ない、が、ある~双子座のきみの恋するpetit story~
きみの星座別 恋するpetit story
【ない、が、ある】
コンビニは二軒ある。けれども、スーパーは無い。そんな不思議な町。地図上のことで、スーパーは隣町との境界すぐのところにあるので、意外と不便に感じることは無かった。
急に遊びに来た彼女が、冷蔵庫に何も入ってないことに驚いて、買い出しに行ってくれるというので、僕は一週間分の食材を頼むことにした。
「野菜はあるから、肉と魚で適当に見繕ってきてくれる? あとは、君が好きなものを買ってきたらいいよ。ビール? 一番近くだと、車で三十分くらいかな。貴志川方面でも、海南方面でも」
「うん、来た時、通り過ぎたから、知ってる。あ~っ、ねぇ、何でここに引っ越ししちゃったの?」
「うん、でも、住んでみたら分かるよ。僕は農作業の続きがあるから、頼んだ!」
「わかった。その代わり……ねぇ、二人分の一週間の量で、買い出ししてきてもしてもいい?」
「えっ? う、うん」
彼女は鼻歌交じりに出かけて行った。この先、彼女との時間が今の暮らしにプラスされるかもしれない。僕はその覚悟を持ちつつ、鍬を入れ始めた。