Rapid Execution and Combat Targeting (REACT)日本語訳
Rapid Execution and Combat Targeting (REACT)は、米空軍の強化プログラムである。このプログラムの目的は戦略航空軍団(Strategic Air Command : SAC)のミニットマンミサイル打上管制センターを刷新することであった。SACは1980年代に6億3200万ドルをかけてこのプログラムを開始し、1960年代から1970年代にかけての年代物の核制御システムは近代的なものに取って代わった。新しいシステムは個々のミサイルと全軍の両方に対し、迅速で柔軟なリターゲティングを可能にし、ミサイルクルーの作業負担を軽減した。
これは、どのようにアメリカの打上管制センターがフロッピーディスクドライブとトラックボールを持つようになったかの話である。
Meet the missileers
SACのミニットマンミサイルには、それぞれ無人打上施設(Launch Facility : LF)があった。各ミサイルは他のミサイルから少なくとも3マイル、それぞれの打上管制センター(Launch Control Center : LCC)から3マイル離れていた。
LCCはミサイル戦闘要員(Missile Combat Crew : MCC)が常駐する地下施設で要員はミサイル戦闘指揮要員(Missile Combat Crew Commander : MCCC)とミサイル副戦闘指揮要員(Deputy Missile Combat Crew Commander : DMCCC)で構成されていた。(以下クルーと表記)
つまり、各LCCは10発のミサイルで構成されるFlight(10LF + 1LCF)を担当し、同様に5つのLCCはSquadron(Flight * 5)を形成し、3つのSquadronはWing(Squadron * 3)を形成した。
それぞれの戦闘クルーは、数フィート離れた場所にそれぞれの打上コントロールコンソールを操作する。上位組織がメッセージを送るとLCC内の複数のラックに表示された。このような場合、戦闘クルーはミサイルを打上るために、受信したすべてのメッセージを受け取るために立ち上がらなければならなかった。そして、クルーは2つの鍵を同時に回さなければならなかった。1人で両方のキーを回せないようにキーの操作盤は遠くに配置されている。
A Frankenstein System
年々SACの打上クルーの仕事量と負担は増大していた。これは、Communication, Command, Control, (C3)のための新しい機器がLCCの一部となったためである。
70年代半ばまでにSACはRivet Save Minuteman Modification Programを実施した。これによりミニットマンクルーは1/3に、勤務時間は36時間から24時間に短縮され、LCC内のクルー1人が休息状態(つまり睡眠状態)に置かれた。
現場での2人目の打上クルーを削減するためには、機器の改造が必要であり、同時にこの改造はクルー1人による無許可の打上を防ぐためでもあった。しかし、その代償として、クルーの要件と作業量は増加した。
Rivet Saveは始まりに過ぎなかった。複雑さを増す改造は、クルーの仕事量を増やし続けてゆく。
後のシステムでは、次のような手順と乗組員の必要なアクションが増加した:
1. SAC Automated Command and Control System : SACCS
2. Survivable Low-Frequency Communication System : SLFCS
空軍はこの困難を解消するためにすべての新しいガジェットとLCCラックを2人用のコンソールに統合することにした。これがREACTに課せられた要件の内1つである。
しかし、事はそれだけではい......
