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【建築×ブロックチェーン】未来の建築家として必要な現在のテクノロジーを知る

前回【建築×ブロックチェーン】のコラムでは、ブロックチェーンというものについて簡単に説明し、その凄さと普及しづらく実用まではまだ時間がかかる理由について触れました。

ブロックチェーン技術自体には世界を変える力があるのだが、法律や既得権者、理解のし辛さから、いきなり世界を変えるものになるのはハードルが高いわけです。

しかし、「テクノロジーは止まらない」。。

いずれ世界を変えるであろうブロックチェーン技術ですが、今現時点で出来ることはなんなのでしょうか?

いきなり世界を変えることは難しくても、小さなコミュニティを変え、作り出せる力がブロックチェーンにはあると言われています。

ブロックチェーン技術はまだまだ始まったばかりです。
まずは「小さな何か」を変えるところから始めて、新しいコミュニティインフラに慣れた先に来るであろう「超平等社会」を見据えて準備しておくこと、、それが今私たち考えるべきことのように思います。

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Archifutre2019の『ブラックチェーンは建設業界を激変させるプラットフォームとなるか』という講演会では、ブロックチェーンが建築業界で何が出来るのを考えていこうと言った内容でした。

今回のコラムでは、Archifutre2019の『ブラックチェーンは建設業界を激変させるプラットフォームとなるか』という講演会でどんな話が出たのか、そして今現在、ブロックチェーンで成されている取り組みについてご紹介できればと思っています。

▼前回コラム「【建築×ブロックチェーン】テクノロジーに乗り遅れない建築家になる」はこちらから

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■【ミニブロックチェーン】

「ブロックチェーン」という言葉一つとっても、色々と考えられていて、簡単に分けると2種類あることがわかりました。

一つは仮想通貨のような誰もが自由に使える「パブリックブロックチェーン」というものです。世界を変える可能性があると言われているのは、まさにこっちです。「パブリックブロックチェーン」は世界中誰でも使えるブロックチェーンなので当然と言えば当然ですが。

そして、もう一つは、限られた集団の中で使用される「プライベートブロックチェーン(ミニブロックチェーン)」です。

限られた集団というのは、小さなコミュニティを指します。

「ミニブロックチェーン」は、コミュニティを活性化もしくは新しいコミュニティのあり方を作り出せる可能性があると考えられています。

まず私がブロックチェーンの実用としてご紹介するのは、後者である「ミニブロックチェーン」についてです。

【トークンエコノミー】

トークンエコノミーというのは、お金には変えられない価値を持つコミュニティポイントのことです。あるコミュニティの中だけで通用するお金と考えることも出来ます。

例えば、とある会社の部署でブロックチェーンを使用してコミュニティの活性化をしたい時に、部長がトークン(ポイントという方がわかりやすいかも)を発行します。

部長が社員達の頑張りに応じてトークンを与えたり、社員間の仕事のやり取りでトークンをあげたりもらったりする。

(例えば、腹痛で仕事を休みたい時にトークンを上げる代わりに誰かに仕事をお願いする等)

積極的に社員間のコミュニティを促進すると同時に、集まったトークンを使って社員食堂で会計できたり、追加で福利厚生を受けられたりするゲームみたいなものと考えて下さい。

こういったコミュニティ活性化を促す取り組みとして、現在でも既に様々な企業で行われているそうです。

お笑い芸人のキングコング西野さんが発案したサービスである「レターポット」も、ブロックチェーンを使ったトークンエコノミーだそうです。

【まちづくり×トークンエコノミー】

こういったトークン(ポイント)を利用してまちを活性化しようとしている地域があります。

「さるほぼコイン」という飛騨高山地域のみで使える仮想通貨です。

QRを読み取ることで決済ができるいわゆる電子決済なわけですが、メリットとしては、決済時間の短縮です。

現金によって支払い、お釣りをもらうのには時間がかかりますよね?

クレジットカードや交通カードの決済も時間短縮によって、規模を拡大させたわけです。

それならわざわざ地域限定のトークンに現金を還元せずに、クレジットカードで決済すれば良いのではと思うかもしれませんが、このトークンでの決済にすれば、手数料を店側が取られることはありません。

また、導入機材が安く済むというメリットもあります。

気軽に使えるトークンを使用することで、まちの経済の循環を促そうとした実例です。

今では飛騨高山地域の約100店舗が「さるほぼコイン」の導入を行なっているそうです。

こういうことを聞くと、町内でワークショップに参加してくれた住民にトークンを発行したりして、地域の活性化につながる取り組みも行えそうです。

【図面管理×改ざんゼロシステム】

先日、建設工業新聞でとある記事を見つけました。

それは、前田建設工業が現場情報漏洩防止システムとしてブロックチェーンを活用すると発表した記事です。

建築図面というのは機密データです。特に駅舎や空港ともなれば、テロの危険性があるため、絶対に表に出ないようにしなければなりません。

そこで前田建設は、現場で使用するスマートフォンやタブレットに分散型暗号技術とブロックチェーン技術を導入し、端末に保存したデータでも現場から離れれば使用できなくなるシステムを取り入れました。

詳しいシステムについてはよくわかりません。

しかしこういった情報漏洩の防止対策にもブロックチェーンは利用できることがわかりました。

■【パブリックブロックチェーンの使い道】

これまでは既に実用がなされている例をご紹介しました。

次からはArchifutre2019の『ブラックチェーンは建設業界を激変させるプラットフォームとなるか』という講演会内で、「こういったことが出来るようになるのでは?」と話に上がった内容について紹介できればと思います。

