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人に対して優しくあろうとはもうあまり思えないけど、人のために強くあろうとは思うのだ


 言うまでもなく、夏。君を追い風にして、どんどん進んでいく時間に、流れていく景色に、私はどう向き合えば、一番正しく在れるのだろうか。そんなことばかり考えている。大事だからこそ。

 今日一日中、自分の身体を掻きむしったり撫でたり突っついたりしても、あまり感覚がない。自分の身体であるのに、なぜか少し遠いところにある気がして、感覚が違っていて、本当に自分の身体じゃないみたいだ。起きているのに寝ているような感じ、夢の中で味わう絶妙な痛みのような、料理でいうところの味の真ん中がない、みたいな感じ。頭に近ければ近いほど触っている感覚が宙に浮いていく。足よりも鼻や目の感覚の方がない、擦ったりつまんだり叩いたり引っ掻いたり、痛覚はしっかり感じるけど、何か一枚薄いベールのようなものに覆われている感覚、真ん中に届かない。輪郭がぼやけているわけではない。きっと感覚が鈍ってしまった、そもそも知覚をする側(私)がバグってしまった、ような気もする。バグを起こし続けた先の身体、もしかして今日はまだ飲酒をしていないからとか、そういうのもあるのか?と考える。たとえこれら全てが幻で、私の自認が歪んでいるために生み出されたものだとしても、私はそれでもいいと思ってしまうのだ。この感覚は今しか味わえない特別なもの、世界と身体の境界がバグっている今の私にしかわからないのだ。分離の最中に、どこかで間違えて境界が溶け合ったのかもしれないな、とか考えると今のこの感じも悪くはない。きっと今日、たくさん寝て、明日、起きる頃にはきっと身体の感覚は元に戻っているのだろう。そうだと信じたい。だって一生これが続くのは嫌だし。ぼやけたままの痛みなんか、いらない。それだったら世界、私のことを思いっきり殴って。

 あまり光の入らない眼は、入りすぎる光を嫌っていて、白く濁った眼、ハイの調節が叶わないみたいだ。落とした照明に目が慣れる時、うつ伏せになった本がパタンと音を立てて閉じる。いつの間にか世界との断絶を繰り返していたみたいだ。良好な電波ではない。途切れるWi-Fi、抜けかけの記憶。唐突になる右耳からのモスキート音。夢の中でも話しかけてくる労働、早くこの分も残業代に入れて欲しい。唐突に浮かぶきゅうりとハムエッグ、休日の朝ごはんは平和の象徴、もうどこからがストレスでどこからが生活なのか何もわからないくらい、無。私はあまりにも境界線が緩すぎる、同化を繰り返すのであれば、さっさと諦めて早く寝よう。

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