The retargeting problem
当初、オペレーターは遠隔操作でミニットマンの照準を変更することはできなかった。つまり打上前、サイロ内のミサイルの誘導システムが目標を参照していなければミサイルは目標に到達できない。手動で(新規標的情報の入った)テープを交換する事でのみミサイル・コンピュータに新しい目標を設定することが出来る。
このテープの作成から最終目的地までの道のりは、これまでにないほど面倒なものであった。
まず、オマハのSAC本部がテープを準備し、その後標的指示集団がテープを持って各サイロを回る。そこで彼らはミサイルのところに行き、旧標的が入ったテープを取り出し、新しいものを取り付けなければならなかった。
この標的更新作業には、約16時間から24時間を要し、ミニットマン全戦力の標的更新作業には45日を要した。
しかし、この低い機動速度は、確証破壊戦略にとっては妥当なものであった。ミサイルは、都市部などの移動しない標的に対して、一度だけ大きな打撃を与えればよいからだ。
一方、柔軟な対応(Flexible Response)という新しい戦略では、どんな目標でもカバーできるミサイルが必要であった。そのための監視技術はすでにあった
SACは1970年代に、より優れたミサイル誘導システムと遠隔情報変更(Remote Data Change : RDC)プロトコルを導入し、また、指揮情報バッファ(Command Data Buffer : CDB)システムも導入した。
CDBは、SAC本部が新しい標的座標をWing本部または打上クルーがコンピュータに入力、新しい軌道を計算しミサイルに送信する。このプログラムは1980年1月までに、エルスワース空軍基地を除くすべてのミニットマンICBM基地で全面的に実施された。
この改良型発射管制システム(Improved Launch Control System)を使えば、ミニットマンIIIは25分で目標を変更することができた。しかし、1970年代のコンピューターは容量が小さかったため、1Squadron(1Squadronは5つのLCCと50発のミサイルで構成される)あたり1度に1発のミサイルしか変更できなかった。
各Squadronは並行して処理を実行することができた。空軍は、500発のミサイル(全軍)が20.5時間で目標を変更できると見積もっていた。
これらの数字はミニットマンコンピュータにあらかじめ登録されていない目標に対するものだという事を忘れてはならない。プレストアされた目標を選択すれば数秒でターゲット・オプションの1つを選択することがでる。ミニットマンIIには6つのオプションがあり、ミニットマンIIIには4つあった。
これら4つのデータセットにはそれぞれ、ミサイルの3つの弾頭すべてのターゲットデータが含まれていた。一つはプライマリーセットで、残りは予備である。
リターゲティングは珍しい作業ではい。それどころか、日常業務の一部であった。
ウィスコンシン州シャイアンにあるF.E.ウォーレン基地の第90戦略ミサイルWingでは、誘導制御システムのメンテナンスの一環として毎月最大22発のミニットマンIIミサイルのリターゲティングをする必要があり、その間アイドル状態のミサイルは警戒中の他のターゲットに再割り当てされた。
SACは1980年代半ばに発射管制センターを強化するための新たな更新プログラムを要請した。これはリターゲティングと発射の応答時間を短縮し、乗組員の負担を減らすことが目的だった。
The REACT Program
ICBM総合的電子機器性能向上(ICBM Integrated Electronics Upgrade : I2EU)
1986年8月22日、SACは作戦上の必要性に関する声明(SON 06-85)を発表。これはICBMの迅速なメッセージ処理とリターゲティング(REACT)能力を持たせることを意図していた。
この要求には以下の3つの主要な考慮事項が記載されている:
1. NCAへの警告時間短縮。
2. ソ連の脅威の増大による、ICBMクルーの反応時間短縮。
3. ソ連の標的に対するリロケータブル性の増加。
以上の事から1987年に弾道ミサイル局(※)は3つのプライム・エアロスペース契約業者と契約した。同事務所は、I2EUのプログラムを定義する上で支援を必要としていた。これには空軍が期待していた迅速な再照準機能も含まれていた。
※Ballistic Missile Officeと言う名前は1989年3月15日にBallistic Systems Divisionに変更された。
請負業者は以下の通り:
1. ボーイング・エアロスペース・コーポレーション/ロックウェル・インターナショナル(Boeing/RIC)
2. アン・アキュラス/フォード ・エアロスペース
3. GTE防衛事業部
BMOはTRWとも契約していた。彼らはミニットマンリターゲティングプロセスの研究にTRWの協力を必要とし、また、SAC SON 06-85の要求事項の変更を勧告するためであった。
1987年5月、3チームはBMO、HQ SAC、オグデン航空兵站センター(AFLC/OO-ALC)にそれぞれのプログラムを説明。TRWは1987年6月、同様の聴衆にリターゲティング・アプローチを説明した。
1987年11月8日、HQ SACはICBM発射管制センター統合のための運用上の必要性に関する声明(SON 14-86)を発表した。HQ SACによると「非統合」の修正には次のような欠点があった:
