ラジオドラマ脚本:キャプテン・シリー~神の涙~

シリー・グランドマン
本作の主人公。船のキャプテンで、楽観的な性格。
シドローとは親友のような関係で、銃の扱いに長けている。

シド・ロウ・ダンディ 男 25歳
シリーの幼馴染で職業は剣士。愛称はシドロー。
キャメルに片思い中。本編ではシドローと表記。

キャメル・シルバニア 女 19歳
行方不明の両親を探して旅をしていた時にシリーに誘われ、シルバーフォースの一員になる。性格は控えめ。3人の家事を主に担当している。

ディアナ・スタッカート 女 21歳登場人物
シリー・グランドマン 男 25歳
シルバーフォースの異名を持つ海賊団キャプテン。普段は楽観的。
ピストルを武器に戦う。


見習い剣士。シドローのことを師匠と呼ぶ。キャメルと仲良しで、彼女とは反対に明るい性格。

キャプテン・アーテル 男 30歳
シリーのライバル。本名はアーテル・ウルメイド。
悪名高い海賊として知られる。

バーナード・ガンドルフィ 男 28歳
アーテルの付き人のような存在。敬語で話す。
物静かな性格で、戦闘能力が高い。

ネロ・スタッカート 男 24歳
ディアナの兄。兄妹でありながらお互いに敵視している。
アーテルの強さに魅入られて仲間入りする。

ムトー・シルバニア 男 48歳
表向きは酒場の店主だが、裏では「神の涙」と呼ばれる宝石の番人。
キャメルの父。

アネモネ・シルバニア 女 45歳
ムトーの妻であり、キャメルの母。

スフェラ 女
宝石「神の涙」の化身。幼い少女の姿をしている。

ジル 男 27歳
「神の涙」を狙う盗賊。双子の長男。

ジラ 男 27歳
ジルの双子の弟。


本編
シリー:ここは大西洋。船は俺たちを乗せて、あてもなく漂流している。

(海の波の音、カモメの鳴き声)

