セルフしつもん読書4『星の王子さま』サン=テグジュペリ
【本日出来上がったの魔法のしつもん】
Q. 秘密の身じたくはどこから始まりますか?
薔薇が持つイメージついて考えていた時、一番に思い出したのが『星の王子さま』でした。ちょうど今月号のたったひとひらのマガジン『Date de floraison』のテーマがRoseなので、もう一度手に取ってみようとこの本を「しつもん読書」で読み返してみました。
「本を読みなさい」
おそらく大半の人がそれを言われて育てられてきたのではないでしょうか。想像力が云々……と説明が続くのでしょうが、私はそのあたりで、継続して読書を楽しんでいる大人を見たことがありませんでした。祖父母は読書家でしたが……。
そんなわけで、読まないと母から怒られるからというネガティブな理由で、しぶしぶ開いた1冊。それが母の本棚にあった『星の王子さま』です。
小学6年の夏休みのある日、1ページ目を開くやいなや、こう思いました。
ハァ?? 大蛇? ボア? バオバブ?
それでも我慢して2ページほどめくりますが、余計に混乱してくるのです。
この箱が羊って、なんのこっちゃ!!
独特のイラストに、王子さまと僕との会話がまるで掴めないし、面白く無い。ここであっさり本を閉じ、そうして10年以上が経過しました。(『人間の土地』はどうしても難しくて読めなかったのに、星の王子さまは読めた!)
そして、開いた時の面白さと言ったら!!
読むタイミングに来た時に、開きたくなる本がある。
訳者の方によっても、多少ニュアンスが変わるかもしれませんが、訳者河野万里子さんのあとがきを拝読し、『星の王子さま』への敬愛ぶりが伺えました。
河野さんは『Le Petit Prince 』のタイトルを初出・岩波少年文庫、1953年で『星の王子さま』とした名付け親の内藤濯氏に感謝しつつ、ご自身も「このタイトルでつつみこむことができるのを、うれしく思う。」と述べられています。
そう、本文の訳のなかでも、あとがきも、ひらがなを活用して開き、読みやすく、優しく響かせることで統一されていました。そんなわけで、私は何十年も開いてこなかった作品に、出会うべくして出会い、読み終えることができたのです。
いろんな見方ができる、やさしい名作です。「ある地球のたとえ」であり、「人間の傾向と対策」であり、「男女の愛とは」であるのですから、大人のための童話。
バオバブについても、ボアについて、薔薇との関係についても、経験してきた自分の中の何かと重ね合わせた時にこそ、面白みが増す作品でもあります。だからあの時、3ページで本を閉じてしまった私の「なんだかわかんなくて面白く無いなー」は、素直な反応だったと言えます。
とはいえ、その頃から、きっと女の子たちの秘密の身支度は始まっていました。『星の王子さま』は読まずとも、「王子さま」は求めるようになる。りぼんとジャンプに分かれていき、あとになってジャンプを理解していれば、もう少し男の子の思考を分かってあげられたのになぁと、だいぶ大人になってから、『あの時、すでにりぼん色に染まってしまった』と後悔することに。その染まり具合によっては、4つ以上の棘に値するかもしれませんよね。
何百万年も昔から花はトゲをつけている。『星の王子さま』
育った環境、刷り込み、思い込み、それは強固な岩です。そんなものを全て爆破して砂や塵のように風に吹かれていたら……。そこで、星の王子さまや僕(著者)と出会えたらなら、「わぁ!これがあのボア??すっごく素敵ー!見たかったのぉ」となるのか、「ああ、どうみても帽子ですよね」と冷静に突っ込んでしまうのか、私はどちらなのでしょう(笑)
いちばんたいせつなことは、目に見えない。
このキツネの言葉はとても有名ですが、この前にはこう置かれています。
ものごとはね、心で見なくてはよく見えない。
そのあとに、小さな王子さまも
いちばんたいせつなことは、目に見えない。
と、覚えておくためにキツネの言葉を繰り返すわけです。そのあとも、バラのために費やした時間について、なつかせたもの、絆を結んだものについて「責任」とキツネはまとめます。このシーンは、著者が表したかった男女についてのひとつの真理ではないかと思います。
心で見なくてはよく見えない。
男女間ですれ違っていくのも、この「心」からなんですよね。求めるでもなく、ただそこにある心。そこにあった心。トゲが刺さるのも、心。それを和らげるのも、また、心。
しつもん読書会
認定ファシリテーター 香月にいな
では、わたしなりの答えを
A. 秘密の身支度も、心からはじめるもの。
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