1. 責任の重層化
2. タスクの飽和
3. 混乱、特に危機的状況におけるエラーの可能性
この文書はI2EUプログラムの始まりであった。後にこのプログラムはREACT(Rapid Execution and Combat Targeting)と呼ばれるようになる。
The Rapid Execution and Combat Targeting (REACT) program
1988年9月9日、米空軍本部は、迅速な実行と戦闘標的(REACT)のためのプログラム管理指令を出した。また、ミサイル手順訓練装置の交換も行われた。
ICBM総合的電子機器性能向上(現在のREACT)は、5つの取り組みを1つにまとめたものであった。これらはシステムの保守性、サポート性、応答性、操作性を改善するものであり内容は:
1. 兵器システム制御要素(Weapon System Control Element : WSCE)の交換
2. 敏速通信処理(Rapid Message Processing : RMP)
3. 敏速な標的変更
4. LCCのコンソールを統合
5. ミサイル手順訓練装置(Missile Procedures Trainer : MPT)コンピュータの交換。
REACTプログラムは 次の2 つの要素で構成されている:
1. コンソール用兵器システム制御要素(コントロール・エレメント)のアップグレード。
2. 高等機関通信/高速メッセージ処理エレメントの開発。(プロセッシング・エレメントとも呼ばれる)
空軍システム司令部(Air Force Systems Command)の弾道学システム部(Ballistics Systems Division : BSD)は、兵器システム制御要素(Weapon System Control Element : WSCE)を管理していた。WSCEは迅速なリターゲティングシステム、音声通信、制御コンソール、ディスプレイ、兵器システム・プロセッサ、既存のLCC訓練機の改造も含まれていた。
プロセッシング・エレメントは電子システム部(Electronic Systems Division : ESD)の手に渡った。これには初めて、緊急戦闘指令(Emergency War Order : EWO)メッセージ処理の自動化が含まれた。
このプログラムでは、ミニットマンとMX(Missile-eXperimental)のコントロールセンター用の機器開発が求められた。また、レール駐屯基地のMXや小型ICBMのような移動発射施設も開発された。しかし、MXレール駐屯基地と小型ICBMは、後に冷戦の終結とともにその役目を終えた。
The U.S. Navy REACT
トライデント潜水艦部隊のための海軍の付随プログラムは、SLBM再標的設定システム(SLBM Retargeting System : SRS)と呼ばれている。SRSの計画は1985年7月に開始され1995年に承認された。そして10年以上の開発期間を経て2003年10月にようやく海軍が配備を開始した。
Full-scale development contracts
1989年4月、弾道システム部門はフォード・エアロスペース・アンド・コミュニケーションズ社(Ford Aerospace and Communications Corp)はF04704-91-C-0048という本格的な開発契約をコロラドスプリングス(Colorado Springs)に与えた。
この約1億5,500万ドルの契約は、コントロール・エレメント(REACT-WSCE)の近代化で構成されていた。また、REACT-WSCEの9つの技術バージョンと9つの運用バージョンの製造とテストも含まれていた。
フォードのソフトウェアがデータ処理と管理機能を実行する。ベースとなったのはレイセオン社の軍事用VAX (Virtual Address eXtension)モデル810コンピュータ。
同4月、ゼネラル・テレフォン・アンド・エレクトロニクス(General Telephone and Electronics : GTE)が本格的な契約を獲得。GTEはマサチューセッツ州ニーダムの政府システム部門であった。電子システム部門から与えられた契約はプロセッシング・エレメントの開発であった。
要約すると、GTEはICBM施設におけるクルーの有効性を向上させるというものであった。GTEは1989年9月にGTEのセグメントにレイセオンを選択した。GTEは4台のVAXモデル810コンピュータのうち最初の1台目を1990年3月に受領した。
The VAX Model 810 computer
1.6ポンド(≒726g)のレイセオン・シングル・モジュール・コンピュータ(Single Module Computer : SMC)810は、軍事VAXファミリーの中で最小のモデルである。このSMCは32ビット幅のVAXアーキテクチャを特徴とするシングルボードモジュールを持っていた。
このコンピュータは、深く組み込まれた特定のアプリケーションを多用する環境向けであった。浮動小数点付きCPU、限られたオンボードのスタティックRAM(512KB)とEPROM(128KB+256KB)、2つのシリアル・チャンネルを備えていた。I/Oバスとメモリバスの両方が利用可能で、追加のI/Oやメモリを組み込むことができた。
