化学反応式と計算
はじめに
化学反応式の作り方の第一歩は、係数付けです。係数付けは数合わせです。やり方はとてもシンプルなので、練習を積めば必ず出来るようになります。
係数付けの考え方
まず、最も複雑なものの係数を1とおきます。最も複雑なものは、原子の種類が多いものを指します。例えば、CH4は原子2種類ですが、O2は1種類なので、CH4の方が複雑と判断します。もし、原子の種類の数が同じ場合は、原子の数が多いものを係数1とおきます。例えば、CH4とCO2はともに原子2種類ですが、CH4は原子5コなので、CH4の方が複雑と考えます。
次の係数を入れてみましょう。
〔 〕CH4 +〔 〕O2 → 〔 〕CO2+〔 〕H2O
まず、CH4が最も複雑なので、係数1と決まります。
〔1〕CH4 +〔 〕O2 → 〔 〕CO2+〔 〕H2O
次にCO2の係数が1、H2Oの係数が2と決まっていきます。最後にO2の係数が2で完成です。
〔1〕CH4 +〔2〕O2 → 〔1〕CO2+〔2〕H2O
途中で係数に分数がでるときの化学反応式です。
〔 〕C2H6 +〔 〕O2 → 〔 〕CO2+〔 〕H2O
まず、C2H6が最も複雑なので、係数1と決まります。〔1〕C2H6 +〔 〕O2 → 〔 〕CO2+〔 〕H2O
次にCO2の係数が2、H2Oの係数が3と決まっていきます。
〔1〕C2H6 +〔 〕O2 → 〔2〕CO2+〔3〕H2O
最後にO2の係数が7/2で、全体の数はそろいます。
〔1〕C2H6 +〔7/2〕O2 → 〔2〕CO2+〔3〕H2O
係数に分数がでた場合は、分数をなくすために分母をかけます。O2の係数が7/2より、全体に2をかけます。
〔2〕C2H6 +〔7〕O2 → 〔4〕CO2+〔6〕H2O
イオン反応式のつくり方
イオンを含む化学反応式をイオン反応式といいます。化学反応に関わっているイオンだけを書きます。
つくり方のポイントは2つです。①原子の種類と数を両辺でそろえる。②左辺の電荷の総和と右辺の電荷の総和を等しくする。
例 硝酸銀水溶液と塩化ナトリウム水溶液の反応
まず、化学反応式をつくってみます。
AgNO3 + NaCl → AgCl + NaNO3
硝酸銀AgNO3と塩化ナトリウムNaClは、水に溶けやすい塩であるため、水溶液中で電離しているため、Ag+とNO3ー、Na+とClーに分かれています。反応後のNaNO3も同様にNa+とNO3ーに分かれています。
Ag++NO3ー+Na++Clー→AgCl+Na++NO3ー
ここで、NO3ーとNa+に着目してください。
Ag++NO3ー+Na++Clー→AgCl+Na++NO3ー
この反応では、AgClが白色沈殿しています。しかし、NO3ーとNa+は反応前後で変化していません。これらは、化学反応に関わっているとはいえないのです。反応に関係ないので、NO3ーとNa+は消去します。すると、左辺で残るものは、Ag+と Clーとなり、イオン反応式は次のようになります。
Ag++Clー→AgCl
原子の種類と数は、左辺と右辺でそろっていることはすぐに分かります。次に電荷を見てみましょう。左辺が+1と-1で0です。右辺のAgClは右上に+も-もついていないため、0です。これで、電荷の総和が両辺で等しいことがわかりました。
例 硫酸銅(Ⅱ)CuSO4水溶液とアルミニウムの反応
化学反応式をつくってみます。
2Al+3CuSO4→Al2(SO4)3+3Cu
硫酸銅(Ⅱ)CuSO4と硫酸アルミニウムAl2(SO4)3は水溶液中で電離しているため、Cu2+とSO42ー、Al3+とSO42ーに分かれています。
2Al+3Cu2++3SO42ー→2Al3++3SO42ー+3Cu
ここで、SO42ーに着目してください。
2Al+3Cu2++3SO42ー→2Al3++3SO42ー+3Cu
この反応では、AlがAl3+へ、Cu2+が銅Cuに析出しています。しかし、SO42ーは反応前後で変化しておらず、化学反応に関わっているとはいえません。反応に関係ないので、SO42ーは消去します。よって、イオン反応式は次のようになります。原子の種類と数は、左辺と右辺でそろっていることが分かります。
2Al+3Cu2+→2Al3++3Cu
次に電荷を見てみましょう。左辺は、0と3×(+2)=+6です。右辺も、2×(+3)+0=+6です。電荷の総和が両辺で等しいことが確認できました。
化学反応式とmol計算 ①
反応式の係数比は、各物質のモル比に等しいです。係数比を見ればモル比が分かるので、係数に着目します。係数比=モル比がPointです。
問題 CH4 2molが反応すると、H2Oは何mol生成するか?CH4+2O2→CO2+2H2O
解答 2〔mol〕×2=4〔mol〕
解説 CH4 とH2Oの係数比は1:2なので、モル比も1:2になります。CH4 1molが反応すれば、H2Oは2mol生成します。
問題 H2 6.0gが反応すると、H2Oは何g生成するか?分子量H2=2.0 H2O=18
2H2+O2→2H2O
解答
H2Oが3.0mol生成したことが分かります。よって、求める質量は、3.0〔mol〕×18〔g/mol〕=54〔g〕
解説 計算のやり方は、次の3つのステップです。
ステップ① 文中の数値&単位を反応式の下に書く。
ステップ② molに直す。
