ラジオドラマ脚本:Snow Scene~鏡の記憶~
カイ 男
本作の主人公。雪の女王が所有する悪魔の鏡に魅入られてしまう。少し能天気が入った、良くも悪くも大らかな性格。
ゲルダ 女
カイを支えるしっかり者。カイのことが好き。
フェルト 男
カイとゲルダの友人
雪の女王 女
アイスキャッスルに住まう女王。鏡を使って人々を狂暴化させる
下僕1 男
雪の女王の部下
下僕2 男
雪の女王の部下
本編
カイM:やけに長い夢を見ていた。何の夢だったかは覚えていない。ただ、これだけは分かる。俺は―――大切な人を殺してしまった
カイ:―――ゲルダ!ゲルダ!
ゲルダ:カイ!一体どうしたの?
カイ:なんかさ、綺麗な鏡が落ちてたんだよ。お前にどうかなって
ゲルダ:・・・鏡?何処で拾ってきたの?
カイ:へへっ、アイスキャッスルさ!
ゲルダ:ちょっと・・・そこって、雪の女王が住んでるんじゃ・・・!?
フェルト:二人とも、何を言い合ってるんだい?
ゲルダ:フェルト!カイったら、またアイスキャッスルへ行ってきたっていうのよ
フェルト:アイスキャッスル・・・ってあの雪の女王が居る、あそこか?
カイ:フェルトも見るか?これ
フェルト:カイ・・・君は悪魔に成り下がるつもりかい?(呆れながら)
カイ:悪魔?何で?
フェルト:昔話にあっただろう?雪の女王が持つ悪魔の鏡に魅せられた人は悪魔へと変貌するって。噂じゃ、鏡の力が甦ると女王も復活するってさ
カイ:噂だろ?大丈夫、鏡をまじまじと見なければいいんだし
フェルト:君のそういうところが心配なんだよ、僕たちは・・・
ゲルダ:まぁまぁフェルト。とにかく、アイスキャッスルは危険だから近づいちゃ駄目だからね、カイ
カイ:・・・分かったよ・・・
カイ:あ、降ってきた・・・
ゲルダ:本当ね・・・私たちもそろそろ戻らなきゃ
フェルト:そうだな・・・また雪が積もる前に家に戻らないと
ガルダ:カイ、くれぐれも雪の女王にさらわれないでね!
カイ:分かってるよ!いざとなったら、暖炉にぶち込んでやるさ!
SE:ドアを開けて、閉まる音
カイ:うぅ・・・寒い!早く暖炉の火をつけて・・・と
SE:暖炉の火の音
カイ:うん、これで大丈夫だな
カイ:悪魔の鏡・・・これに魅入られた人間は悪魔になってしまう・・・。ま、そんなこと、ある訳ないか・・・。見た目は普通の鏡だよなぁ・・・今まで見た中では一番キレイだけど
雪の女王:・・・ふふふ・・・・・・
カイ:・・・え?
雪の女王:鏡を持ち出したのはお前かい?
カイ:だ、誰だ!?一体、何処から・・・・・・
雪の女王:私は雪の女王。私の城から鏡を持ち出したのはお前かい?
カイ:雪の・・・女王・・・・・・嘘だろ・・・あの話、本当だったのか・・・?
雪の女王:どうした?私の大切なものを盗んだのだから、質問に答える勇気ぐらいあるだろう?
カイ:う・・・・・・確かに、俺が城から持ち出したさ。あまりにキレイだったんで、ゲルダにプレゼントしようと思って・・・
雪の女王:ほう、なかなか正直な男じゃないか。気に入った。それはお前にくれてやろう。ただし・・・
SE:風の音
雪の女王:お前のその心と引き換えだ!
SE:鏡が割れる音
カイ:ぐっ・・・!い、痛ぇ・・・!!
雪の女王:さぁ、私と一緒に来るのだ!
カイ:うわあぁぁ!!
ゲルダ:カイ!
SE:ドアを叩く音
ゲルダ:カイ・・・居ないの・・・?
SE:ドアを叩く音
ゲルダ:カイ・・・入るよ・・・?
SE:ドアが開く音
ゲルダ:・・・なにこれ・・・・・・。カイ、カイーーーッ!
フェルト:何だって!?カイが居なくなった!?
ゲルダ:うん・・・おばさんに聞いても帰って来ないって言って、行方が分からないって。居なくなってから三日も経つし・・・どうしちゃったんだろう・・・
フェルト:・・・まさか、雪の女王に・・・?
ゲルダ:カイが?・・・嘘・・・・・・
フェルト:いや、もしかしたら、だ。アイスキャッスルから持ち出した鏡のこともある
ゲルダ:・・・カイが居なくなったあの日、彼の家に行ったら部屋中氷だらけで、割れた鏡もあったの・・・。やっぱり、カイは・・・・・・
フェルト:・・・そうか・・・・・・
ゲルダ:フェルト・・・カイは大丈夫なのかな・・・?
