2024年10月28日(月)

男が住んでいる地域にある、自由な校風がウリらしい一応は進学校に通っている中高生が、公共道路を占有することの自由までお前たちは担保されていると思い違いをしているのか? と訝しむほど広がって歩き、しかもそれが始業間近の時間帯では遅刻を恐れている群れが束になって走ってくるので非常に危険極まりなく、しかも今日は雨が降っていたのが止んで、しかし多くの人は傘を持っていて男もその例外ではなく、畳んで大人しく身体の側面に沿わせて持って歩いていたのを、走っていたうちの一人の回転する両脚の隙間に持っていかれて、グキッと折れてしまいました。男は堪忍袋の緒が切れた、というクリシェを用いてしまえるほどにカチンときた。個ではなく群に怒りが向いた。思わずその場で呼び止めてふざけんなよと言ってしまい、なおかつ学校に電話をかけた。電話に出たのは特に権力などを持たない、学校に正式に属しているわけでもなさそうな、派遣の老人警備員だった。それでもお構いなしにまくし立てた。聞くに堪えない、電話越しのそれも非通知でかけているがゆえの強気の罵声と、しかしそれを浴びせているだけではみっともないので冷静さを装うみたいに捻り出された改善案の提示とを、滔々と放った。声は震えていたが、怒りで震えているというより、怒り慣れていないことによる震えというほうが正しかった。男はこの、恐らくは自分が圧倒的に正しい被害者の立場を、普段の生活では処世術としての柔和な性格・キャラクター・立場などの観点から出力しかねている負のエネルギーを投げつける先として、もちろんその苛立ちは心底からのものだけれどもそれだからこそ、ある意味重宝していると感じた。確かにそれなりに爽快で、それが非常にみっともなかった。何よりみっともなかったのは、こんなのは全部男の妄想で、ただ泣き寝入りするよりほかの手段を取れなかったことだった。折れた傘は家計で購入したもので、それを自腹で買い直すのかしれっと家計に潜り込ませるのかという思案だけがあとに残る出来事だった。
怒りや憤りがどこか一点に集約されているときにその対象以外にはむしろ優しくなれるタイプのもの人間である男は今日は、部下から打ち上げられた悩みを親身になって傾聴できたし、帰りに家族におやつも買った。

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