子育てハウツーより効果バツグンなこと
いやいや期まっさかりなみーちゃん(2歳)。手足をバタつかせ、泣きじゃくって「ちがうー!!」と猛アピールだ。私はため息をついた。
広い心でみーちゃんを受け止めるお母さんでいたい。…でもいつもいつもは難しい。
頭では分かっている。みーちゃんの立場になれば、まだまだお散歩したかったし元気なのに連れ戻されたのは理不尽で、怒って当然だ。(けれどお昼ごはんは食べないと、というわけで帰宅した。)それでももやもやが胸にたまってしまう自分がいる。意識して息を吐いて、心の内圧が高まりすぎないように気を付けた。これはお母さん業で身につけたスキルだ。
なんとか抱っこしても体を反らせてすり抜けられてしまう。とりつくしまもない。
どーしろというんじゃ…。
その時。
私はふと、スマホを手にもった。
ぴっぴっとボタンを押していく。
たどり着いたのはとある動画。
「再生」ボタンを押す。
すると、スピーカーから瑞々しい音が流れ出た。
『ふ、ふ、ふぎゃ~…』
音に惹かれて、みーちゃんの声が小さくなった。
みーちゃんが四角い画面を覗き込むと、
そこには、
生まれたばかりの
ふわふわしたみーちゃんが写っていた。
『よしよしだよ~』
わたしの声もスピーカーから聞こえてきた。
みーちゃんはじっと、映像に見入った。
私は言った。
「これはねぇ、みーちゃんが
もっとちっちゃいときのなんだよ。
この頃からみーちゃんは
とってもかわいかったなぁ」
ふたりは畳に寝転がって、ひとつの画面を見つめ続けた。
みーちゃんの体温を感じて、
離れかけていたみーちゃんとの心が、
また近くなった気がした。
どんな子育てハウツーも、
親子が辿った年月の重さには
敵わないのだ。
ぐずってしまったみーちゃん。
ため息をつく私。
二人を繋いでくれたのは、みーちゃんが0歳の時の動画だった。
愛された記録を見返して、
みーちゃんと私は親密さを取り戻した。