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私、勝手に自由になっていたつもりだった。

 このままどうにかとぼとぼ歩いていたら、ちっせーくだんねー車とかに轢かれて死なないかな。等身大よりも大きい影が私のことを見ている。人差し指だけ取れていくネイルが、私の生活を物語る。フルサイズのMVよりも、みじけー生活。血だらけになった傷に無理やり蓋をして、キズパワーパッド並の治癒力で全てを塞いでいく。防衛本能。勘付いている。当たり前のように。まこと、まこと、まことの心。なんかもう全部嫌だ。いやだ、いやだ、いやだ。もう何にもなくていいから静かに殺してくれ。痛みこそが正義だ。痛みこそが世界だ。轟音だけだ。私のことをかき消してくれ。もう何の話だよ。さっさと殺してくれ。ボコボコに殴り倒して気絶させてくれ。明日のことも何にも考えさせないでくれ。

 生きている確証もないのに、とにかく毎日毎日先のことを考えさせられていて、ミルフィーユみたいに重なっていく不安と焦燥と希死念慮がわたしの背後に、見えなくなるまで募ってしまっている。もう本当に嫌なんだ。解放されたい。未来の話ばかりされても、困る。私がどうなろうが関係ないだろう。それなのに勝手に介入してこようとするな。良かれと思って雪崩のように話をするな。たかが血縁だよ。アンタの過去を教訓にしてほしい?何でそんな話になってんの。囚われて逃げ出せなかったのは自分の責任だ。でも今、私は恥ずかしながらそれと似たような状況になっているね、笑える。縛られていた人が、無意識に同じように縛るのは人間の性?繰り返してしまうんだね。私、18歳の時になんとか抜け出したのにな。つもりだったのかな。なんで今、こうなっているんだ。おかしいことに気付けなかった私も十分おかしいか。

 もうなんにも知らない外野にああだこうだ言われることに疲れてしまった。私、勝手に自由になっていたつもりだった。そんなことなかった。ガラスの天井が待ち構えていて、私の行方を塞ぐ。あーあ、こんな文章を書きたいわけじゃないんだ。もっと平和で平穏で平坦でそれでいて幸せでゆったりと流れる時間と薄いカーテンから入り込む、植物の影になった日光と、ハムエッグを食べる君と、スピーカーから流れる音楽と、少しだけのいい匂いと、もうそれだけでいいのに。いいのに、いいのに!!!私は一体何に対して涙を流しているのだろう、何もわからなくなってきた。ただひどく悲しいんだ。いや本当にこれは悲しいのかな、全部ホルモンバランスのせいにしてもいい?

 あーあ、私じゃなかったよね、そうだよね。ごめんね。私じゃなかったんだよね、きっとね、そうだよね、無理やり私が引き止めてごめんね。さっさと殺していいからね。次に行っていいからね、私のことなんて放っておいていいからね。私じゃないもんね、しょうがないよ、全部私が悪い。悪いよ。私が全部ダメなせいだ。ごめんね。私でごめん。

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