シリー:あぁー・・・平和だねぇ・・・
シドロー:おーい、キャプテン!
シリー:何だー?
シドロー:12時の方向に島が見える。このまま進めば、夕方くらいには着くかもな
シリー:よっしゃあ!じゃあ新しい仲間とか増えるかな?もうそろそろ一人欲しいなって思っていたんだよねぇ
シドロー:へぇ・・・それってどんなだい?
ディアナ:・・・し、師匠・・・(疲れた声で)
シドロー:ん?
ディアナ:師匠・・・さっき言っていた腕立て伏せ100回、終わりましたぁ・・・
シドロー:おー、ご苦労。じゃあ次はだな・・・
ディアナ:も、もしかして、まだあるんですか?
シドロー:あぁ、剣の素振り2000回。夕方には新しい島に着くから、それが最後のトレーニングだ
ディアナ:島・・・ですか?
シリー:あぁ、このまま順調に進めばな
ディアナ:やったぁ!一人でトレーニングは寂しいから、同じ見習い剣士欲しかったんですよねー!
シリー:ふふっ、ディアナまで俺と同じこと言ってる(笑いながら)
キャメル:3人とも、なんだか楽しそうですね
ディアナ:あ、キャメル!
キャメル:何かあったんですか?
シリー:島だよ。あ、少し見えてきた!
キャメル:じゃあ、今日中には着けるんですか?
シドロー:もちろん!
ディアナ:じゃあ、私は最後のトレーニングに戻るね
キャメル:あ、ディアナ、いつものところに飲み物用意してあるから
ディアナ:ありがと、キャメル
(ディアナ、退場)
キャメル:次の島には・・・次の島には居るんでしょうか・・・?私の両親
シリー:居る、とも言い切れないし、居ない、とも断言できないな・・・
シドロー:あ、そうか・・・キャメルちゃんの両親は今も行方が分からないんだったな・・・
シリー:手がかりはキャメルが持ってる写真1枚だけ・・・俺も探すのは手伝ってはいるんだけど・・・
キャメル:(小さくため息)
シドロー:そう落ち込むなよ、キャメルちゃん。俺も手伝うからさ
キャメル:シドローさん・・・
シリー:そうだよ、俺たちは仲間なんだから、ね?
キャメル:は、はい!(嬉しそうに)
シドロー:やっと笑ってくれたね、キャメルちゃん
キャメル:え?
シドロー:ずっと落ち込んでいたからさ。ちょっと心配だったんだ
キャメル:シドローさん・・・
シリー:はい、そこまで!だいぶ島まで近づいてきたから、上陸の準備始めようぜ
キャメル:そ、そうですね
シドロー:しょうがねぇなぇ・・・じゃやるとあするか。ディアナ!(呼びかけるように)
ディアナ:は、はい・・・(疲れた声で)
シドロー:そっちは終わったかー?
ディアナ:はい・・・ついさっき・・・
シドロー:よし、今日のトレーニングはこれで終了だ。少し休んだら上陸の準備、手伝うように
ディアナ:分かりましたぁ・・・
キャメル:ところで、次の島はなんて言う場所なんですか?
シリー:んーっと・・・地図によれば今向かっているのは・・・ウルキア島っていう島らしい
シドロー:ウルキア・・・?
ディアナ:あ、その名前聞いたことある。そのウルキアっていう島の何処かに「神の涙」って呼ばれる宝石が隠されているんだとか・・・。その「神の涙」を手に入れた人は一生遊んで暮らせるくらいの大金持ちになれるっていう噂だよ。でも、その「神の涙」を守っている一族がいるとか、手に入れたとしても悲惨な最期を遂げるとか、いろんな言い伝えがあるんだよねぇ
シリー:お前、どっからそんな情報を・・・
ディアナ:そりゃあ「神の涙」といえば世界に2つとないお宝ですからねぇ。結構有名ですよ、この話
シリー:俺も話くらいは聞いたことあるけど、本当にこの島に・・・?
シドロー:まずは、ウルキア島に着いてからだな
キャメル:そうですね・・・
シリー:よーし!じゃあウルキア島に向けて上陸開始だ!みんな、始めるぞ!
3人:おー!
―――ウルキア島上陸―――
(人のざわめき声)
ディアナ:着いたー!(嬉しそうな声で)
キャメル:結構大きな島ですねぇ
シドロー:シリー、最初は何するよ?
シリー:そうだなぁ・・・みんなで飯でも行くか。だいぶ陽も落ちてきたし
ディアナ:やったぁ!
キャメル:じゃあ、早速探しに行きましょうか
シドロー:そうだな
ディアナ:賛成!
シドロー:だな
キャメル:あ、あの店とかどう?
シリー:行ってみるか
(ベルの音)
ムトー:いらっしゃい。アネモネ、お客様だよ
アネモネ:いらっしゃいませ。さぁ、こちらへどうぞ
ムトー:あんたたち見ない顔だねぇ。旅の者かい?
シリー:あぁ、そうさ。大西洋を渡ってきたんだ
アネモネ:それじゃあ、さぞかし長旅だったでしょう
シドロー:まぁな
ムトー:何の変哲の島だけど、楽しんでいくといい
キャメル:はい、ありがとうございます
シドロー:(小声)そういえばシリーよ、あれ、本当に探すのか?
シリー:(小声)あれって?
シドロー:(小声)さっき言ってた神の涙だよ
シリー:(小声)あぁ、あれね、そりゃあそうさ
キャメル:(小声)ねぇ、マスターに聞いてみる?
ムトー:どうした?みんなで内緒話かい?
キャメル:あ、実は私たち・・・
キャメル:お宝を狙ってるんです!
シリー:ほう・・・お宝かい?
シリー:あぁ、神の涙っていう宝石なんだ
アネモネ:神の・・・涙?
ディアナ:世界に二つとないお宝なんです!だから、せめてこの目でちゃんと見ておきたいなぁんて思って
ムトー:・・・そうか・・・今はそう呼ばれているのか・・・
シドロー:・・・え?
ムトー:いや、こっちの話だ、気にするな
キャメル:おじ様は神の涙について、その・・・何か知ってるんですか?
ムトー:あぁ・・・知ってはいるが、お前さん方は手を出さんほうがいい。・・・死にたくなければな
シリー:・・・それって・・・どういうこと?

