#dmチャンネルを作ったら、組織の透明性が高まりました
はじめに
こんにちは!おがさわらです。
SlackでDMを利用することについては、色々と賛否の意見を聞いたことがあります。必要があって使っているのだ、という賛成の考えもあれば、オープンな会話を増やすべきだ、という反対の考えもあるでしょう。
ここでその結論を出そうというわけではないのですが、#dmチャンネルを作るというちょっとした工夫が思った以上によかったので、1つの事例としてご紹介します。
なお、この記事は、KDDIアジャイル開発センター(KAG) Advent Calendar 2024の5日目の記事になっています。
自己紹介
私は、普段はアジャイルコーチとしてスクラムチーム立ち上がりの支援などを行っています。今回の取り組みは私が主体的に関わったわけではなく、会社の中で起きたことを眺めつつ、自分も使っているだけという立場ですが、良い取り組みだなと思ったので、紹介したくなった次第です。
Slackの利用状況について話していました
弊社にはKAGレビューという毎週全社員が集まってわいわいする時間があるのですが、その中でSlackの利用状況についての話がありました。会社としてのSlack利用の方針は、できるだけprivateなチャンネルやDMは使わずにオープンなコミュニケーションを心がけましょう、となっている前提の上で「DMの利用率がちょっと高いのが気になりますね」という話題が出ました。
大勢で参加しているMTGなので、リアルタイムにはSlack上に意見が書き込まれるのですが、
オープンなところで話にくいものは実際にある
わざわざ新しくチャンネル作るのもどうなんだろう
というような意見が出ていました(難しい問題ですね)
まあ出来るだけ心がけましょう、ぐらいで終わりそうなところに、この書き込みがされました。
KAGレビューの後に、任意参加でOST(Open Space Technology)が行われるのですが、そこでこの話の続きの議論が行われ、その場で#dmチャンネルが爆誕しました。
私は、#dmチャンネルについては、最初はちょっと意味が分かっていなかったのですが、やりとりの様子を見ていたらその良さが分かってきました。
#dmチャンネルって何?
DMを個別ではなくオープンに行うためのチャンネルです。KAGのオリジナルではなく、KDDI DIGITAL GATEで行われていたものを取り入れたものになります。
要は、単なるオープンチャンネルなのですが、DMを送りたいな、と思ったときにDMを送るのではなく、#dmチャンネルでメッセージを送る、という使い方をします。会社によっては#randomで同じことが出来ている、というところもあるのかなと思います。
#dmチャンネルの良さ
DMをしようという動機は色々あるとは思いますが、例えば、以下のようなケースを想定してみます。
違う部署の人と飲みに行く予定の調整がしたいな
確定申告する予定なんだけど、◯◯さん知ってそうだから話聞きたいな
ちょっとした作業の依頼とか、作業やってもらったお礼とかをしたいな
この時、こうした会話を行うのに適したチャンネルがあればそこで行うのですが、ない場合、#randomに書き込むのもちょっと憚られてDMを使ってしまう、というケースが多くありました。ただ、別に見られてまずい会話というわけではなく、何となく大勢の目に晒すのもノイズになるかな、と遠慮してしまうことが起こっていました。#dmチャンネルを作ることで、こうした会話を堂々と行える場所ができました。
実は、最初は「そこまでしてDMを減らす必要があるのか」とか「どうせ自分に関係ない内容は読まないなら、あまり意味はないのでは」みたいな気持ちが多少はあったのですが、使ってみると色々と良さを感じました。
浸透的コミュニケーションが発生する
物理的に一緒に働いていれば、いわゆる浸透的コミュニケーション(はっきりと伝えられていなくても、何となく情報が耳に入ってくる、みたいな意味だと思います)が発生しやすいですが、リモートで働いていて、全然違う部署の人の話であると情報が入ってくることがほとんどないです。
#dmチャンネルでやりとりしてもらえると、そこまで真剣に読んでいなくても、「へ〜、そんなことをやっているんだ」と、何となく人の動きが見えてきます。また、それをきっかけに「人事の人たちが◯◯をやろうとしているのか、自分も何か協力できるかな」みたいな横断的な繋がりが生まれるきっかけにもなります。
思わぬ情報が得られる
オープンなメッセージなので、当事者ではない人からもコメントが入ります。それによって思った以上に情報が集まることがしばしばあります。
