大好きなBlack Country, New Roadというバンドと続いていく物語
愛してやまないBlack Country, New Road(以下BC,NR)のインタビューがmusitにて公開されました。僕は質問案を担当、文と編集はベストフレンドの星野 (@karasuzoku_)がやってくれました。musitでは昨年7月以来となる2回目のインタビューです。
僕が初めてBC,NRを観ることが出来たのは昨年の夏のことでした。日本を離れ、イギリスに来てから半年近くが経ちましたが海外生活に慣れず、元恋人に別れを告げられたこともあり、メンタル的にも厳しかった時期です。昨年1月、2nd『Ants from Up There』のリリース直前でヴォーカルを務めていた中心人物のアイザックが離脱してしまったBC,NR。彼への敬意か今までの既存曲を封印し、残された6人は新曲だけでライブ活動を再開しました。ステージ上にいる「6人」のBC,NRにまだ少し戸惑いを感じながらも、彼らが新しく奏でる音楽の中で、静かに涙を流したことを覚えています。
初来日となった昨年のフジロック、オール新曲のセットリストを宣言し臨んだ彼らの中継を、僕はロンドンから食い入るように観ていました。初来日が全て新曲のライブなんて前例が無いことでしょう。それでもステージには沢山のお客さんが集まり、その高揚感は画面越しにも伝わるものでした。メンバー全員がフェスTシャツにハーフパンツという大学生の夏合宿のような姿(ジョージアは原宿のBIG LOVE RECORDSのTシャツでした)に親近感を覚えつつも、ラストナンバーの「Dancers」でタイラーが思わず涙を流し、メンバー同士で抱擁し合っていた姿は本当に綺麗で、今でも忘れられない光景です。
かなしい出来事があった夏に、僕はすっかりと閉じ込められてしまった気持ちでいたけれど、いつの間にかBC,NRの虜になって、少しづつまたその時間が動き始めたような気がしていました。幸運なことに、昨年はインタビューする機会をいただけたり、レポ案件をいただけたりと、昨年末のBush Hallでのライブにも行けて、自然と彼ら彼女らの姿を追いかけることができました。
2日間で3公演が行われたBush Hallで、最終公演のテーマはプロムナイト。僕が一番好きな「Turbines/Pigs」の約5分にも渡るアウトロで、僕は友人に教えてもらったばかりの ”What doesn't kill you makes you stronger” ということわざを思い出していました。簡単に言えば「逆境こそがあなたを強くする」という意味です。前身バンドの解散やメンバーの離脱、様々な逆境を越えてきたBC,NRに自然と自分と重ね合わせて、勇気をもらっていたのかもしれません。夏に観たBC,NRを思い出しながら、「自分はどこにも置いていかれてなんかなかった」と、不甲斐ない自分を許せるような気持ちになりました。ずっと遠くから眺めていたつもりだった復活と再生の物語が、リアルタイムでそこにあったのです。
彼らの良さはその親しみ深さだとも思います。それは世界を回るたびに観光を楽しんでるメンバーの姿ももちろんですが、もう定番となっている「Up Song」での〈Look at what we did together, BC,NR friends forever〉の合唱だったりと、まるで「BC,NRの一員だ」という顔で歌っているお客さんを見て、ここはなんてあたたかな場所なんだろうと心からホッとした気持ちになりました。最初に中心人物なんて表現をしたけど、メンバー全員が中心人物なのです。相互扶助でありクリティカルな友人関係、現在進行形で変化していく彼ら彼女らの物語はこれからも続いていきます。僕はそれが楽しみで仕方ありません。
長々と書いてしまいましたが、どこかでちゃんと言葉にしたかった愛ゆえです。「レジリエンスとは何か」を体現してくれるような音楽こそが、今のBC,NRだと僕は自信を持って言えます。それは宝箱の中にそっと閉まってあるような、大切な人に最初に教えてあげたい音楽で、一番に一緒に観に行きたいバンドです。来日目前、春の訪れともにやってくるBlack Country, New Roadの初日本ツアーが大成功することを一ファンとして心から祈っています。