ステップ③ 係数比より、他のmolを書く。
今回の計算にあてはめてみると、次のようになります。
ステップ① 6.0gをH2の下に書く。
ステップ② 6.0÷2.0=3.0〔mol〕
ステップ③ 化学反応式の係数は、2:1:2になっています。係数比=モル比より、モル比も2:1:2です。すなわち、H2 1molから、H2O 1molが生成します。今回は H2 3.0molと分かったので、H2O 3.0molが生成します。
化学反応式とmol計算 ②
気体1molの体積は、標準状態であれば気体の種類に関わらず22.4Lです。
2molならば44.8L、4molならば89.6Lと、モル比がそのまま体積比になっています。モル比=体積比が成り立っています。そこで、係数比=モル比と合わせると、係数比=体積比も成り立つことが分かります。
問題 N2 5.6L とH2を触媒を用いて反応させて、NH3を生成した。H2は何L反応したか(①)。NH3は何g生成したか(②)。分子量NH3=17
解答
5.6÷22.4=0.25〔mol〕
① H 2 0.25×3×22.4=16.8〔L〕
② NH3 0.25×2×17=8.5〔g〕
解説
気体1molは種類に関わらず、22.4Lです。N2 5.6L を22.4でわり、0.25molを出します。化学反応式の係数比は1:3:2より、モル比も1:3:2です。N2 1molとH2 3molが反応し、NH3 2molが生成します。今回は、N2 0.25molより、H2 0.75molが反応し、NH3 0.50molが生成することになります。
問題 O2 16.8Lを無声放電させると、O3は何L生成するか?
解答 16.8×2/3=11.2〔L〕
解説 3O2→2O3
化学反応式の係数比は3:2より、モル比も3:2です。そして、気体1molの体積は種類にかかわらず22.4Lより、係数比=モル比=体積比も成り立ちます。よって、体積比も3:2です。
化学反応式とmol計算 ③ 過不足がある場合
反応時に一方が余る、これを過不足があるといいます。少ない方を見極めることが、考えるポイントです。たとえば、CH4の燃焼の場合、係数比=モル比より、CH4が1molあれば、反応するO2は2molです。
ところが、CH4 1molとO2 3molの場合は、話が少し変わってきます。CH4 1molとO2 2molが反応し、O2 1molが余ってしまいます。このような状況が過不足ありです。反応時に一方が余ってしまうのです。
ちなみに、『O2 3molが反応する』は、ありえません。もし、O2 3molが反応するなら、係数比=モル比より、CH4 は1.5mol必要になりますが、そもそもCH4 は1molしかないからです。
少ない方を見極めることが、考えるポイントです。十分に反応が起こったとき、必ずどちらかは全て使われます。見極めに時間がかかっても、上に書いたような計算を少しすれば分かります。
問題 エチレンC2H4 2.8gに標準状態で3.36Lの酸素を混合し、この混合気体に点火すると、どちらかの気体の一部が未反応のまま残った。エチレンと酸素のどちらが残ったか。分子量C2H4=28
解答 エチレン
解説
C2H4とO2の物質量molをそれぞれ求めます。2.8÷28=0.10〔mol〕3.36÷22.4=0.15〔mol〕次に、係数比は1:3です。C2H4 1mol にO2 3molが反応できるという割合です。
ここで、C2H4 0.10mol が全て反応したとすると考えてみましょう。そうすると、係数比=モル比が1:3より、O2 0.30molが必要です。しかし、O2はもともと0.15molしかないため、足りません。よって、C2H4 0.10mol が全て反応したとする はありえないことが分かります。
したがって、O2 0.15mol が全て反応したとする は起こりえそうです。係数比=モル比より、O2:C2H4=3:1です。O2 0.15mol と反応するC2H4は 0.050molと求まります。
C2H4は、もともと0.10molありました。0.10ー0.050=0.050〔mol〕となり、エチレンC2H4が余ったことが分かります。
化学反応式とmol計算 ④過不足
反応時に一方が余る、これを過不足があるといいます。少ない方を見極めることが、考えるポイントでした。
問題 エチレンC2H4 2.8gに標準状態で3.36Lの酸素を混合し、この混合気体に点火すると、エチレンが未反応のまま残り、二酸化炭素と水が生じた。生じた水は何gか。分子量C2H4=28 H2O=18
解答
よって、求める水H2Oは、0.10×18=1.8〔g〕
解説
ステップ① 文中の数値&単位を反応式の下に書く。
ステップ② molに直す。
前・反応・後を書く。
反応前・反応量・反応後の略です。
ステップ③ 少ない方を見極めてから、係数比より、他のmolを書く。
問題 標準状態(0℃、1気圧)で H2 5.6LとO2 4.2Lの混合気体に点火すると、一方の気体の一部が未反応のまま残り、水H2Oが生じた。反応後の気体の体積は何Lか。
解答
反応後に残っている気体はH2のみです。よって、求める反応後の気体の体積は3.5Lです。
解説
ステップ① 文中の数値&単位を反応式の下に書く。
ステップ② 前・反応・後を書く。
ステップ③ 係数比=体積比を使う。