シリー:一方その頃、ウルキア島の北端。ウルキアの墓場では、二人の男が暗い夜の中で墓穴を掘っていた
(スコップで土を掘る音)
ジラ:おい、ジル。本当に此処でいいのか?掘って掘っても何も出てきやしねぇぜ
ジル:しっ!あんまり大声出すなよ、この島の連中にばれちまうだろうが
ジラ:ちぇっ・・・しかし、だいぶ掘ってるぞ?もうそろそろ出てきてもいいんじゃないか?
ジル:あぁ、神の涙がこの墓場に眠っていると聞いてやって来たが、所詮は噂。見つからなかったら、他のところへ行こうぜ
ジラ:全く・・・俺らは盗賊であって、墓荒らしじゃねぇっつうの!
(ガキンッとスコップの先端が何かに当たる音)
ジラ:・・・ん?おい、兄貴!
ジル:どうした?
ジラ:何か出てきた・・・これは箱・・・?
ジル:開けられるか?
ジラ:ちょっと待ってろ。よっと・・・
ジラ:(箱の中身を見て驚く)おぉ!
ジル:この青い輝きは・・・
ジラ:間違いねぇ・・・神の涙だ!やったぜ、兄貴!これで俺たち、大金持ちだ!
ジル:でかした、ジラ!さ、こんな薄気味悪いとこ、さっさと出ようぜ
バーナード:・・・あなた方ですね、この墓を荒らしているのは
ジル:あーん?誰だ、お前?
バーナード:この島のお守りです。・・・と言っても、信じてもらえないでしょうけれど
ジラ:そうだな。実はお前も俺たちと同じなんだろ?
バーナード:我々はあなた方のような下衆(げす)な盗賊ではありませんよ。そうでしょう?キャプテン・アーテル
ジル:アーテル?
アーテル:あぁ、そうだ。俺たち誇り高き海賊だ。お前と一緒にされちゃ困る
ジラ:キャプテン・アーテル・・・だと・・・?
ジル:は、はは・・・そうか、お前さんはかの有名なキャプテン・アーテルかい・・・
ネロ:さすがキャプテン。こんな奴らにまで名を知られているとは。
アーテル:お前が持ってるそれ、神の涙か
ジラ:!
アーテル:神の涙はお前らのような盗賊には相応しくないんだよ。それにお前らは知っているか?神の涙を手にした奴らがどんな末路を辿ったか
ジル:知る訳ないだろ?これを手にした奴らがたまたま不運な目に遭っただけじゃねぇか
アーテル:・・・果たしてどうかな?
ジラ:脅しのつもりか知らねぇが、手にしている以上は俺らのものなんでね。渡すつもりはねぇよ。
ネロ:こいつ・・・!
(ネロ、剣を構える)
バーナード:よしなさい、ネロ
ジル:こいつが欲しければ力づくでも・・・・・・うぐっ・・・!
ジラ:ジル?どうした?
ジル:ぐっ・・・がぁ・・・・・・!!
ジラ:おい、しっかりしろ!・・・うっ・・・うぐ・・・!
ジル:く・・・苦しい・・・!
ジラ:お前ら・・・一体、何を・・・!
(ジル、ジラ、倒れる)
ネロ:何だ?い、一体どうしたってんだ?
アーテル:呪いだよ
ネロ:呪い?
アーテル:あぁ、そうさ。もちろん、呪い殺したのはただ一人。・・・そうだろう?スフェラ
スフェラ:・・・・・・はい
ネロ:いつの間に
バーナード:・・・何故、キャプテンの邪魔をしたんです?
スフェラ:神の涙が望んでいたから。今回は、今までに比べたらまともなほうだったけど
アーテル:こいつは何も望まなくても殺ったはずだぞ?まぁ、俺が殺ろうが、お前が殺ろうが、この二人の末路は同じだったがな
スフェラ:・・・これをどうするの?
アーテル:別に?何もしないさ。俺はただ見ていたいだけさ。
スフェラ:・・・そう
バーナード:スフェラさんなら、次の犠牲者は誰なのか、ご存知なのですか?
スフェラ:・・・はい。シルバーフォース
アーテル:・・・あいつらか。ふふふ、楽しみだな。貴様らがこの島に来ているのは分かっているぞ、キャプテン・シリー。死に顔を思う存分見届けてやるからな!



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