フェルト:あいつのことだから、大丈夫だろう。それより俺、あそこへ行ってくる
ゲルダ:もしかして、あのアイスキャッスルへ?
フェルト:あぁ・・・何か嫌な予感がするんだよな・・・
ゲルダ:フェルト、私も行く!アイスキャッスルへ!カイを助けたいの!
フェルト:ダメだ、君じゃとても危険だよ
ゲルダ:だって・・・待ってるだけなんて、私、出来ないよ・・・
フェルト:ゲルダ・・・。分かった、二人であいつを助け出そう
ゲルダ:うん!
カイ:―――うぅ・・・つ、冷てぇ・・・・・・。ここ・・・一体何処だ・・・?
雪の女王:やっとお目覚めかい?
カイ:雪の・・・女王・・・
雪の女王:お前が目覚めるのを待っていたんだよ
カイ:・・・・・・・・・
雪の女王:鏡をごらん?
カイ:・・・鏡?
雪の女王:ふふふ・・・
カイ:・・・ゲルダ、フェルト!?
雪の女王:お前の仲間が私の城に向かってきてるようだねぇ・・・
SE:風の音
ゲルダ:吹雪が・・・強くなってる・・・!
フェルト:雪の女王が復活すると、あたりは絶対零度でさらに雪と氷で覆われる・・・そんな逸話を聞いたことがあるよ・・・
ゲルダ:私たちの街に春は来るのかしら・・・?
SE:転ぶ音
ゲルダ:きゃあっ!
フェルト:ゲルダ、大丈夫か?
ゲルダ:いたた・・・雪に足をとられて・・・・・・、あ
フェルト:どうした?
ゲルダ:ねぇフェルト・・・あれ・・・
フェルト:・・・アイスキャッスルだ・・・
ゲルダ:あそこにカイと雪の女王が・・・?
フェルト:急ごう。カイ・・・何もなければいいんだけど・・・
カイ:ゲルダ!フェルト!
下僕1:女王陛下のご命令だ。大人しくしろ
カイ:くっ・・・!
雪の女王:お前たち、そいつを逃がすんじゃないよ
下僕2:かしこまりました
カイ:待て、何処に行くんだ!?
雪の女王:私は女王だ。あの二人を、誰がこの城に歓迎するんだい?
カイ:なっ・・・・・・
SE:扉が開く音
SE:二人分の足音
フェルト:やっと着いた・・・
ゲルダ:この城・・・全部氷で出来てる・・・。カイ・・・何処に居るんだろう・・・
雪の女王:ようこそ、わが城へ
フェルト、ゲルダ:!?
雪の女王:まさか本当に乗り込んでくるとはねぇ・・・
ゲルダ:カイは!?カイは何処なの!?
フェルト:あいつは無事なんだろうな!?
雪の女王:あぁ、居るとも
カイ:二人とも、すぐに引き返せ!そいつは・・・うぐっ・・・!!
ゲルダ:カ、カイ・・・?
カイ:う、うぐぅぅ・・・!!
フェルト:お、おい・・・カイ・・・?
雪の女王:―――やっちまいな
フェルト:うっ・・・!
ゲルダ:フェルト!?・・・何これ・・・血・・・?フェルト、フェルト!!
下僕1:諦めるんだな
下僕2:そいつはもう、助からない
ゲルダ:・・・嘘・・・カイ・・・・・・どうして、こんな・・・
雪の女王:ふふふ・・・
カイ:お前も道連れにしてやるよ
ゲルダ:あ・・・
カイ:すぐに楽になるさ
ゲルダ:カイ、やめてぇ!!
カイ:―――・・・あれ・・・?俺は、一体何を・・・
カイ:げ、ゲルダ!?フェルト!?
ゲルダ:―――うぅ・・・・・・
カイ:ゲルダ!ゲルダ!!
ゲルダ:カイ・・・カイなのね・・・・・・
カイ:ゲルダ・・・くそっ・・・・・・俺のせいで・・・!!
ゲルダ:良かった・・・正気に戻ってくれて・・・
カイ:・・・えっ?
ゲルダ:カイは・・・悪魔なんかに、負けてなかったんだよね・・・?
カイ:何言ってるんだ!ゲルダ、おい、ゲルダァ!!
カイ:・・・・・・おい
下僕1:何だ?
カイ:あいつは何処に行った?
下僕1:あいつ?
下僕2:女王陛下と呼べ
カイ:そうだな。じゃあ女王陛下は何処だ?
下僕2:貴様の知ったことではない
カイ:そうか・・・
SE:攻撃音
下僕1:ぐあっ・・・!
下僕2:貴様、何を・・・
SE:攻撃音
下僕2:悲鳴、うめき声
カイ:鏡もあいつも・・・全部俺がぶっ壊す!
カイ:ゲルダ・・・俺は・・・あいつを倒す為なら・・・もう一度悪魔になってやるさ