。)

(注:これはボラティリティが変化しない場合のものです。LDSでは2つのオプションの満期日が異なるため、正確な損益を予測するのは困難です。)

初期投資額は以下のように計算されます。

(ロングコールとショートコールのプレミアムの差) × 100
= (69 - 19) × 100
= 5000 (ドル)

より、5000ドルです。

グラフを見ていただくとわかるように、LDSの損失が最大となるのはSMHの価格が0になった場合です。
その場合は初期投資額を丸々失うため、最大損失は5000ドルです。

このように、LDSでは当初から損失が限定されていることになります。

一方で最大利益も限定されます。

利益が最大となるのは、満期日にSMH価格がちょうど150ドル(ショートコールの権利行使価格)になった場合で、およそ1400ドルです。
SMHが大きく上がったとしても、利益がそれ以上になることはありません。

最大利回りは、

1400 ÷ 5000 =0.28

より、28%となります(手数料やスプレッドは考慮しない)。

なお点線は、5000ドルでSMH 100%のポートフォリオを組んだ場合の損益です。レバレッジが1倍なので、当然直線になります。LDSのグラフと比較してみましょう。

2024年6月にSMHがおおよそ188ドルより下であればLDSが勝ち、それ以上であればSMH 100%のポートフォリオが勝つことがわかります。
(繰り返しになりますが、ボラティリティが変化した場合は両者の損益の大小が変わる可能性があります。)

LDSのフォローアップ

今後のSMH価格の推移に応じた、LDSのフォローアップ方針を記載しておきます。

大きく上昇した場合

SMHが上昇するとオプションのデルタが上昇しますが、ショートコールの方がロングコールよりも上昇幅が大きいです。
SMHが大きく上昇すれば、ショートコールのデルタがロングコールに追いつき、逆転することになります。

両者のデルタがほぼ同じになった場合は、両方のポジションを清算して利確します。

横ばいの場合

これは一番ありがたいシナリオです。なぜならプレミアム減衰により得られる利益が最も大きいからです。
もちろん、SMH 100%のポートフォリオでは利益が出ません。

このように、時間経過によるプレミアムの減衰で利益を得るという投資は、オプション取引でしかできません。

ショートコールの満期日が近くなったら、両方のポジションを清算します。そして、新たなLDSを組むことを考えます。

下落した場合

SMHが下落すればオプションのデルタは下落しますが、ショートコールの方がロングコールよりも減少幅が大きいです。
そのためショートコールで利益が出てもロングコールでそれを上回る損失が出るので、トータルの損失は拡大します。

対応として、ショートコールのローリング (Rolling) を行います。

ローリングとは、ショートコールを買い戻し、それと同じ満期日の新しいコールを売り建てることです。

新しいコールはATM付近のものとし、さらに下落した場合の損失を緩和します。
その後上昇に転じたら、上記の「大きく上昇した場合」と同じく2つのコールのデルタがほぼ同じになった時にポジションを清算します。

SMHが90ドル(ロングコールの権利行使価格)まで下落したら、ロスカットします。


LDSの経過は今後も報告する方針です。

オプション投資の勉強にお勧めの書籍

外国株式オプション取引に関する日本語の書籍やWebサイトは極めて少ないのが現状です。

KAPPA先生の以下の2冊は、オプション取引の基礎から代表的な戦略まで幅広く書かれているので、ぜひお勧めします。


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?