タチカワクルセイド バトルレポート #02
惑星タチカワ。
この地を巡って様々な思惑が交錯する。
支配を望むもの。
勝利の栄誉を望むもの。
宿敵を望むもの。
戦を望むもの。
そして、実験台を探すもの……。
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「マスター、なぜ手術の途中で手術室を出るのです。完成は間近ではないのですか?」
輸送車『ケイオスライノ』の中で『サージェンアコライト』は尋ねた。実に1週間、正確には7日と18時間23分に及ぶ”手術”が終わりを見せようとしたさ中、突然戦支度を命じられたのだ。この高ぶった気持ちをどう落ち着けたらいい。彼は努めて冷静に、しかしどこか責めるように師を見つめた。
そんな彼に一瞥もくれず、端末を操作している彼の師、『ファビウス・ヴァイル』は答えた。
「技術局から必要な物資を頂戴する。」
「帝国技術局ですか。」
『帝国』の言葉を聞き、彼の”作品”が大きく吠えた。車内に雄たけびが響き渡る。
「わざわざマスター自ら出向かなくても、クランケに命じれば良いのでは無いのですか?」
サージェンアコライトは納得がいかない。早くこんな汚い場所から抜け出して、あの悦楽の手術室に帰りたい。
弟子の心情を知ってか知らんか、今だ端末から目を離さずにヴァイルは答えた。
「技術局の作品を侮るなよ?あれはよくできている。お前もよく観察すると良い。」
そして弟子の方を向き、そっとほくそ笑んだ。
「次の作品は素晴らしいものになるぞ。」
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陣営】ケイオススペースマリーン VS アデプトゥス・メカニクス
【規模】25PL戦
【ミッション】補給物資投下(ラウンド毎に少なくなっていく目標を巡り争う)
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ライノが停車すると、偵察を行っていた『ケイオススペースマリーン』の小隊が近づいてきた。
「正面ニ寺院。ソノ付近ノ森ニ、敵ガ潜ンデイマス。」
「指揮官2名、歩兵1小隊、歩行ロボ2機。」
「敵右翼ニ歩兵。残リハ左翼。」
報告を受け、ファビウスは頷く。
「敵の補給物資が降下中だ。奪い取れ。」
静寂を裂く雄たけびが、開戦を告げた。
開幕、廃墟を飛び出し、敵に向かう歩兵小隊。目指すは木々の陰からこちらを狙う『スキタリ・ヴァンガード』の一隊。
「偽リノ皇帝ニ死ヲ!」
しかし、彼らの射撃は敵に届かず、両者の間の土に埋もれるだけだった。
ライノは前方の寺院に荒々しく横づけされた。
「やれやれ、もう少し丁寧に運転できんものかね。」
「後程調整しておきます。」
「いや、良い。新しいのを見つける。」
その横では、ヴァンガードの射撃が歩兵小隊に降り注ぐ、マリーンのパワーアーマーをも貫く射撃に、約半数が倒れる。
「マスター、味方小隊に被害が出ています。」
「参ったな。マリーンは調達も製造も手間がかかるのだが。」
前進し寺院を占拠したケイオスの軍勢に対し、メカニカスは『カステラン・ロボ』を前衛に進撃。輸送機の投下予測ポイントを割り出し、確保を盤石なものとした。
ライノから後者したのはファビウスとサージェンアコライト、そして彼の”作品”である『ポゼッスド』。今にも、憎き帝国の兵に襲い掛からんとしたい衝動を抑えている。
「最後の調整を行う。手伝え。」
「はい。」
寺院の廃墟にて、即席の改造手術が行われる。ファビウス・ヴァイルにとって場所は問題ではない。自分がいて、被験者がいるところは、どこでも手術室になるのだ。
「おい、そこの、時間を稼げ。」
ファビウスの命を受け、ケイオスライノが急発進しカステラン・ロボ目掛け一直線に進む。彼ら”作品”にとっては”創造主”の役にたてるなら命などいとわない。
カステラン・ロボの射撃を搔い潜り、ライノの命をかけた突撃が行われた。全ては”創造主”の為に。
時を同じくして、突如、時空が歪み、ファビウスから敵の司令官暗殺を命じられていた『オブリタレイター』が現れた。
フラッシュメタルガンが火を噴き、『テックプリースト・ドミヌス』と『テックプリースト・エンジニア』に襲い掛かる。
しかし、技術局の頑丈かつ強固な装甲は弾丸を弾いた。
左翼では、ヴァンガードの銃撃をかいくぐった歩兵小隊がチェーンソードを抜いて襲い掛かる。
「偽リノ皇帝ニ死ヲ!」
ファビウスに注入された興奮剤と増強剤の効果を受け、強化人間をも遥かに凌駕する熾烈な攻撃が繰り出される。
「偽リノ皇帝ニ死ヲ!」「偽リノ皇帝ニ死ヲ!!!」「偽リノ皇帝ニ死ヲ!!!!!」
