小澤正直「量子状態の収縮」の証明の補完

小澤正直先生の「量子状態の収縮」の証明:
https://repository.kulib.kyoto-u.ac.jp/dspace/bitstream/2433/172051/1/KJ00007905527.pdf
は、"観測者から見た"合成系の状態が
収縮する(1つだけになる)
ことの証明になりますが、観測者の方には
言及がないと思います。
ここでは、現代コペーンハーゲン解釈の
「観測者においてただ1つの状態が選択される」
ことを証明します。
つまりこの記事は、小澤先生の証明の補完のつもりです。

フォンノイマン鎖と「測定によるもつれ状態」の式

フォンノイマン鎖は、
測定器→観測者A→外の観測者B→さらに外の観測者C、、、
を考えるわけですが、「測定によるもつれ状態の式」は、
測定器や観測者のどれに注目する(どれから見た)
かに依存します。
電子スピンの↑・↓の測定を例にとり理想測定を考えます。
理想測定とは、
① 値に誤差がないか無視できる
② 測定後の測定器の状態は、測定対象の状態と一致する。
③ 矛盾する状態ベクトルが同時に存在する項はない
  つまり、状態の重ね合わせや混合ならよいが、
  項内に|↑>|↓>や|↓>|↑>を含む項の確率は0
この時、
1.観測者Aから見えるdとsの合成系の状態は、
|s>|d>のテンソル積=( a1|↑s>+a2|↓s> )( a3|↑d>+a4|↓d> )
において③を適用すると
a |↑d>|↑s> + b |↓d>|↓s> 
という重ね合わせ状態になります。
これを「測定によるもつれ状態」と呼びます。
(観測者A自身の状態は、式に含まれないことに注意)

2.外の観測者Bから見えるAまでの合成系の状態は、
上の状態と |A>=( |↑A>+|↓A> )のテンソル積に③を適用すると
a|↑A>|↑d>|↑s> + b|↓A>|↓d>|↓s>
であり、1と同様になります。

3.一般に、観測者A_nから見える状態は
その1つ前の観測者をA_n-1とし、それまでの合成系の状態と
|A_n-1>=( |↑A_n-1>+|↓A_n-1> )とのテンソル積に③を適用すると
a|↑A_n-1>,,,|↑A0>|↑d>|↑s> + b|↓A_n-1>,,,|↓A0>|↓d>|↓s>
という重ね合わせ状態(測定によるもつれ状態)になります。

そしてさらに、外の観測者C、D、、、を想定するのが
フォンノイマン鎖です。実際はAで状態が↑か↓かの1つになる
のに、どこまで行っても「状態が1つに」ならないことを
表しています。
それから、実際にA1以降が、あってもなくても、
sからA0までの状態には何の影響もありません。
(観測者は、測定器や他の観測者に影響を与えないとするから)

部分系の状態の式

A_nから見える、この状態の部分系は(=注目する以外を縮約する)
観測者A_n-1だけの状態は(A_n-1以外を縮約)
a^2|↑A_n-1><↑A_n-1 | + b^2|↓A_n-1><↓A_n-1 |
であり、それを除く系をまとめた
s→d→、、、|A_n-2>という部分系の状態は(A_n-1を縮約)
a^2|↑A_n-2>,,,|↑A0>|↑d>|↑s><↑s|<↑d|<↑A0|,,,<↑A_n-2|
  + b^2|↓A_n-2>,,,|↓A0>|↓d>|↓s><↓s|<↓d|<↓A0|,,,<↓A_n-2|
で、共に古典的混合状態です。

観測者A2がA0とA1両方を見ている場合

A0はスピンの↑・↓に従った合図を「どこへともなく出す」だけ、
A1以降の観測者は、前の観測者の合図を見るだけ
なので、前の観測者に何の影響も与えません。
であれば、A1以降をどう構成しようが、自由と考えました。
そこで、観測者A1だけでなくA0も見るA2に注目します。
上記の式より、観測者A2から見えるA1の状態は、
1つは、「sからA0までの全体系」であり、それは :
a|↑A0>|↑d>|↑s>+b|↓A0>|↓d>|↓s>
となります。
同時にこれは、A2から見える「A2にとっての部分系」
=「A1だけの系」と「sからA0までの合成系」で、
の「sからA0までの合成系」とも言え、それは :
a^2|↑A0>|↑d>|↑s><↑s|<↑d<↑A0|
  +b^2|↓A0>|↓d>|↓s><↓s|<↓d|<↓A0|
という混合状態でもあります。
この2つの式は、同じA0の状態のはずですから、
|↑A0>|↑d>|↑s> か |↓A0>|↓d>|↓s> かの
「どちらか1つの純粋状態」でないと成り立ちません。
ということは、A2やA1の段階ではすでに、
「どれか1つの状態が選択されている」ことになりますから
観測者A0で、どれか1つの状態が選択される
と言えます!
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フォン・ノイマンは、何故このことに気づかなかったの
でしょう?

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