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「管理職になったほうが子育てと両立しやすい」は本当?を考えてみた
女性の管理職登用、ダイバーシティ推進、そういうネット記事で経験者へのインタビューで時々目にするセリフが、「管理職になったほうが子育てと両立しやすい。」でもそれって本当だろうか。だって、そういう記事を目にする一方で、管理職をやめたワーママの体験談を目にすることもある。この謎を私なりに整理してみたい。
文字数多くなってゴメンナサイ。太字を追いかけるだけでも要旨はわかります。
カギは「裁量」と「トラブル」(緊急性)
私は管理職じゃないけど意識する立場にはあって、プロジェクト内ではほぼ管理職みたいなことをした経験はある。その経験からすると、「管理職の立場だと仕事が早く終わるなー」と思うときは、確かにあった。一方で、仕事量に忙殺され「管理職で子育てと両立はやっぱむり…」と思うことも、ぶっちゃけあった。
だから結論としては「管理職になったほうが子育てと両立しやすい?」は、YESでもあり、NOでもあるんだろう。
そんな実感をもちつつ、女性活躍関係のインタビュー記事や各種SNSでいろんな人の発信を眺めてみると、「管理職のほうが両立できる」と言っている人と「できない」と言っている人とは、そもそも背景に違いがありそうだなと感じた。
「管理職のほうが子育てと両立できる」と語ってる人は2つの特徴をもつ気がする。
1つは「裁量」が広いーつまり管理職になってからゴールポストと入れる手段を自分で決められるようになった人のようだ。
たとえば部下から成果報告を聞くタイミングや、部下から相談してもらうタイミングをコントロールできる。週のはじまりだったり、自分の予定が空けられる曜日だったりを、自分から指定できる。すると自分の都合のよいタイミングにできるから、確かに両立しやすくなるのだ。子育てに一番不利なのは「夕礼」といった、もうすぐ保育園にお迎えに行かなきゃいけないタイミングに、新しい仕事が入ってきてしまうことだから。
成果物の仕上がりを自分で決められる裁量がある場合も強い。やり直しの手間が少ないし、「AじゃだめならBでいこう」と方針転換を即決できると勤務時間が短くなる。
2つめは「トラブル」が少ないーつまり管理職がイレギュラーに時間を割かなければいけないイベントが頻繁でないということ。
いくら目の前に見えている仕事を効率的にこなしたり部下に分担してもらって、保育園のお迎えに間に合うようにしても、いきなり見えてなかったところから緊急性の高い割込み仕事が降ってきたらーThe End.
自分の経験でいくと、月1回とかたまのことならトラブルがあっても気合でなんとかできるし、アドレナリンがでてむしろ「頑張ってる自分最高」ってなる。子供への影響も少ない。だからトラブルはゼロである必要はない。というかゼロの管理職はない。問題は頻度だ。頻繁に起これば起こるほど、アドレナリンで急場しのぎで乗り切れなくなってくる。子供も疲れてぐずるようになる。
管理職と一口で言っても、これら「裁量」と「トラブル」の広狭大小にはグラデーションがあるから、結果として、ある人は「ワーママに管理職は無理…」と言い、別のひとは「むしろ管理職になってからのほうが両立しやすいよ」という訳だ。
私もプロジェクトによってそこが変わる。だから、どちらの言い分も「そうだよな~」とうなづけるのだった。
図にしてみた
ここまでの考察を図にしてみた。
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図の説明を少ししたい。
管理職と子育てが両立しやすさを、「トラブル対応」と「裁量」の量によって4つのゾーンに分けて表現。
グリーン→イエロー→オレンジ→レッドの順に管理職と子育てが両立しにくい。
図の前提条件を説明する。
一般に管理職は時短勤務を想定した制度ではないから、管理職の業務量は各ゾーン一律にフルタイム+残業1時間程度を想定。つまり子育てとの両立のために時短勤務やフルタイム残業なしで管理職をやる場合、そうでない管理職と比べて、1~2時間程度、業務にかかる時間を自助努力で改善が必要というバックボーンを持つ。ベビーシッターを使えば、時間を改善しなくてもよくなるが、ここでは想定しない。現時点で費用負担とサービス地域の関係で全員が使えるわけではないから。そしてベビーシッターが子育てと仕事の両立に寄与するには「子供の性格が社交的だ」という隠れパラメータが存在することに注目。
通勤時間は片道1時間、週2~3出社。独断と偏見で、なんとなく中間地点じゃなかろうかと思ったのでそうした。
保育園送迎は、送りも迎えも本人がやる想定。ゆえに前述のとおり業務時間を短くしないと家庭が回らない。まだ日本は男性の労働時間が長いと聞くから、どっちかというとそっちが一般的かなーと思いながらそう設定した。
前提条件が変わると図のグリーンゾーン、レッドゾーンは増えたり減ったりする。条件より負担がある人はレッドゾーンは増えるし、減らせた人はグリーンゾーンは増える。このあたりの増減の様子も図解にすると面白そう。閑話休題。
さて各ゾーンについて少し補足する。
「トラブル対応:少ない」「裁量:広い」→両立しやすさGood!
裁量が広くて業務フローをカスタムできるため、他の人と異なるやり方で成果を追及でき、1,2時間足りない業務時間を工夫で補う余地がある。自己肯定感もあがる。またトラブル対応が比較的少ないことで、お迎え時間が圧迫されて目の回る忙しさや持ち帰り残業しないで済む日もわりとある。(時々はトラブル対応はあるけど)
コーポレート部門や法人向け営業で、子育てと仕事の両立に理解のある職場はこうなるかしら?と勝手な印象。
「トラブル対応:少ない」「裁量:狭い」→両立しやすさ う~ん..