怒号が収まると、技術局の無残な死骸と、チェーンソードの唸る音だけが残った。
カステラン・ロボの銃弾と拳が降り注ぎ、ケイオスライノは奮闘むなしく破壊された。
そんな激戦を静かに見つめていたファビウス。自らの作品が破壊されても眉一つ動かさない。
「今だ。」
静かな命令と共に、廃墟を飛び出したポゼッスド。目指すはオブリタレイターから距離を取ろうとする敵司令官2名。放たれた弾丸の様に一直線に襲い掛かる。
「偽リノ皇帝ニ死ヲ!!」
しかし、ポゼッスドの繰り出した攻撃も技術局の装甲に弾かれる。
「硬イ!」「何故ダ。」「何故。」「修復シテイル。」「修復…。」「射撃ノ傷モ癒エテ来テイル。」「厄介ダ。」「厄介。」「ヤハリスグニデモ倒サネバ。」
ここで一つ誤算があった。技術局の司令官たるもの、肉弾戦も嗜んでいたのだ。
瞬く間に3体のポゼッスドが倒された。
「計算外ダ。」「計算外。」「何トシテモココデ倒ス。」「創造主ノ為ニ。」
体内に埋め込まれたコーン神の烙印が熱く燃え上がる。
それに呼応する様に肉体が激しく脈動する。
再び襲い掛かるポゼッスドだった。
が、
それすらも技術局の計算の内だった。流れるように攻撃を回避され、ポゼッスドの変異した触手は虚しく空を切るのみだった。
「マスター、味方が苦戦しています。」
戦いを廃墟の壁から覗いていたサージェンアコライトは師を仰いだ。
「待て、あと少しで終わる。」
調整が終わってから、再び端末を操作し続けていたファビウスは、顔を上げる事無く答えた。
「ずっと気になっていましたが、何をなさっていらっしゃるんですか?」
サージェンアコライトの質問は、響き渡る雄たけびにかき消された。オブリタレイターが暗殺任務失敗に憤慨し、白兵戦で始末しようと躍り出たのだ。
「行くぞ、技術局のビークルを間近で見学できるまたとない機会だ。一秒たりとも見逃すでないぞ。」
寺院廃墟から出た2人も、カステラン・ロボに迫った。
激しい格闘戦が繰り広げられた。ポゼッスドがドミヌスに深手を負わせ撤退に追い込むも、カステラン・ロボの攻撃で重症の傷を負う。
オブリタレイターも自らの失態を挽回しようと奮戦するも、こちらもカステラン・ロボに撃破され、ワープ装置を使用し撤退した。
「マスター、この機械は素晴らしいです。是非欲しい。」
「うむ。ここまで洗練された機械はそう無いぞ。身体を機械化する技術もまた見事だ。」
感心していたのもつかの間、カステラン・ロボの拳がサージェンアコライトを掴む。
「これはマズイ。マスター、お先に失礼させて頂きます。また手術室で。」
カステラン・ロボの拳が閉じる刹那、サージェンアコライトはワープ装置を起動し戦場を離脱した。
エンジニア、カステラン・ロボと対峙するファビウス。緊張のさ中、端末から甲高い音が鳴る。画面には「complete」の文字。
天を仰ぐと、白兵戦が行われているポイントに投下される予定だった補給物資は、ファビウスの流した機械ウイルスにより誤作動を起こし、遥か東に落下した。その真下には、創造主から回収を命じられ待機していたケイオススペースマリーンの姿が。
「やれやれ、時間がかかったから失敗したと思ったぞ。では、最後に少し頂戴していくとするかな。」
ファビウスは残ったエンジニアに攻撃を集中し、ついに打ち倒す。部品を奪おうと手を伸ばした刹那、カステラン・ロボの剛腕が凄まじい速さで繰り出され、ファビウスの体を打ち付ける。
「ぐふっ!」
吹き飛ばされ、地面に叩きつけられるファビウス。
「欲をかくのはいかんな。大人しく退散するとしよう。」
ワープ装置を起動し、戦場を離脱するファビウス。
こうして、嵐の様に襲い掛かったケイオスの軍勢は、退却した。
カステラン・ロボの駆動音のみが静寂の中に響いていた。
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「お帰りなさい、マスター。今回得られた収穫は変えがたい物です。すぐに今回の経験を活かした手術を今のクランケに施しましょう。」
「まあそう急くな。技術局の作品の素晴らしさを学んだお前には更に期待している。あのロボをも狩ることができる”作品”に仕上げるぞ。その為に必要な部品も奪取できた。最後の手術を始める。」
戦いは続く。各々の思惑を孕んで……。
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【結果】勝利 2補給ポイント獲得
【戦闘不能判定】ポゼッスド:恥辱の烙印を負う。
【成長】ファビウス・ヴァイルは最高勲章を獲得、思惑を達成6経験点、その他の各ユニットは1経験点を獲得
【戦いの栄誉】ファビウス・ヴァイルは実戦経験者に昇格し、征戦の秘宝『転換フィールド』を獲得した。