【競馬】スルーセブンシーズ凱旋門賞制覇の可能性
今現在世界最強馬はエースインパクトだと思う。今年の3歳馬で無敗で仏ダービーを制覇した。前哨戦無しで凱旋門賞に直行するらしいが、仮に競馬に絶対があるのならば、あの馬が優勝するだろうと予想する。走法を見てもフランケルに似ており、運が良ければ無敗で引退してもおかしくない実力が伺える。
スルーセブンシーズはドリジャ産駒だが、ドリジャ産駒はまだ1頭もG1馬が出ていない。初勝利が凱旋門賞だとすれば奇特な運命だが、ステイゴールドの血は油断ならない。
ドリジャは血統構成で見ればオルフェと同じで、私としてはオルフェ産駒こそ凱旋門賞制覇の可能性が最も高いと踏んでいるが、その試金石となりそうである。
オルフェーヴルはソレミアより強かったが直線で差された。エースインパクトがフランケル並に強かろうがスルーセブンシーズに差される可能性は十分にある。その可能性について細かく解説していく。が、その前に凱旋門賞の鍵を書いていく。
・ロンシャン2400に相応しい馬体重
過去日本馬が何頭も挑戦した凱旋門賞だが、各馬の馬体重を調べると驚く結果が出る。馬体重480kgを境に平均順位がまったく違う。エルコンドルパサーもディープインパクトもナカヤマフェスタもオルフェーヴルも480kg未満である。逆に勝負にならなかった馬は総じて馬体重が重い。また、馬券に絡まなくとも、惜しいところまで行ったキズナもハープスターもクロノジェネシスも480kg未満である。フィエールマンがなんと丁度480kgだったが直行した凱旋門賞は12着だった。(ステイフーリッシュが472kgだったが、彼が好走しなかった理由は後々述べる)
私は断言するが、日本でそれなりの実績があり、その上で馬体重が480kg未満の馬は確実に『勝負になる』。
・凱旋門賞はスピードが必要
ロンシャンは確かにタフな馬場だが実際どれだけスタミナが必要になるだろえ。日本馬の具体的な敗因を実際我々はどれだけ正確に分析できているだろうか。
オルフェーヴルがソレミアに差された理由は間違いなく仕掛けたタイミングでしかない。スミヨンの合図に対してオルフェーヴルの反応が良すぎた。日本馬特有の圧倒的な瞬発力のために長い直線の最後でよれた。仮に欧州馬の場合はスミヨンの合図のタイミングは或いは完璧だったのかもしれない。
日本馬が凱旋門賞に出走する時、そこには必ず勝利に対する矛盾が生じる。
日本人騎手を乗せるならロンシャンについて無知だから仕掛けどころを間違える。
外国人騎手を乗せるなら日本馬について無知だから仕掛けどころを間違える。
凱旋門賞を勝つために最も必要なのがスピードである。ナカヤマフェスタがワークフォースを差せなかった理由はスピード不足にある。エルコンドルパサーが逃げてあそこまで粘ったのはスペシャルウィークやエアグルーヴに勝るスピードのお陰だ。
ソットサスは2020年の凱旋門賞覇者だが、父Siyouniは産駒の唯一の2400m勝ちがそのソットサス凱旋門賞のみである。ソットサスの血統からしても我々が想像する凱旋門賞のタフな長さを走り切れるとは思えないが、彼は2度挑んで2019年は3着、2020年は優勝。実はソットサスは仏ダービーをレコードで優勝している快速馬である。
日本競馬が自覚すべきなのは、実は日本競馬の内容は世界でも珍しいものである、ということだ。日本で頻繁に見られる逃げという戦法は基本的に世界では珍しいし、特筆して大逃げなどは滅多に見られない。世界的に見れば珍しい脚質とはディープインパクトではなくサイレンススズカなのだ。
サイレンススズカの毎日王冠で後続がついてきた時に「今日はそれほど離してはいませんね」と道中を実況が評していたが、あれは別にサイレンススズカが特別普段と違って引き付けた逃げをした訳では無い。パンサラッサのドバイターフも同じで、結局後続がついてきただけの話である。
凱旋門賞で日本馬が直線で簡単に垂れるのは日本競馬の中で育った彼らが未経験のレース展開によるものだからだ。
日本競馬ならば逃げ馬は勝手に走らせて後続は比較的落ち着いたペースで走る。しかし海外の場合は全員が逃げ、もしくは先行のペースで走り続ける。道中に日本競馬ほど落ち着く瞬間もなければ息を入れるタイミングもない。
海外競馬で求められるのは平均的なスピードの速さであって最終直線だとか3Fのスピードではない。
フライトラインやフランケルの強さは平均スピードの速さであって、フライトラインは自分の平均速度が他馬を圧倒している故の逃げ戦法だとレース内容を見ればわかる。日本でもそういう馬は存在してサイレンススズカを筆頭にエイシンヒカリも同じタイプだ。そしてエイシンヒカリはイスパーン賞を10馬身で勝利している。
さてここまでの話から導ける答えは1つ。
『凱旋門賞はステイヤー向きでは無い』
タフなレースだから体力のあるステイヤーが挑戦した方がいいと勘違いするが、スピードのないステイヤーは終始後方を走る他ない。何故なら前に行く脚を元々持っていないからである。
フィエールマンやステイフーリッシュの敗因がこれで説明できる。彼らはステイヤーとして優秀だが凱旋門賞に必要なスピードに関してはまったく所有しておらず、それ故に適性馬体重であったにも関わらず大敗したのだ。
そもそも欧州馬がそれだけスタミナがあるのなら日本の長距離は欧州血統が支配していてもおかしくないでは無いか。我々は日本馬がロンシャンの直線で沈む姿を見て、「スタミナが切れたんだ」と誤認し続け、まったく見当違いな反省を繰り返していただけである。
ロンシャンは確かにタフなレースだが仕掛けどころさえ間違えなければ平均的なスタミナで走破可能なレースだと断言出来る。
・スルーセブンシーズは凱旋門賞を勝てるのか?
