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なぜ労働撲滅とか言い出して、出版社を立ち上げたのか?【出版社を作ろう】
※次の読書会で語る内容を整理していたら気づいたら文章になっていたので、せっかくなのでアップしておく。
※ライブ配信しようと思ったのだけれど、たぶん文章の方がうまくまとまりそうだったので、そのまま書いた。サムネはその名残である。
そもそも僕が人生を賭けてまで発信しようとしているアンチワーク哲学とはなにか? それは「人間は他者に貢献したいとか、成長したい、誰かと協力したりしなかったりして能力を発揮したいといった欲望をそもそも備えている。しかし、それらはお金や労働、強制、権力、ヒエラルキーによって抑圧されている。だから労働を撲滅するべきなのではないか?」という仮説であり、あるいはその仮説に至るまでの思考のプロセスである。
これは現代の常識とは大きく乖離している。僕たちの社会はきっと次のように思い込んでいる。「人間の貢献や活躍、成長のようなモチベーションは、お金や労働といった半ばそれを強制するようなシステムによってようやく引き出されているものである。稀に自発的にそれをやる人もいるが、あくまで例外であり、多くの人たちには強制が必要である。ゆえにお金や労働、権力、ヒエラルキーがなくなった途端に、社会は成り立たなくなる」と。
しかしアンチワーク哲学では、むしろこうした抑圧システムこそが、人のモチベーションを阻害し、他者への貢献を魅力のないものに仕立て上げていると考えている。
根拠がないわけではない。そのような思考に至るまでのプロセスは、僕自身の30年以上の人生の歩みと重なっている。サラリーマンとして働いた経験。求人広告ライターとして多くの労働者や経営者と話をした経験。経済から心理、生物、社会、哲学など、あらゆる本を読み漁った経験。父親として子どもに触れ合った経験。友達や家族と関わる経験。あるいはそれらをインターネットで発信する経験。アンチワーク哲学はなにか一つの契機によって一夜にして生まれたものではなく、さまざまな経験と試行錯誤の中から徐々に編み上げられていったものである。
例えば25歳ごろの僕は、意識高い系として生きていた。そのなかで僕にとって、人間が高いモチベーションを持って活躍できる組織がどのようなものなのかが、重要なテーマであった。それは企業への取材のなかでもヒントは見つかったし、組織論や心理学、脳科学、社会学、歴史、生物学、哲学といった書物のなかにもヒントはあった。
これらのヒントは次のようや示唆を与えてくれた。人間はお金によって動機づけられる場合よりも、強制的なシステムの中にいるときよりも、自発的に取り組む場合の方が、高いモチベーションを抱くことができる。これは実際に見聞きした組織や、自分が所属する組織においても当てはまっていた。本の中でもそれを裏付ける証拠は山のように見つかった。むしろ、そうしたお金や強制によるシステムは、様々な弊害をもたらしている。この証拠も膨大に見つかった。僕自身の主観的な体験ともぴったり噛み合った。
だったら、「この弊害をもたらすシステムを取り除くことによって、人がもっと幸福に活躍できる社会がつくれるんじゃないか?」と考えるのは、僕にとって必然であった。むしろこの結論にほとんど誰も至っていないことに強烈な違和感があった。
お金が人の内発的モチベーションを阻害することを実験によって示した心理学者も、権力のない自由な組織の方が人が輝けるという法則を導き出した経営学者もビジネスマンも、「じゃあお金や強制を社会からまるっきりなくせるんじゃないか?」という疑念をチラリとも抱いていないようだった。でも僕は、そうしたアプローチを取らないまま実践される解決策は、どれも本質的ではないように見えた。
お金によって強制されないように評価制度を工夫しようだとか、権力が幅を利かせないように企業のトップは権力を分配しフラットな組織をつくろうとか、そうしたアプローチはたしかに部分的には有効である。しかし、それだけでは足りないはず。社会全体の構造や価値観を根本的に揺らがせる必要を感じた。
その思想体系はきっと人類にとって重要であるという漠然とした感覚を抱いているところに、たまたま僕は自分のキャリアに行き詰まりにぶち当たった。
じゃあ、これを発信することを僕のライフワークにしよう。本を書いて、出版して、社会に広く問いかけてみよう。だからまとも書房を立ち上げた。というより、立ち上げざるを得なかった。
とまぁこんな具合である。
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