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【不動産取引とレンタルの差がなくなる?】

これはいわゆるシェリングエコノミーの分野でブロックチェーンが活用で切るという内容です。

日建設計の山梨さんが、ブロックチェーンの現在のメリットとして、スピード感のアップとコスト安の実現であることを明確にしながらも、話を膨らませていました。

前回のコラムでも触れたスマートコントラクトとブロックチェーンによって、不動産をレンタルすることのスピード感が劇的に変わり(ボタン一つでレンタルから決済までが完了する)、物件を購入することとレンタルすることの価値の差がなくなるのではないかという内容です。

また個人間でのレンタル(仲介なし)がよりスムーズに信頼を持って運用できることもブロックチェーンを使えば理論的には可能であることが挙げられました。

AirB&Bの発展や空家物件でも活用が期待されています。

これを考えて行くと、賃貸住宅と分譲住宅の境界が曖昧になり、新しい住まいの持つ方にも変化が出てくるのではないかということですね。

まだまだ試行段階なので、明確にこうなるとは言えませんが、新しい住まい方の提案ができれば、学生の皆さんでも建築コンペで活躍できるかも知れません。

【まちづくりのコンセンサスに利用できる?】

とあるまちを再開発して利便性を向上させ、タワーマンションや大型商業施設を計画するときに、不動産業者(デベロッパー)や設計者(建築設計者)は、そのまちの行政とやり取りをたくさんするわけです。

例えば総合設計制度を使ってタワーマンションを建てる場合は、地上部分に地域住民が利用できる「広場」を計画しなければならなかったり、緑化をある程度確保しなければ行けなかったりと色々と基準があります。

その基準はあくまでそこのまちの行政(都や県、区役所や市役所)が決めた基準になっていて、実際の住民が求めていることかと言われればそうではありません。

タワーマンションを建てることによって生まれる広場は本当に活用されているのでしょうか?

広場ではなく屋内プールや体育館が欲しいと思う住民もいるかもしれませんし、保育園ではなく、劇場が欲しいかもしれません。

再開発ではそう言ったリアルタイムの民意が反映されていないのが現状です。

再開発もふるさと納税みたいに、住民が本当に欲しいものを集計して、取り入れることが可能なのではないかと思います。

この時にでは話をまとめると、民意の集め方やまちづくりのコンセンサス(合意)に、ブロックチェーンが使えるのではないかというものです。

投票だって、人の意見は1票で数えられますが、そもそも一つに決めることが難しい場合だってありますよね。個人の投票も、例えば0.3と0.7に分けたり出来れば、より正確な民意が集められそうな気がしませんか?

そう言った手間や信頼度をブロックチェーン技術なら解決できるのではないでしょうか?

【騙し合いの構図を変えられる?】

建築の実務をやっている方や建築士の勉強をしている方ならわかるかと思いますが、建築を作る場合少なくても3つの種類の人間が存在します。

それは、①発注者(デベロッパー)と呼ばれる建物を建てるために資金を出し舵取りをする人と②設計者(建築家など)発注者が求める建築を設計料をもらって計画する人と③受注者(ゼネコン、工務店など)と呼ばれる工事費で建築工事をする人です。

発注者が出す資金の中には、設計料(含まれない場合もあるかも)や工事費が含まれていますし、発注者が使う広告費や申請費も含まれています。

事業として成り立つようにするため、資金というのは最初の方に決まるのが一般的です。(設計料はいくら、工事費はいくらと内訳も決まる)

仕事をする以上、儲けを出さなけれならないので、例えばゼネコンは工事費の中に、自社の儲けを上乗せして発注者に伝えています。

もちろん工事をして行くと予期せぬことも多いですし、工事が始まってから発注者の要望が変わることもあるので、想定していた資金より多く金額が必要になる場合もあります。

しかし発注者としては最初に決まった資金を増やすことは難しいため、VEやCDをして工事費を削りにかかります。また、資金が当初よりの少なく済めば自社の儲けが増えるため嬉しいのです。

さらに、受注者はもちろん儲けが増える方が嬉しいので、工事費を減らして、儲けを増やそうとします。

設計者は良いのもを造りたいので、工事費を削ることをよく思わないケースもあります。

そういった資金を巡って、各々が資金を取り合いながら、工事は進んでいきます。同じ建築を目指す3者間にも様々な思惑があり、同じ方向を向けていない場合も多いのです。

ビズネスである以上仕方のないことかもしれません。

しかし日建設計の山梨さんはブロックチェーンとスマートコントラクトによって、この騙し合いの構図を変えられるのでないかとお話されていました。

具体的にどう解決できるのかはわかりませんが、ものづくりをして行く仲間がお互い気持ちよく仕事ができれば、良いですよね。

まとめ

最初に言った通り、ブロックチェーンが建築業界をどう変えて行くのかまだまだわかりません。

上記に述べたように、建築を取り巻くまちづくりやコミュニティの新しいあり方が実現して行くのか、もしくは全く新しいことが実現可能になるのか、はたまたBIMとの結びつきによって、設計側の仕事の仕方が変わって行くのかもしれません。

今はまだ先の見えないことかもしれませんが、その未来を認識しているのとしていないのとでは、生き抜いていけるかどうかの未来は変わってくるのではないでしょうか。

先日とあるYoutube動画でこんな言葉を見つけました。

「過去を知らないと未来は見えない。そして、未来を見ないと今するべきことが見えない」

当たり前のようですが革新的な言葉だと感じました。どんな分野においても成功を収めるためには、未来をしっかり見て、今をどう過ごすかが大事ですよね。

私がブロックチェーンという難しいテクノロジーの話を敢えて頑張って(無理して)書いてるのは、急速に進むテクノロジーに置いて行かれず、既存にとらわれない建築家になるためです。

建築家を志す全ての方に、少しでも共感を得られたら嬉しいです。


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