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NANA-ナナ-|なぜ現代の若者に共感されるのか

Y2Kブームによってリバイバルを起こしたNANA。
矢沢あい展から2年。依然として周りの東京Z世代の心を掴んで離さないこの作品にどんな魅力があり、何を学ぶことができるのか、できるだけネタバレを控えて3つに分けて見ていこう。



1.リアリティ溢れる恋愛観

まずNANAと言ったら他の少女漫画と一線を画す恋愛描写だろう。
特に連載されていた2000年7月~2009年8月は、理想通りの恋愛が描かれる”定番”的恋愛漫画がほとんどだった。
そんな中、気持ちの浮き沈み、金銭的問題、理想通りにはいかない現状の連続が現実にとても忠実に描かれ異彩を放った。

小松 奈々視点で描かれる、自分を満たすためだけの幸せの追求や、理想や情で自ら幸せを捨ててしまったり、ストレートなハッピーだけで終わらない物語。
複数人の思考や感情が絡み合うからこそ読み手には主人公だけでなく登場人物全員にどこかしらの共感が生まれる。
妥協や幸せを自分で定義していったりする所が特にリアリスティック。


2.夢と現実とのギャップ

大崎 ナナは夢を追いかけ上京する。
地方から上京する多くの若者と重なる。
夢を抱いて東京に来た若者は、順調に上手くばかりじゃないことはすぐに気付くはず。
ナナも同じでバンド以外の事をしなければ生きていけないし、デビューまで問題なく進むわけではない。理想と現実のギャップ。同じ立場で苦悩する若者の心を掴んで同調してさらに苦悩させていく。
この感覚は漫画やアニメで得られるものとしても珍しい。


3.ファッションとの関係性

主人公大崎 ナナが所属するパンクバンドBLACK STONESのメンバーのファッションを軸に見ていく。
パンクロックとは社会や権力への反発を表現した音楽から生まれたパンクファッションのカルチャー。
英国の文化だが、セックス・ピストルズなど数々のパンクバンドによって若者の胸に強い衝撃と共感を与え世界に広がっていった。

登場人物が身に着け度々登場するヴィヴィアン・ウエストウッドの象徴的なスカル・シルバー・レザー・チェックがよく登場する。
1950年代のヒッピーカルチャーから着想を得たとされるこのブランドは、反逆という基盤はそのままでテイストを現在のパンクスタイルへと変えていった。

NANAに登場するオーブ(ORB)、ライター、アーマーリングなどのアクセサリーは、分かりやすく身に着けやすいためNANAの精神を身に纏おうと今も一部の若者たちに熱狂的な人気がある。
同様にパンクの音楽が好きだからファッションを真似するというより、その反逆の精神に惹かれてファッションを近付けて行く方が圧倒的に多い(知り合った若者の間では)。
破れていたり汚れていたりしてもファッションとして許容されるというのも、リスクを鑑みず恐れ知らずで前進しか知らない傷だらけの若者たちの受け皿になる部分でもある。


私たちの生活にどう活かしていけるのか

本当の幸せとは何か。
夢を追い続けるべきか。
現実(人)とどう向かい合えばいいのか。

歳を取ってから見返すと更なる気付きや考えさせられる台詞が多く散りばめられており、決して若者だけに向けた作品ではないこともこの作品の魅力。自分が置かれている立場や段階で違う印象を受ける奥深い作品である。

幸せとは自分にとっての幸せか、相手にとっての幸せか。
など1人だけで生きていくことはできない私たちにはいずれまた衝突するいくつもの問題があるだろう。相手の幸せを願って離れたりすることも間違いだとは思わない。
そもそも正解や不正解はないのだから「自分は何を正解にするのか」を考える道標にするのがこの作品との付き合い方だと考える。
これらの永遠の問題に向き合うため、ずっと自らに問うことを続けてほしい。
最後に、これからも歩んでいきたい作中の言葉を残しておく。
どれか一つでも刺さるものがあるなら、もしくは何か一つでも悩んでも悩んでも答えが出せないことがあるのならぜひ見てほしい。
あなたの人生が寂しさで埋め尽くされませんように。


ナナ「ケンカするほど仲がいいなんてよく言うけど ケンカなんて結局エゴのぶつけ合いだし 本音をさらけ出したところで人は分かり合えるものでもない。傷つかずに生きて行く事は たぶん不可能だけど 周りを傷つけずに生きて行く努力はしなければと思った。なんだか無性にそう思った」

奈々「ねえナナ。シンデレラのガラスの靴はぴったりなのに なんで途中で脱げたんだろうね。王子様の気を引く為にわざとやったとしか思えないんだけど。何をやっても空回りの一人芝居で幸せになりそこね続けた女のひがみかな」

レン「おれはナナが俺の思い通りにならなくても、たとえ他の男と結ばれてもずっと変わらずに大事に思えるくらい、優しい人間になりてぇよ…」

ヤス「だったらいい加減気づいたろ。 世の中、必ずしも正義が勝つようには出来てねえんだよ。 負けたくねえんならしたたかになれ。 もうちょっとずる賢くなれよ」

シン「ノブさんは平和主義なんだよ。 みんながなるべく幸せな毎日を送れるように、一番丸く収まる道を頑張って選んでるんだ。 争いを避けることがお気楽だとは僕は思わない」



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