親の命の最後を決める②
前回の大腿骨骨折から2週間も経たない頃、施設から電話が来た。お昼から様子がおかしいと言う。朝はゼリー状ものを口にしていたのに、お昼は全く口にしない。食堂には来たが、食べものを口にしないまま自部屋へ戻ったらしい。職員が交代で様子を見に行ったが布団に包まっているそうで、何を聞いても「大丈夫だから」しか言わない。そして、父が一番心を許している職員が外回りから戻り、見に行くと「痛い、痛い」と訴え、何処が痛いのかを聞くと肩が痛いと答えたそうだ。痛い方の肩を見るとかなり腫れていて、熱も持っていたらしい。その日は週末で、嘱託医も近くの病院も休み。当番医を調べ、何市か隣にある病院へ行ったと言っていた。レントゲンを撮ると骨折をしていると言う。本人に確認をすると、まともやトイレで転んで肩を強く打ったと・・・。
この時、少し悪い方に思いが過った。2週間も経たないうちに2度の骨折。
『そんな次々に?』
どんなに信用していても長年離れている。それに、職員は18年同じではない。大体、春と秋に系列施設内で移動がある。今はもう、私が知らない職員がほとんど。ある1人だってかれこれ10年くらい顔を見ていない。いつも電話で話をしている事務員さんや相談員、所長ですら顔を知らない。
『私が思っているよりも環境が変わっていたのかもしれない』
そう考えてしまった。
でも電話を切ったあと、飲みものを飲んで一息吐いて、よくよく考えてみたら「歩行器でやっとゆっくり歩いているわけだし、退院だって食べものを口にさせるを理由に予定よりも早くしたわけだから、きっとトイレでバランスが上手く取れなくて転んだんだろう」と答えが出せた。今回は入院はせず、ギブス固定なので、施設には様子を見ててもらうしかないなと思い直し、
「今年のお中元はちょっといいものを考えなきゃな」
なんて軽く考えていた。
この時点で、やはり食事は全く戻ってはいなくて、高カロリーのゼリーが主で、時々サンドイッチを数口かじるくらいだったと聞いていた。
~続く~