3Dプリンタでランプシェードを作り始めた理由
3Dプリンタでランプシェードを作り始めてから3年が過ぎました。どういう経緯で今に至ったのかを書き留めてみようと思います。
3Dプリンタは、仕事でかかわったこともあります。金属の粉をレーザーで焼結して、切削加工まで可能な金属3Dプリンタでした。
仕事では、悪戦苦闘してバラバラのアプリを整理統合及び開発しました。
でもこのプリンタはあまり売れませんでした。私の会社はアプリの開発を請け負っていただけなので損失は無いのですが、売れないと次が続きません。
問題ははっきりしています。設計者が3dプリンタの特性を活かした設計をしないからです。従来の製造手法を念頭において設計したものを3dプリンタで製造してもコスト性能共に劣るので採用されないのです。
この状況は今も続いています。
朗報はスペースXがロケットエンジンの設計を3dプリンタを前提にすることにより軽量化に成功して燃料の節約に大きく貢献したというニュースくらいです。
ということで、3dプリンタを前提とした設計をしたいと思って、始めました。
既存の製造方法では不可能な形状だけど、性能が優れて、美しいものを目指しました。
ペンダントライト
はじめは、ペンダントライトでは無く、花瓶を作りました。なぜ花瓶かというと、スパイラルモードという3Dプリンタの造形方法を知ったからです。
このスパイラルモードというのは、3Dプリンタの弱点である、造形に時間がかかるということと、出来上がりが美しくないという欠点を克服することができる造形方法なのです。簡単にいうと、造形物を輪切りにして、その輪をスパイラル状に繋げるのです。こうすることにより、シームが無くなり、フィラメントを出し入れする際の糸引きなども無くなります。結果的に美しい形状を造形することができるのです。スパイラルモードは別名花瓶モードとも言います。なので花瓶を作ろうと思ったのです。いくつか作ったのですが、致命的な欠点が有りました。それは水が漏るのです。
それではということで、ペンダントライトのシェードを作ることにしました。これは水が漏る心配もないので、たくさんの種類を作って販売しました。ただ、ペンダントライトを交換するというのは、新築や引越しの際にしか需要が有りませんでした。
以下の写真は実際に3Dプリンタで作ったシェードを写真にとったものを合成した写真です。これらは3DCADがあれば設計できます。
人感センサーランプ
次に考えたのが、人感センサーライトにシェードを被せてみようということです。人感センサーライトにシェード被せるなんて誰もやっていません。なぜかというと、シェードを被せるとセンサーが反応しなくなるからです。
そこで、穴を開けることにしました。ボロノイ形状とかも試しましたが、とにかく仕上りが汚いのです。そこでスパイラルモードで穴が空いた形状をスライスできるようなデザインを考えました。
どういうデザインかというと、上に穴を開けるのです。上に穴を開けるってどうやるかというと、球の下半球を形状の周囲に配置するのです。そうすると、半球の上面は平面なので、その部分は造形されません。よって穴が開きます。
これをCADでデザインすることもできます。まず、形状の外周上に半球を1個配置します。それから、円パターンで円周上に複数個配置します。
これを繰り返せばできます。円周の直径に応じて半球の大きさを変化させることにより、円パターンの個数を一定にすることができます。周回の奇数番目と偶数番目では、開始位置をずらした方が見た目が良くなります。
これを手入力でやることもできますが、側面形状を変更するたびにやり直すことを考えるととてもできませんでした。早々に諦めて、外部プログラムで
半球をレイアウトすることにしました。
Pythonによるメッシュ生成
プログラム言語は無料でライブラリが整備されているPythonを選びました。当時はAIがプログラムを作ってくれませんでしたので、知人にお願いして雛形を作ってもらって、それを改造して完成させました。
どんなプログラムかというと
入力項目
側面形状のXY座標リスト
半球形状のSTLファイル(CADで作ったもの)
一周毎の配置個数
半球サイズの拡大縮小率
出力ファイルは、メッシュが合成されたSTLファイルです。
合成してスライス印刷
作ったメッシュファイルを側面形状を回転して作ったソリッドデータに読み込みます。このソリッドとメッシュが混在したデータから、STLファイルを生成して、スライサーに読み込ませてスライスすれば、3Dプリンタで印刷することができました。
穴あきペンダントライト
これは、人感センサーライト以外にも、使える技術だと思ってペンダントライトのシェードにも応用することにしました。
キャンドルライトしずく
もっと手軽にこの技術をつかったライトを買って頂きたいとの思いから、キャンドルライトのシェードにこの技術を応用しようと考えました。
人感センサーライトは直径8cm有りますので、どうしても大きくなります。
キャンドルライトは直径4cmですので手軽なおおきさのライトになります。
今からして思うと、1回目のデザインフェスタの出展時に、周りにキャンドルライトを使った照明がたくさん有ったのに触発されたのかもしれません。
ただし、シェードといえるようなものは無かったと思います。
最初は人感センサー用のシェードを縮小して作っていました。
以下がそうです。
穴あきペンダントライトの左上のシェードの形を縮小してキャンドルライトにしてみたところ好評だったのでつくってみたのが、キャンドルライトしずくです。しずくに関しては別に書きますので、そちらを読んでください。
この形状に魅せられた人々のおかげで、たくさん売れています。特に伊東に来られた観光客の皆様がお土産に買っていかれます。現在数店舗ですが、数十店舗に増やしたいと思っています。