オンボード・メモリに加えて各システムはエンベデッド・モジュラー・アレイ・ダイナミック(Embedded Modular Array Dynamic : EMAD)(1枚4MB)を搭載している。もう1枚のボードを搭載するための追加スロットも用意されていた。
データ・ストレージとしては、ヘッド・ドライブ・アセンブリ(Head Drive Assembly : HDA)として知られるハード・ディスクを使用する。記憶容量は100MBだった。
Production Contract Award
1989年12月、REACTはミニットマンIII LCCのクラスV改造として承認された。クラスVとは、運用能力を向上、または不要となった能力を除去することを意味する。
冷戦終結時に多くの企業に起こったように、ローラル社はフォード・エアロスペース社を買収し、1990年10月、彼らはローラル・コマンド・アンド・コントロール・システムズ(Loral Command and Control Systems : Loral)となった。コロラドスプリングスの同社は、REACTハードウェアの主契約者となった。
1991年7月、空軍はF04704-91-C-0037という発射管制コンソールの製造契約を発注。ローラルとの契約額は1億9500万ドル。
REACT-AはWS-133A-Mシステム用。VIと第564ミサイルSqnを除く全隊に配備されWS-133B(REACT-B)を使用した。
AMとBのコンソールは、LCCと打ち上げ施設間の通信方法が異なる。AMコンフィギュレーションはケーブルを使用し、Bコンフィギュレーションは無線周波数とケーブルを使用した。
空軍はこの契約により50機のLCCと4つの試験施設をREACTコンソールでアップグレードする計画だった。その契約には訓練用として導入される13台のREACTコンソールも含まれる。
総費用は6億4,000万ドル。67機のコンソールのうち58機はAM(REACT-A)、9機はB(REACT-B)コンフィギュレーションであった。
Deployment
空軍は冷戦の終結に伴いICBM部隊と2機のミニットマンII Wingの削減を計画した。エルズワース(SD)、ホワイトマン(MI)などの基地が削減の対象になり、グランドフォークス空軍基地(ND)からもミニットマンIII Wingがなくなった。
一方ピースキーパーも先行きが怪しかった。ピースキーパーはSTART IIや将来の条約の交渉材料として機能し、結果として改良型CDB LCCはREACTアップグレードの対象にはならなかった。
REACT 装置は以下の合計 50 か所のミニットマン III 発射管制センターに設置された。
ワイオミング州F.E.ウォーレン基地
モンタナ州マルムストローム基地
ノースダコタ州マイノット基地
最初に選ばれた更新場所はウォーレン基地の第90ミサイルWingだった。1994年10月、このWingはジャイアント・ペース95-1Mの一環としてREACTを使用した最初のミニットマン模擬電子発射(Simulated Electronic Launch Minuteman : SELM)シミュレーションを完了した。これには第319ミサイルSqnのA FlightとE FlightのREACT改造LCCが参加した。
一方、第490ミサイルSqnはマームストローム空軍基地で初めてREACT改修機を配備した。これらは1995年3月1日に開始され、8月までに空軍は50のLCCのうち27と4つの試験施設をアップグレードした。1996年1月29日現在、空軍はさらに7つのLCCをアップグレードした。
その後、CDB/AMシステムの最後の訓練クラスが1月25日にバンデンバーグ基地を卒業。これにより1975年以来行われてきたCDM/AM訓練は終了した。今後のミニットマン運用訓練はすべてREACTシステムである。
1996年7月31日、RECT-A、ミニットマンA/M LCCの完全運用能力(Full Operational Capability : FOC)が宣言され、1996年8月5日にREACT-Bの初期運用能力(Initial Operational Capability : IOC)が宣言された。最初のものは第564ミサイルSqn用であった。
Program Updates
2006年、1億2,800万ドルをかけてREACTの耐用年数延長(Service Life Extension : SLEP)が開始された。ハードウェアの変更には(Embedded Memory Array Dynamic : EMAD)カードのアップグレードが含まれ、ビジュアル・ディスプレイ・ユニット(Visual Display Units : VDU)とヘッド・ディスク・アセンブリ(Head Disk Assembly : HDA)もアップグレードされた。
一方、コンソール・オペレーション・プログラム(Console Operation Program : COP)ソフトウェアの欠陥は修正され、2008年、REACTコンソールとオペレータ・インプット・デバイス(Operator Input Device : OID)はインターフェースを改善した。これにより信頼性と稼働率が向上した。
この改良にかかった費用は470万ドルであった。
The REACT Console in detail
REACT vs CDB