可能性は十分にある。そして1つ断言できるのが、余程異常な馬場や展開にならない限り、レースにならない可能性は低いということだ。昨年の4頭のチャレンジャーは日本での実績は素晴らしかったが冷静にロンシャン適性を診断すれば、正直タイトルホルダー以外は厳しかった。タイトルホルダーは絶望的な逃げという脚質だったし本質はステイヤーで、有馬記念の結果から見てもタフさは無い。それでも4頭の中では間違いなく競馬に参加出来ていたし、仮にタイトルホルダーが逃げなければもっと順位は高かったと私は予想する(以前書いた私の凱旋門賞の記事を読んでもらえばタイトルホルダーの敗因は判然だ)。
スルーセブンシーズの馬体重は450kg程度で軽い。気になるのは5歳牝馬であることだ。斤量の58kgは今まで彼女が背負ったことの無い重みである。また前哨戦を挟まない挑戦も気になる。私は日本馬の凱旋門賞前哨戦として贅沢に英国際Sや愛チャンピオンSをオススメしたい。
宝塚記念てイクイノックスの2着という立派な成績で挑む訳だが、正直気になるのは宝塚記念の上位が比較的接戦だったという事実だ。接戦の場合はレース展開が馬の実力を完全には引き出せず騎手の手腕による部分が大きい内容が多い。リスグラシューの宝塚記念などを考えると今年の宝塚記念は出走馬ではなく、レースそのもののレベルが低かったと思わざるを得ない。
そんな宝塚記念の2着は果たしてそこまで重要視されうるべきか。先行勢壊滅という内容の中で、池添騎手の選んだ作戦・位置取り等のみが評価されるだけのレースなのではないか。つまりは仮にイクイノックスが出走しておらずスルーセブンシーズが優勝したとして、それで素直にスルーセブンシーズがG1級の馬であるという評価に落ち着き得るのか、ということだ。それにスルーセブンシーズが他のG1……天皇賞・秋やジャパンカップに出走して本命になるだろうか。
ドリジャ産駒の成績も考慮して、あくまでスルーセブンシーズはまだG3馬でしかないと私は捉える。世間がそう捉えないと必要以上に大きい実力を評価してしまうと逆に凱旋門賞に於ける作戦というものが空回りしかねない。
これは最近の日本競馬に共通したものだと思う。天皇賞・春でタイトルホルダーが競走中止したけれと、私はあれは馬の能力を過大評価した騎手の問題だと思うし、有馬記念でタイトルホルダーが沈む理由もそれだと感じる。どれだけの名馬にも限界はあるし、フランケルでさえレースの最初は馬群の中で大人しくしているのだ。
エイシンヒカリがイスパーン賞を勝った理由は番手に控えたからだ。POWSを大敗した理由は先頭に立ったからである。
ハープスターが凱旋門賞を6着で終わった理由は川田騎手及び陣営がハープスターを過大評価したからに他ならないと私は感じる。もっと臆病に、慎重にレースを運べば着順は上だったと思わずにはいられない。ディープインパクトの敗因(薬物問題は置いておいて)も馬の過大評価としか思えない。もっと慎重にレースを行えば1位入線は可能だった。ディープの有馬記念もそうだ。ディープの有馬記念はゴールデンシックスティが一時期負け込んでいたのと同じで、馬の能力を過大評価して騎手が普通の競馬を放棄したことで起こった敗北である。ゴールデンシックスティは反省して早めに仕掛けるようにしたら再び勝ち始めた。
スルーセブンシーズは勝つ可能性がある。しかし勝ったとしたらそれは馬の実力+運の要素が多分に含まれていると断言出来る。しかしどれだけ運に恵まれても勝つことに意義がある。勝たなければ何の意味もないのだ。
私がここで色々と運やらについて触れたのは、スルーセブンシーズの可能性をてよく信じているからである。私はもうスルーセブンシーズが勝利した後に発生する一部のネガティブな声に対する反論を行っていたのだ。
想定される騎手はルメールだという。
総括として、今年のスルーセブンシーズの可能性を列記する。
よっぽど悪条件でなければ、
【5着以上】
十分有り得る。
ライバルは現時点でエースインパクト、ウエストオーバー、シムカミル、フクムのみ。
ステイゴールドの子供達で凱旋門賞に挑戦したのはナカヤマフェスタ、オルフェーヴル、ゴールドシップ、ステイフーリッシュ。ゴルシとステフはステイヤーなので端から向いてない。あとの2頭は2頭とも2着に入っている。ナカヤマフェスタの5歳時の成績は気性の荒さのために十分な調教が果たせずのものなので特例である。
ドリームジャーニーの全盛期は5歳時で、スルーセブンシーズも今年5歳である。
5歳牝馬が昨年のアルピニスタで初めて凱旋門賞を制覇した訳だが、そもそも海外は基本的に4歳まで走らせてすぐ引退させるのが基本である。そこまで気にする情報でもない。
スルーセブンシーズは条件だけならば今の日本でも恐ろしいほど凱旋門賞適性がある。心配なのは実績のみであり、3歳時の成績を「騎手のせいだ」と酷い責任転嫁が許されるならば、間違いなく凱旋門賞を好走するだろう。
今から10月が楽しみだ。