たとえばこんな感じです。
Aさん「Bさん、□□ってツール使ったことあります?」
Bさん「ありますよー、内容まとめた資料あるので送りますね」
Cさん「□□は、自分たちも前に使ってましたよ。Dさんが詳しいです」
Dさん「結構使っていたので、ご協力できそうなことがあれば何なりと」
最初はBさんに聞いただけだったのですが、CさんDさんにも話が広がり有益な情報が得られるというようなケースがたくさん発生しています。これは、個別にDMを送っていては発生しないことだなと思います。
読んでいて楽しい
実際に使ってみる前は、自分に関係ない話がたくさん流れてノイズになるのかなと想像していたのですが、共有系の話題は#generalや#randomに流れますし、雑談のような話題もほとんどなくて(別に雑談はあっても良いのですが)、自分には直接は関係ない話題でも「へ〜」と思えるちょうど良いぐらいの話題がよく流れてくるので、なんだかんだほとんどの会話を楽しく見てしまっています。
これは名前の妙があるのかな、と個人的には考えていまして、実際にはDMではないのですが、dmという名前なので、基本的には誰かにメンションしてメッセージを送ります。普段、全体に共有される内容だと、たとえ雑談のような内容であっても、最初にちゃんと読んで自分に関係あるか判断するプロセスが発生します。それがdmであれば、メンションがなければ自分には関係ないメッセージになるので、傍観者として気楽に読むことができます。この気楽さが会話の楽しさや居心地の良さに繋がっているような気がしています。
DMより気楽
完全に主観ですが、DMするよりも気楽にメッセージが送れます。ちょっとした相談とかを個別に送ってしまうと、相手も少し身構えてしまうことがあるかなと思いますが、dmであると、前述のように他の人が答えてくれることもあるので、メッセージを送るのに抵抗感が少し下がります。
また、たとえば、ブログの記事を読んで、「◯◯の記事とてもよかったです!」と言いたくなったとして、DMを送るとちょっと重たすぎる気もするし、#randomで大体的に共有して言うのも少し憚られるなあというときに、dmはすごくちょうど良いです。結局は多くの人の目に触れるという意味では#randomとあまり変わらないのですが、「個人的に感想を言いたくなって、直接相手に対してメッセージを送っている」というニュアンスを出せるのがちょうど良いのです。
やっていること、考えていることの弱い共有ができる
これは、これまでに述べた#dmチャンネルの良さを利用した少し打算的な内容になります。直接関係ない内容を読んでいる人が一定数いるだろうという想定の下、#dmに書くことで情報共有されることが期待できます。
たとえば、先日、社外の知人を社内の人に紹介することがありました。そのときに#dmで「◯◯さんという人を今度紹介させてください」というメッセージを送ると、そのような繋がりが生まれていることが他の人にも伝わります。そこから、自分にもその方を紹介して欲しいというリアクションがあるかもしれないですし、他の人が同じように誰かに誰かを紹介する動きをしてもらえるかもしれません。これも「私、◯◯さんという人を知っているのですが、紹介して欲しい人いますか?」と大々的に聞くのは少し違うなというときに、もしかしたら誰か反応するかも、ぐらいの薄い期待を持った共有ができるのがちょうど良いです。
#dmチャンネルのデメリット
#dmチャンネルのデメリットは現時点ではあまり感じてはいないですが、「何となく伝わる情報」と「はっきりと伝える情報」の区別が曖昧になっていくと危険な場合はあるかなという予感はしています。あくまでもdmとして個別のメッセージを送ることが主であり、便利であっても他の人が巻き込まれることは副次的なものであることは忘れてはいけないのかなと思っています。
おわりに
冷静に考えれば、#dmチャンネルは単なるオープンチャンネルなので、ここでやれることは他のチャンネルでも代替可能だと思います。一方で、dmという名前をつけたチャンネルを作るだけで、色々と良いことが生まれていることが大変おもしろいなと思いましたし、その雰囲気をとても気に入っています。
合う合わないもあるとは思いますが、これを読んで、もし同じことをやってみたという組織・チームがありましたら、共有してもらえると嬉しいです!
追記
この記事をDIGITAL GATEの方にも読んでいただいたところ、元ネタはこちらのポストであることを教えていただきました。発明に感謝です。