見出し画像

シーソーシークワーサー Ⅱ【77白い朝の空(くう)】

【シーソーシークワサーⅠのあらすじ】

 母を亡くし、その孤独感から、全てを捨てて沖縄から出た凡人(ボンド)こと、元のホストの春未(はるみ)。

 一番に連絡をとったのは、東京の出版社に勤める絢だった。

 絢に会うまでの道のり、人々との出会いで得たことは何だったのだろう。島に帰った凡人は、母亡き後の、半年間時が止まっていた空間に佇みながら、生い立ちを振り返っていた。

 生前の凡人の母、那月は凡人を守って生き抜くために、様々な選択をする。

 沖縄から遠く離れた本土の片田舎で育った凡人の母、那月。母の重圧に耐えかね、家を出た。家出少女を何も聞かずに受け入れたMasaとその妻、順子。Masaは那月に3ヶ月で売り上げを3倍にすることを条件に、次の日から衣食住の提供と引き換えに那月を自分の古着屋で働かせる。

 その店に決まって現れる女とMasaの関係に気づいた那月。それ以外は満たされた労働環境のはずだった。店を出る決意をした那月だったが、また別の店に拾われる。そこは寂れた商店街の一角にある靴屋「ANYO」だった。


Ⅱ【77白い朝の空(くう) 】


 息が白くなる。那月はそうして一人で遊ぶ。昔も、今も。
 犬伏が指定した商店街から300mほど離れた公園は、千成公園だった。そこは小さな公園で、商店街界隈のママさんが子どもを遊ばせるのに使うような、住宅地の隙間にある、三角地を活用した、空き地からの派生物。
 那月のいつもの買い物は商店街の中で済ませていたし、その通りを外れて歩くこともなかった。一本筋を違えて歩けば、それはもう新しい世界が広がっていた。

「僕は、行く。君はどうする」

 昨晩そう言って店を閉めた犬伏は白髪ロングを一つにまとめ、公園の真ん中で立っていた。何かの集まりがあるのかと思ったが、そこに一人で佇んでいるだけだった。

ここから先は

1,146字 / 2画像

ど田舎そだちど田舎、 ゆる!がんそロハス! わかやまきみの町からの、 定期エッセイです。 ベリーブ爺…

スタンダードプラン応援いただける方募集します

¥270 / 月
初月無料

この記事が気に入ったらチップで応援してみませんか?