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EICU(Emergency Intensive Care Unit) のリアル

今回は、以前の職場であるEICUについてお話ししようと思います。

3次救急・EICUとは

私が働いていた病院は、3次救急の医療機関でした。

三次救急とは、一次救急や二次救急では対応が難しい生命に関わる重症患者に対応する救急医療(体制)です。救急医療の最後のとりでとして、重症患者、複数の診療科にわたる症状がある重篤な患者を、原則24時間体制で必ず受け入れることになっています。


ジョブメドレー
参照:https://job-medley.com/tips/detail/734/

私は救命救急・災害医療センター内の集中治療室で働いていました。Emergency Intensive Care Unit(EICU)という病棟です。集中治療室にはさまざまな種類があり、MFICU、NICU、GCU、PICU、GICUなどがあります。EICUは主に救急患者を対象とする集中治療室です。

どんな患者さんが来るの?

EICUと言われても、どのような環境なのかイメージしにくい方も多いと思います。そこで今回は、私の新人教育を担当してくださった大先輩の看護師が書かれた素敵なエッセイを紹介したいと思います。このエッセイを通じて、少しでもEICUを知っていただければ嬉しいです。

「EICU」。その主な役割は、広くは災害時の拠点病院として、また救急患者の収容施設としては、病状の重症化が著しく他の病院が収容できない患者を受け入れる最終施設としての使命を担うことである。どんな状態であっても、どんな背景があったとしても受け入れを拒むことはない。
その内訳は何らかの理由により心肺停止になったケース、次いで脳出血や心筋梗塞などの血管性の病変、交通事故などによる重症外傷が主な要因である。とりわけ現場ではドラマさながらの光景が展開され、
「えっと、ここはどこですか?」といったような日常からは到底想像できない、全てが混沌としている場面に日々出くわす。
EICU全体での病床数は二十床。患者二人に対して看護師一人が配置される。当然、重症化する患者は救急車で運ばれてくるわけで、
「50歳、男性、CPA(心肺停止状態)、ETA(病着までの時間)15分」
という自動音声が救急医療センター内に流れ、これからどんな患者が運ばれてくるのかある程度予想される。さらに致命的な共通点として、患者に残されている時間があまりないということが挙げられる。
「最低限の情報量+残り僅かな時間=把握不能」......この状況を一度でも経験したものであれば、誰もがとりあえずこの場から離れたいという衝動に駆られるのではないだろうか。
二〇床あるベッドの全てが同時に進行しているため、あちこちで処置や状態の変化、その後の対応に追われる。
交通事故により大量出血が見られ、ショック状態で搬送されてきたかと思えば次の瞬間には、「急変です!」なんて生活感のない呼びかけと共に心臓マッサージが開始される。あるベッドでは病状と精神的な混乱により患者が暴れ だし、男性看護師が3人がかりで必死に患者を押さえつけている。その隣のベッドでは患者と家族が最後の面会をして涙を流している状況。またその隣のベッドが空いたかと思えば、次の瞬間にはまた新たな患者が搬送されてくる。こちらの戸惑う時間は一秒たりとも残されてはいない。振り返ること、考えることが次の危険を生む。考える前に まず行動とはこの事だ。さらに最近では「COVID-19」の蔓延に伴って、その多忙さは災害級レベルに達している。まさに未曾有の危機的状況が連日繰り返されている。ただでさえ多くのプレッシャーから息苦しさを感じてしまう病棟なのに、N 95 マスクで更に息苦しく、マスクの硬い金属が鼻を容赦なく痛めつける日々。

帰山 一志,猫アイスクリーム,哲学を想像する ひとおもい5,2023,168-170

健康であるということ

仕事をしている中で、
「健康で普通に生活できることが、どれほど幸せなことか」ということを知りました。

EICUで働いていた時、同世代の人が交通事故に遭い、運ばれてくる場面を何度か目にしました。また、突然の病気で倒れて救急搬送された方もいます。そのたびに、「人はいつ命を失うかわからない」という現実を思い知らされました。だからこそ、私は一日一日を後悔なく生きていきたいと思っています。

マキャヴェリの言葉にあるように、
It is better to act and repent than not to act and regret
訳:行動せずに後悔するより、行動して後悔する方が賢明である」
という考え方を大切にしています。
不格好でも、夢に向かって挑戦している人は本当に素敵だと思います。
私もそんな風に、挑戦し続ける人生を歩みたいと思っています。

また、かりゆし58の「さよなら」という歌の中に、こんなフレーズがあります。
「僕が生きる今日は、もっと生きたかった誰かの明日かもしれない。」
この言葉を胸に、一日一日を大切に、全力で生きることを心がけています。これからも、この思いを忘れずに進んでいきたいと思います。

予防医療とは

看護師として働く中で、がんや心筋梗塞、脳卒中といった生活習慣病で命を落とす方々を数多く見てきました。2022年の統計によると、死亡原因の約6割がこれらの生活習慣病に関連しているとされています。これらの疾患は、喫煙、不適切な食生活、運動不足、過度な飲酒、ストレスなどの生活習慣が大きく影響していることが指摘されています。

「いつ死んでも良い」と言う人たちへ

サービスの説明中、「いつ死んでも良いから大丈夫」と仰る方に出会うことがあります。その人にとって現在の生活が幸せだと感じるのであれば、それを否定することはできません。しかし、「死ぬ」ということを本当に理解しているのか、疑問に思うこともあります。

糖尿病を例に挙げれば、進行状況によっては生涯病気と付き合わなければならなくなります。さらに、重い病気で入院すれば、体中に管が繋がれ、辛い治療を受けることになります。このような現実を目の当たりにした経験があるからこそ、私は病気と闘うことの辛さを痛感しています。しかし、そういった現実をイメージできない方も多いのではないかと感じます。

予防医療の重要性

私は看護師として、多くの方々の健康をサポートする仕事に誇りを持っています。
予防医療を通じて病気を未然に防ぎ、「あのとき向き合っていて本当によかった」と思っていただけるように、予防医療の重要性を伝え続けようと思っています。
私が目指すのは、ただ健康情報を伝えるだけではなく、その人の価値観や生活スタイルに寄り添いながら、最適なサポートを提供することです。健康を守るための選択が、将来の笑顔につながる――そんな未来を一緒に目指していきたいと考えています。
少しでも、多くの方の力になれたら嬉しいです。

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