事業部門からのヒアリングについて

まず根本的に私のようなぺーぺーには他人様に教えられるようなことは何もありません……。芦原一郎先生の『法務の技法』とか、良書がたくさんあるので、そちらをご参考にしていただければ……。そのうえで、私がふだんやっているヒアリングについて述べたいと思います(※※※これが良いヒアリングであるとかは全然ないので同じ若手による試行錯誤のご紹介と思ってください※※※)。

就職以来上司のヒアリングを盗み聞きし続けた結果、ヒアリングの趣旨って3つあるんだろうなあと思ってるんですよね。
①社内の思惑を聞き出す(自社のやりたいことをなんらかのかたちで実現させるのが法務担当者の仕事なので、やりたいことを聞き出す必要があるのは当然だが、このとききちんと事業部門の本音を聞き出しておかないと、後で決裁ルートのどこかでNGが出て社内調整に時間が掛かってしまう。事業担当者は愛想の良い人が多いので無意識に法務担当者に寄り添って見せてしまうことがある)
②相手方の思惑を聞き出す(相手方がそのビジネスで得たい利益についてきちんとヒアリングしておかないと、相手方が到底受け容れられない内容のドラフトを出してしまい交渉に時間が掛かる)
③その取引に関連して生じ得るトラブルを具体的に想像するための基盤となる知識を得る(トラブルを具体的に想像できないと、そのトラブルの発生を未然に防ぐための対応も考えられない)。
の3つです。

では、①ないし③の趣旨に鑑みていったいどのようなヒアリングをすることになるかというと、結局、問題となっている取引についてとにかく根掘り葉掘り訊く、ということに尽きるんだろうなあと思っています。
事業担当者に突然「秘密保持期間を何年にしたいですか?」とか訊いても「普通はどのくらいですか……?」てなるので、結局、事業担当者が普段使っている言語で、事業担当者がプロフェッショナルである領域の話をしてもらうのが、我々が知りたいことを知るために一番楽な方法なんじゃないかと感じています。

そうしてひととおり話を聞いて、その取引が何のために行われ、自社がどのようにその取引から利益を得ることを企図しているのか、ということを理解できると、いくつか気になる点が出てくるので、突っ込んで質問していくことになります。
そこでは、結構大変な作業なのですが、「なぜその点が気になったか」をきちんと説明するように心掛けています。気になる点を端的に訊くほうが私も事業担当者も楽だとは思うのですが、気になった理由を説明すると、「あ、そういう視点か。それならむしろ……」と若手リーガルには想像もできなかったような当該取引特有のリスク因子に事業担当者の方で気付いてもらえたりして助かります。社内セミナーとか開催しても皆さんスヤスヤですが、自分の案件の話となると真剣に聞いてくださるので、個別セミナーの機会にもなっているかもしれません。

こんな感じで、まずは取引について紹介してもらって、次に自社のやりたいことができるような、かつ無理のない契約書案の骨子をいっしょに組み立てていって、その骨子を眺めつつどのようなトラブルが生じ得るか、リーガルはリーガルの目で、事業担当者はその事業のプロの目で、いっしょに想像していく……というのが理想的なヒアリングではありますね(実践できているとは言っていない)。

あとはこれこそTips的なアレではあるのですが、ちょっとした聞き漏らしがあったときなんかにTeamsとかで気軽にコンタクトをとるようにしています。「お世話になります」とかも抜いて意識的にカジュアルな口調でメッセージを書くようにしていると、事業担当者の方も気軽にコンタクトをとってくださるようになり、メールで送付した事業部門の正式見解に事業部門内部の思惑なんかについて非公式の補足コメントをいただけたりしてヒアリングの助けになっています。

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