REACTと旧来のCDBの間には、驚くべき1つの違いがある。CDBではワークステーションが2つに分かれていたがREACTでは両方のクルーが横に並んでいる。つまり、キーボードとトラックボールを含む1つのコンソールで操作するのだ。
この方式になった理由の1つは、MX Rail Garrison(1991年に廃止)に収めるためだった。CDBでは1台のワークステーションがMCCC用で、もう1台がDMCCC用だった。
REACTソフトウェアはウィンドウズ・タイプの画面表示を使用しており兵器システムの状態を迅速かつ確実に追跡しデータを入力することができる。
余談:REACTはAdaで組まれている。
ミサイル発射担当者は10ソーティとLCCの詳細なステータスを表示すると同時にSqnの50個すべてのミサイルのステータスを見ることができる。これは、Sqn全体で何が起こっているかをCDBより容易に認識することができる。
しかし、REACTの最も重要な特徴は自動化である。このシステムは3つのデジタル通信チャンネルを通じて以下の戦争命令メッセージを受信する:
超低周波無線
空軍衛星通信システム
SACデジタル情報ネットワーク
認証、並べ替え、重複の排除の後、情報は自動的にオペレーターに表示される。以前はこれらの作業はすべて手作業で行われていた。最も重要なコードを認証するための書類は二重ロックの金庫に保管されていた。
古いCDBシステムでは上層部からのメッセージトラフィックは複数の通信システムで受信され、LCCの壁一面に並ぶ3つの別々のラックでプリントアウトされたため、クルーはEWOメッセージに反応して処理するためにLCC中を走り回る必要があった。トラフィックを受信すると乗組員の一人がコンソールから立ち上がり、乗組員が使用するメッセージのコピーをすべて取り出さなければならない。
REACTは、事実上すべての重要なタスクを単一のコンソールに統合している。これにより戦闘クルーは椅子から立つことなく出撃のためのすべての行動を実行できる。
位置関係だが、コマンダーは左のワークステーション(left bay)に座り、副官は右のワークステーション(right bay)に座る。共有機材は中央のベイにある。
REACTをコンポーネントごとに分解してみよう:
REACT Mayor components
Visual Displays Units (VDUs)
これは15インチの核強化(nuclear-hardened)された高解像度のカラー・モニターで、ワークステーション1台につき2台搭載されている。左がHA VDU、右がWS VDUだ。
高権限VDU(Higher Authority Visual Displays Unit : HA VDU)は、敏速通信処理装置(Rapid Message Processor : RMP)に接続されている。これはHA通信の監視を可能にする。
一方、武器システムVDU(Weapon System Visual Displays Unit : WS VDU)は武器システム処理装置(Weapon System Processor : WSP)に接続されている。WS VDUのディスプレイとのインタラクションは以下のものを提供する:
LCFとLFのステータスの監視
コマンドの開始
リモートターゲティング操作の実行
その他のコマンドおよび制御機能
Rapid Message Processor (RMP)
RMPによりMCCはコンソールから直接HA通信システムを監視および制御でき、送信メッセージは複数の通信システム上で構成、保存、送信できる。着信メッセージは処理されVDUに表示される。RMPは以下のデコード・メッセージを処理する:
緊急行動メッセージ(Emergency Action Messages : EAMs)。これは発射実行命令である。
フォースディレクションメッセージ(Force Direction Messages : FDMs)。ICBMを標的とする命令である。
非作動メッセージ(Non-Action Messages : NAMs)。
また、RMPはメッセージを受信したことをクルーに知らせ、指令があればメッセージを表示する。複数の通信システムで受信したメッセージの重複は自動的に排除される。通信アラームも表示される。
Weapon System Processor (WSP)
WSPは汎用のデジタル・コンピューターである。正確にはRaytheon SMC 810である。WSPの機能は、LCC内およびLCCを経由するデータの流れを制御することである。
オペレータが開始したメッセージは WSP によって処理され、暗号化のためにセキュア・データ・ユニットに送られ、送信のためにWSPに返される。WSPが受信したLCCおよびLFメッセージは、セキュア・データ・ユニットで復号化され、WSPに保存され、ステータス表示のために処理されます。
WSPは、指定されたLFをラウンドロビン・シーケンスで問い合わせる。加えてターゲットと実行計画の計算とリモートデータ変更操作の制御とシーケンスも行う。
Launch Enable Panel (LEP)
ミサイルを発射できるようにするには、ロック解除コードと発射許可コントロールパネルのセキュアコードが必要である。各ミサイルのロック解除コードは、発射命令を通じて入手する。このパネルは副司令官のワークステーションの一部である。
Launch Control Panel (LCP)
