日本という社会や文化が滅亡しようとしている原因は大多数の日本人の当事者意識のなさである件

先日、筆者は知人らとある講演会に参加した。
その講演会はある業界が外資に完全に喰い物にされていて、その業界の構造的問題や解決策についての話であった。
外資による独占状態によって自国産業が破壊されようとしている状況をいかにして巻き返すかという話もあり、最新鋭の技術の話も交えた話であった。
筆者はその業界の人間ではないこともあり、話についていくのに必死であった一方で、様々な自国産業が滅ぼされようとしていることに対して自分が何ができるか、祖国の文化を守るために自分が何ができるかを改めて考えさせられ、講演者が提案する内容の凄さと自分の無力さを感じた。

そんな講演会を聞き終わった後、たまたま同講演会に参加した知人の知人の感想を聞くことが出来た。
その方の話によると、「自分は十分知っている話であり、物足りないものであった」ということであった。

聞くところによると、その方は講演会で話題になった業界の人間ではないそうだ。
筆者は大手証券会社のリサーチ部門に長く在籍したことがあり、全産業セクターを日々ウォッチしていたこともあり、その中でも講演会で話題になった業界はとても複雑で理解困難な分野であり、しかも講演会は最先端の技術を組み合わせた新しいものについての話であった。
にもかかわらず、その方は「物足りない」と言ったのだ。

真意は別であったのかもしれない。
だが、この方の精神構造は多くの日本人の精神構造にとても酷似しているように筆者には思えたのだ。

同講演会でも語られていたが、日本はどの産業も政府から援助や協力を全く受けていない。
経済産業省や財務省、金融庁などをはじめ、全ての行政はアメリカや中国などの望むままに産業を破壊する行動しかしない。
経済産業省のお世話になった企業は倒産させられることは業界では常識となりつつある。
一方、アメリカ、中国をはじめ、韓国でさえ、政府が主要産業を税制面などを含めて手厚く支援して自国の産業を強くし、自国の経済を強くする努力をしており、それをしていないのは日本だけなのだ。

日本以外の国の政府は過酷な競争社会で戦う子供を全力で裏から支援している形だが、日本政府は子供を崖から落ちたことも気付かず、完全に育児放棄している状態である。
日本がそのような状況になったのは、主にアメリカによって言われたことしかしない社会体制が浸透していき、中国によって賄賂や不正をした方が報われる腐敗社会が浸透した成れの果てなのである。

自分の頭で考え、あらゆる問題を自分の問題として考えるという当事者意識を持ち、不正や腐敗に「NO」を突きつけるような者が日本人の大多数であったならば、このような状況にはならなかったであろう。
確かにアメリカに対する土下座外交や中国に対する賄賂政治でのし上がった政治家によって政治は腐敗し、その流れで官僚も腐ったことは否めない。
だが、同じように一般人も腐敗していった慣れの果てが今の日本なのだ。

戦前生まれの武士道精神を持った者たちの後ろをついていき、高度経済成長期とバブルを謳歌し、その後の腐敗を放置したのが今の60代と70代だ。
彼らは既にリタイアしたものも多く、自分たちが腐敗に招いた社会に対する反省を持つ者は絶滅危惧種である。
日本経済が良かったうちに逃げ切るように退職したため、経済的に困ることもなく、逃げ切るように死ぬまで裕福に暮らす者も多いのだろう。

筆者は金融業界で働いているのだが、今の60代や70代の方々に「高度経済成長期やバブルの頃は楽しかったねぇ」なんて言うことを言われるが、冗談ではない。
金融業界はその頃に「今だけ金だけ自分だけ」に走った者たちが業界をめちゃくちゃにし、そのときのツケが今になって残っている。
筆者もいちいち言い返す気もないので、「そうですね、昔は良かったですね」と適当に返すが、心の中では「あんたらのせいで今、どれだけ大変やと思っとるんじゃあ!」と怒り心頭である。
それは金融業界だけではなく、どこの業界もとても厳しく、生き残りに必死である。

加害者意識や当事者意識があれば、先日の講演会の彼のように「物足りなかった」という言葉は間違っても出てこないだろうと筆者には思えるのだ。
殆どの日本人は「自分は絶対に正しい」「自分は何でも知っている」というプライドの塊と、「当事者意識ゼロ、責任感ゼロ」の「今だけ金だけ自分だけ」の腐った精神で出来ており、そんな人たちが大多数となって日本という国の衰退を招いたのだ。
正にそのような精神性から、彼に「物足りなかった」と言わしめたのだと筆者は感じざるを得なかったのだ。

そんな彼の「物足りなかった」という言葉を聞いて不愉快に思いつつも、改めて「日本のあるべき姿を取り戻すために多くの者と立ち上がり、日本を変えてゆかねば」と思った次第である。

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