トラブル対応が比較的少ないことで、お迎え時間が圧迫されて目の回る忙しさや持ち帰り残業しないで済む日もわりとある。(時々はトラブル対応はあるけど)
けれど裁量は狭くて、管理職だけどいろんな締め切りの調整とか従来のやり方を変えることができず、業務時間が足りない。部下に管理職の仕事を代行してもらえれば、役割分担の見直しで業務時間を補うことができる。ただし部下に管理職代行のモチベーションが生まれない場合は、ちょっと人間関係がきしみ、居づらくなる恐れがある。部下がもともと業務量に不満を抱いてないか、代行してもらう仕事がキャリアの助けになるかがカギだろうか。
コーポレート部門や法人向け営業だとしても「子育て中でも仕事とは関係ないでしょ」という雰囲気がありほかと違う工夫がしにくい職場はこうなるかしら?と勝手な印象。
「トラブル対応:多い」「裁量:広い」→両立しやすさ やばい
裁量が広くて業務フローをカスタムできるため、他の人と異なるやり方で成果を追及でき、1,2時間足りない業務時間を工夫で補う余地がある。自己肯定感もあがる。しかし週1回以上の頻度でトラブル対応があり、せっかく工夫して減らした業務時間はまた増えがちだ。
トラブル原因が業務マニュアルにあるなら、自分の裁量でもってマニュアル改善していけるかが両立へのカギ。とはいえマニュアルで改善できるならほかの人がやってるわー!とも思うので確度は低く、両立しやすい職場とはいえない気がする。あとは経験豊富でトラブルを任せられる部下がいるなら話は違う。でも部下の不満が溜まりそうなのでそういう部下の個別ケアー昇格の後押しなどがいる…のか?(自問自答)
いわゆる現場職で、子育てと仕事の両立に理解のある職場はこうなるかしら?と勝手な印象。
「トラブル対応:多い」「裁量:狭い」→激やば
週1回以上の頻度でトラブル対応があり残業が増えがち。しかも裁量が狭いので自分でどうにかできる余地がない。
自分の体力が続くかどうか、子供の長時間保育で影響ないか(人懐こくて体力ある子はいける..のか?)がカギ。つまり両立には激やば。
子育てと管理職を両立したかったらポジショニングが超重要
ここでちょっと立ち止まって考えたいー「裁量」と「トラブル」の量は自分には決められない。つまり管理職と子育てを両立できるかどうかの最初の分かれ道は、自助努力ではなくて、「裁量」と「トラブル量」がどの程度かという、環境条件だ。その環境があってから、次に本人がどの程度自助努力を発揮できるかが問われる。
「管理職になりますか?」とワーママが聞かれたとしたら、その管理職は上のマップのどのポジションにあるのか、把握したほうがいいかも?と今回私は思った。ポジショニング、超大事。
別に、ヒラである現状がレッドゾーンにいるからって、必ずしも、今すぐグリーンゾーンにでないと管理職になれないわけではないと思う。能力によっては組織のほうから、ポジションを作ってくれるかもしれない。働きかけをしてみたらできるかもしれない。
ただポジショニングを一番選択できるのはいつかというと、管理職になる前だ、ということも、同時に念頭に置いておきたい。PM(プロジェクトマネージャ)もそうで、組織にリソースを要望できるのは、基本的に就任前。一度就任したらその職務とリソースでの遂行をまずは目指す仕事だ。
自分と子にあまり無理させず管理職になりたいというニーズのかたは特に気を付けたい。
組織でのポジショニングが調整できない場合は、前提条件のどこかしらを変えて負担減を目指せるかを検討するか…?前提条件のところは未婚の時から考える必要がある、というのがやってみての私の感想。(あれ出会いの母数を減らして少子化後押ししちゃう?)
補足1:そもそも自分が管理職に向いているかどうか
そもそも管理職は全員が目指すものでもない。普通の社員と役割が違うので、性格的に向いてないケースもあると思う。管理職の魅力はゴールポストと入れる手段を自分で決められる(なおこれのできない裁量のない管理職は「名ばかり管理職」)。「自分で決める」とか「人を動かす」に魅力を感じる人にはたまらない仕事だ。決めることを苦痛に感じる人には向いてない。逆に管理職が好きになる人は平社員の仕事はもどかしく感じるだろうから、どっちが偉いとかではなく、単に嗜好性と生涯年収の話だ。
ワーママという制約のある状態で管理職になるんだったら、そうでない時よりいっそう、「じぶんはそういうことがすきだったっけ?」と考えた方がいいんだろうなーという感想だ。
だって、性格診断て性格パターンが16とかもあるわけで、その全部が上記の嗜好性があるかっつーと、そんなバナナだもん。ちょっと女性活躍は主語が大きくなりすぎた。
補足2:そこまでして女性が管理職を目指すべきか?
ここまで読んで「そこまでして女性が管理職を目指すべきか?」と思った方がおられるかもしれない。
そのときは、上記の問いかけから性別のくくりを取っていただけたら、と思う。「そこまでして〇〇さんが管理職を目指すべきか?」女性だから男性だからというより、その人の資質が会社の発展に寄与するかだと思う。そして「管理職になりたい人がいない」「人手不足倒産」が社会現象になりつつあるなかで、人口の半数以上にあたる「〇〇さん」を管理職候補から排除するのが本当に将来のためになるのかな?と思ったりする。