LCPは、打上げ、打上げ禁止、試験コマンドを実行するための開始点となる。発射コマンドの実行を開始するためには、協同発射スイッチ(Cooperative Launch Switch : CLS)の同時作動が必要である。
Cooperative Launch Switches (CLS)
CLSはLCPと連動して使用され、打上げ時には2人/4人で操作することができる。発射コマンドの実行には3つのCLSとLCPの発射スイッチを同時に操作しなければならない。
Operator Input Devices (OIDs)
各ワークステーションOIDはオペレータにWSPまたはRMPとのインタフェースを提供する。各ワークステーションのOIDは、一度に一つのプロセッサ(RMPまたはWSP)と一つのVDUにだけに接続できる。
各OIDはトラックボール・アセンブリと特殊機能付きQWERTYキーボードで構成されている。
Bulk Storage/Loader(BS/L) and Floppy Disk Drive (FDD)
BS/Lは、プロセッサ・メモリの初期ロードと、メイン・メモリのアップセットやその他の障害による再起動の際のリロードに使用されるハードディスク・ドライブであり、兵器システム・プログラムおよびデータベース用の二次記憶機能を提供する。
FDDは、クリティカルでないWSP機能に取り外し可能な読み書き可能ストレージを提供するために使用される。FDDはまた、診断データのダウンロードや定期的なクルー・ログのアーカイブにも使用される。フロッピー・ディスクは、照準やその他のデータ・ファイルの再読み込みやLCC間のデータ・ファイルの転送に使用される。
Time-of-Day Clock (TODC)
TODCはコンソールの中央上部のベイにある。TODCはミリタリー・フォーマットで時刻を表示します。TODCはミリタリー・フォーマット(24時間表記)で時刻を表示し24時間以内に少なくとも1秒の精度で表示可能。主電源が喪失した場合でも時刻を表示可能。
But, how do we launch a Minuteman Missile with REACT?
The Enable and Launch codes
発射シーケンスの前に、ミサイルは 「戦略的警戒(Strategic Alert)」状態でなければならない。つまり、ミサイルは発射準備態勢にある。逆に、ミサイルが作動しない状態は「No-go」と呼ばれる。
ミニットマンミサイルの発射を成功させるには、イネーブルコードと発射コードの2つのコードが必要である。
各ミサイルはこれらのコードを記憶しており、瞬時に呼び出された場合に作動できるようになっている。これらのコード分割され保持されている。ハードドライブ(ソフトウェア)の中とパーミュテーションプラグ(P-plug)(ハードウェア)の中に入っている。このコードは1年ごとに電気機械メンテナンスチーム(Electromechanical Maintenance Team : EMT)によって変更される。
まず、ミサイルをイネーブルにするかロックを解除する必要がある。この目的のためにイネーブルコードが使用される。
このコードの一部は、LEPのメカニカル・コード・ユニット(Mechanical Code Units : MCU)に格納されている。もう一つの部分であるロック解除コードは、EAMで受信される。
この設計は「知識分散(Split knowledge)」と呼ばれている。一個人がコード全体にアクセスしたり送信したりすることはできない。
余談:1977年以前は、各LCCが完全なイネーブル・コードを持っていた。
送信された値がミサイルに保存されている値と同じであれば、ミサイルはイネーブルされたことを報告する。
ここまでたどり着いたらミサイルを発射することが可能だ。発射コードの場合LCPはそれをMCUに格納する。WSPは戦闘クルーがLCPと協同発射スイッチを作動させるとそれを送信する。
The Minuteman III launch procedure
余談:これは我々の推測である。インターネット上で見つけた未分類の情報に基づいている。明らかな理由により、詳細かつ完全な手順は機密扱いとなっている。●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●
1- Decode and authenticate incoming EAMs
RMPはメッセージを受信したことをクルーに知らせる。可聴アラームとともに視覚的なEAMアラームが発生する。これらのEAMはMCCMによって手動で解読され、許可される。
EAMには以下が含まれる:
実行計画番号
目標番号(SIOP(Single Integrated Operational Plan)のインデックス)
タイミングプラン(航空機とミサイルの競合を防ぐため)
リターゲティング モード(CEP/MRT)
イネーブルコード(ロック解除コード)
封印された認証コード(SASコード)と呼ばれる認証コード
メッセージを認証するためにクルーは SAS コードを二重の錠がかかった金庫に保管されているコードと比較します。それらが一致した場合それはHAからの有効な直接コマンドであることを示します。
また、金庫の中には車のキーのような発射キーが2つ入っています。
2- Set preparatory launch procedures
