4月21日

漫画を読んでいた。
ぼくにはしたに兄弟がいるのだけれど、彼はスポーツマンで、そしてぼくが今ハマっているのは、彼がしているのとは違うスポーツの漫画だ。
ぼくが幼いから、ああこう書くと傲慢か、でも事実の一つだからな。
ぼくが幼いから、彼の精神は、彼の生きた時間に見合わず幼いように感じている。
ぼくには上にも兄弟がいて、あの人は出来の良いひとだし、ぼくも歳に似合わず大人びていると言われてきたから、もしかしたらぼくら兄弟のなかだけでそう見えるのかもしれないけれど。

ぼくは好きな人格の持ち主にはとことん懐くタイプの人間だと自覚している。
ぼくにないものを持っている人はかっこいい。尊敬する。
おおらかな発言と表情、目標へのストイックさ、自制心、周りを見る余裕、周りを受け入れる余裕、そのほか。そんなものがある人間はどタイプだ。
怠惰な人間が嫌いだ。狡猾な人も、目先の欲のためにそうなのは、嫌いだ。
なにより、人に優しくない人間が嫌いだ。
きっとあのひとはこう想うだろうから、自分はこう動いたほうがいいだろうって、それができない人間は嫌いだ。
ぼくはわがままだから、人に配慮してもらえないとイライラするのだ。

下の兄弟とぼくは相性が悪い。
まだ学校に通っていた頃でさえ、そばに近づかれると蹴り飛ばしたくなるほど、嫌いだった。
あのころは、今と違って、なんで嫌いなのかっていう、これと言った理由がなかった。
存在が不快だった。
それでも寝顔はかわいかった。都合よく動いてくれたときは愛しかった。
ぼくがクズなことは自覚している。
きっと下の兄弟が、ぼくが嫌う性格の持ち主になってしまったのは、ぼくのせいなのだろうとすら思えている。ああ、思えているなんて、罪滅ぼしな。

漫画を読んでいた。
少し前から、下の兄弟とぼくは同じ漫画にハマっている。
スポーツ漫画だ。
難しすぎなくて、熱くて、爽快で、ゴツい、スポーツ漫画だ。
ぼくはこの漫画が好きだった。
どうじに、彼にこの漫画を読んで欲しいと思った。この漫画を読むことで、かれが登場人物たちに感化されてくれたら、と願った。かれらに、ぼくの代わりに、彼を変えて欲しかった。

この漫画はおもしろいから、すすめれば、彼もハマってくれて、ぼくはその漫画を全巻大人買いした。自分が読みたかったのもあるし、彼にも読んで欲しかった。
そうして買って、彼に貸して、ああ、ダメだなと思った。
弟は決してモノの扱いが繊細な人間じゃなくて。
漫画を貸せば少し曲がって返ってきたし、読んだ後は、乱雑に置かれていた。
ぼくはたしかに弟にこの”物語”を読んで欲しかったけれど、それはぼくにとってこの”物語”が大切なモノだったからだ。”物語”が、かれらが載った本は、ぼくの宝物だった。
ぼくは自分の宝物が乱暴に扱われることに耐え切れなかった。本が、ぼくのものじゃなければ、また違ったと想う。ぼくは所有物に対する気持ちや、縄張り意識が強い部類の人間だった。
丁寧に扱って欲しいと、怒りを込めて伝えてしまった。
弟がこの”物語”を知って感じたものに、ぼくはきっと、こういう風に干渉してはいけなかった。彼の”物語”の吸収を、こういう感情を見せることで、邪魔してはいけなかったと思う。

ぼくが彼に怒りをぶつけるのは、ぼくの未熟ゆえに日常茶飯事ではあるけれど、きっと、この”物語”の扱い方に関しては、ぼくよりも彼の意志を尊重するべきだったのではないかと思う。考えすぎか。でも人間は、そういう些細が大きく影響してしまうことを知っているから。

どうにもならない。ぼくの未熟と、相性の悪さだ。いいや、ぼくが悪い。

笑えてくる。ただの考えすぎなんだと思う。
まわりくどかったけれど、これは要するにこう言うことだ。
ぼくのせいで、この”物語”に悪い印象を持って欲しくない。
こういうことだ。

ああねむたいな。眠くないけれど。布団に入ろう。

ハマっている漫画。登場人物や、表現方法や、センスや、ともかく、今とても惚れ込んでいる。ぼくもこういうふうに誰かを走り出したいような気持ちにできるモノが創れたら、どれほど。ああやめよう。ねむろう。憧れるなら、その憧れを大切にしていよう。ぼくはぼくを劇的に変えられないけれど、憧れはぼくの核を変えてくれるモノだと思う。ねよう。核が変われば、いきれるだろう。

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