日常_11【平成建築史】
「凄い本を読んでしまった」
そう思いながらこのコラムを書いています。
2019年5月1日から新元号「令和」になると発表がありました。
平成2年(1990年)に生まれ、平成しか生きていない私に取っては初めての経験ですが、新元号になるだけで「建築業界」も何か変わるのではないかと期待してしまいます。
平成21年(2009年)に大学に入学し建築を学び始めてから、まだ10年も「建築」と向き合っていませんし、社会に出て5年目ですから、平成の1/6も建築実務に携わっていないことになります。
昭和を経験せず、平成だけを生き、平成最後の年に一級建築士になった今、平成という時代の建築について振り返りたいと考えていました。
その時に見つけた本がこちらです。
私に取って、平成というのは現代であり日常でもあります。
だからこそ上記の本のタイトルである「平成建築史」を見つけたとき、少しショックを受けました。
平成という日常が終わるという実感はまだありません。
しかし「令和」という時代へ変わる今だからこそ、平成を振り返り歴史として認識することはとても重要だと感じたのです。
私にとっての平成は日常であると書きましたが、「平成」を客観的に捉えたこの本を読んで、当たり前に捉えていた「日常」は引き継ぎ又は修正するための「歴史」なのだと認識出来ました。
バブル崩壊後という時代や阪神淡路大震災、東日本大震災を経て建築は何ができて何ができなかったのか。
ポストモダンという時代に建築家たちは何を考えていたのか。
その全てを「客観的」に見ることができます。
この本は建築家である内藤廣氏への質問形式で書かれていますが、コンピュターの存在とCAD、そしてBIMの問題点や利便性が向上したことでブラックボックス化した末に起きた「杭問題」や「免震ゴム偽装問題」に続き、震災時の建築家と行政の関係性、「新国立競技場」の問題についても様々な内容が記載されています。
また本の終盤には、目利きの建築家たちが選ぶ【平成の10大建築】が載せられているのです。
「平成」に生まれた「建築」がそれを生み出した建築家たちによって何が主軸に置かれて竣工し、その役割がどう果たされてきたのか。
そしてその建築が「令和」という新時代に何を残せるのか。
この特集を読むだけでも、この本を購入するには意味があると思います。
私は内藤廣氏の建築が好きですし、本も何冊も読んだ事があるので、内藤氏の意見を読んでついつい肯定してしまいます。もちろん参考になるし、共感できる部分も多いのだが、耳が痛い話も多いです。
それでもこれからを担う「世代」として「令和」を築くために、「平成」を歴史として受け止められる「検証/平成建築史」を是非多くの方に読んでもらいたいと感じました。
いや、読まないといけないとも思います。
そして「平成」しか生きていないし、まだ建築家として経験も浅いし、20代のゆとり世代ど真ん中な私ですが、平成生まれの若手建築家だからこそ選ぶ【平成の10大建築】という企画を今後必ずやろうと考えています。
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