その後必要であればクルーは、所定の実行計画を選択するためにSqn内のすべてのミサイルにコマンドを送信することができる。または特定のミサイルないしSqn全体に新しい戦争計画データを確立するコマンドを送信します。
目標番号と実行計画番号
ミサイル発射遅延時間
CEP/MRTモード
再照準時間は、リターゲティングモードが最小反応時間(Minimum Reaction Time : MRT)か平均誤差半径(Circular Error Probability : CEP)かによって異なる。非常に高速なMRTモードでは、新、旧ターゲットはともに発射点からある小さな方位角内にあり、ミサイルは主にミサイル軌道の仰角を調整することによって発射後の再調整を行うことができる。
CEPモードでは、新ターゲットは旧ターゲットに照準を合わせたミサイルの方位角柔軟性の外側に位置するため、ミサイルは発射前に誘導プラットフォームの再調整を行わなければならない。このCEP再調整には通常15分から30分かかる。
3- Cooperative enable procedure
ミサイルを使用する前にミサイルを有効にする必要がある。そのためにLCCのクルーはミサイルにイネーブル・コマンド(Enable Command : ENC)を送信しなければならない。
まずロック解除コードをシステムに入力する。そしてLEPスイッチをイネーブルに設定する。
システムは、いくつかの変数とアンロック・コードを使用して6つのランダムなアルファベット文字を生成する。文字の半分は各ワークステーションのVDUに表示され各ワークステーションのオペレータは、データ入力が表示されたらキーボードから自分に表示された3文字を正しく入力しなければならない。これは決められた時間内に達成されなければならない。
ミサイルは現在「有効」になり、発射コマンドの実行(Execute Launch Command : ELC)を待っている。しかし任意のLCCによってミサイルに送信されたインヒビット・コマンドで "無効化 "することができる。
4- Send Launch Command to Missile
これでミサイルに発射コマンドを送信できるようになりました。
このコマンドは、3つの協力発射スイッチと協力してLCPで開始され、LCP内のMCUから抽出されたセキュアコードが含まれている。
2つのMCCMが横に並んで配置することにより一人での発射を回避する。
実際ELCには、LCPの発射スイッチと3つの協同発射スイッチを互いに2秒以内に作動させる必要があるため、両方のクルーが協力する必要がある。
コマンド処理後、ミサイルは「発射指令済み」状態になる。ここでも、どのLCCからミサイルに送信されるインヒビット・コマンドで、発射を禁止することができる。
5- We need the vote of another LCC
「発射進行中」のステータスになるためには、ミサイルは他のLCCのELCが必要です。
他のLCCが稼働していない場合はどうなるのか?例えばSqnのLCC5基のうち4基が核攻撃で破壊されたとします。その場合タイマーが切れた後ミサイルは 「発射進行中」状態になります。
6 – Terminal Countdown (TCD) and missile launch
YouTubeで打ち上げ手順の一部を見ることができます:
Conclusion
冷戦終結後、アメリカ空軍は発射管制センターのコンソールのアップグレードを開始した。1960年代と1970年代の技術を1990年代に取り入れたのである。実際、REACTは旧世代機たちよりもはるかに効果的かつ効率的であることが証明されました。
今日の基準からすれば、古い技術だが、セキュリティ面での利点もある。古いハードウェアとソフトウェア、そしてインターネット接続の欠如は、打ち上げセンターに強固なセキュリティを提供している。
さいごに
元の記事(https://nuclearcompanion.com/rapid-execution-and-combat-targeting-react-armageddon-with-a-floppy-disk-and-trackball/)の著者であるPaul Dent氏、問い合わせの対応や翻訳の許可を取っていただいたJavier Guerrero氏に感謝します。そして今これを読んでいるあなたへ感謝を。
本稿を用い核発射を試みて不測の事態に陥ったとしても、全て筆者の責任に帰すことをお断りする。
2024年3月31日
参考文献
Weapons of Mass Destruction (WMD)
https://www.globalsecurity.org/wmd/agency/bmo.htm
LGM-30F Minuteman-II intercontinental ballistic missile
https://en.missilery.info/missile/minuteman-2
OGDEN AIR LOGISTICS COMPLEX (OO-ALC)
https://www.hill.af.mil/Home/Ogden-ALC/
Peacekeeper Rail Garrison
https://en.wikipedia.org/wiki/Peacekeeper_Rail_Garrison
Ada
https://ja.wikipedia.org/wiki/Ada